東京都近代美術館で、ゴードン・マッタ=クラークの回顧展。
かれは1978年に35歳で亡くなっており、その活動期間は短かった。70年代に使えるメディアや手段をもって、70年代の都市のマージナルな部分を揺さぶった人だと言える。
いまとなってはその表現手段は素朴で隙間だらけに見えなくもない。だが、そのゆるやかさが、都市のスクエアな壁構造に風穴を開けた。人を威圧するような四角いビルの壁が切断され、穴が開けられると、それが精密なものでないからこそ、広く何でも生きてゆける空間へと開かれたものになったのだという感覚がある。粉がふきそうなくらい古いビルの切断面を見せられて、そこから40年以上経っていても、解放感を覚えるのはわたしだけではないに違いない。
テーマは建物ばかりではなかった。たとえば、食というものもあった。それらはどのように技術が進歩しようとも個々の身体に影響する。そのマージンにゆるやかに入っていき、「プロジェクト」を立ち上げる精神は、なお現代的なものだと感じた。
※写真は撮影自由。このような過去の呪縛から自由になった展覧会がもっと増えてほしい。