1972年のエルヴィン・ジョーンズといえば、名盤『Live at the Livehouse』の第1集と第2集(Blue Note、1972年)である。
Dave Liebman (ss, ts)
Steve Grossman (ts)
Gene Perla (b)
Elvin Jones (ds)
はじめて聴いた当時はサックスの違いがよくわからず、またゴリゴリすぎてあまり馴染めなかった。いま改めて聴いてみると、最小限のメンバーでエネルギーを放出しまくっていることが実にクールでカッコよく思える。特にスティーヴ・グロスマンの独特の情が入ったブロウには痺れる。これと比較すると、後年にメンバーを頻繁に入れ替えてエルヴィンが父親のように振る舞ったジャズ・マシーンが、緊張感に乏しいショーケースのように思えてしまう。
『Mr. Jones』(Blue Note、1969、72年)は『Lighthouse』の影に隠れている。しかし、特に1969年よりも72年のセッションがやはり良い(『Lighthouse』の約2か月前)。パーカッションやコンガの打楽器を増やしていることは気にならない。エルヴィンが圧倒的なので居ても居なくても同じようなものだ。72年の5曲中3曲では、われらがヤン・ハマーがピアノを弾いていることが面白く、これがサウンドの手触りの大きな違いとなっている。どちらも悪くない。とはいえ、ハマーがピアノを弾かず、デイヴ・リーブマンも吹かず、スティーヴ・グロスマンが管楽器ひとりで情感たっぷりに演奏する「Soultrane」が白眉かと思えたりもする。
1969年
Joe Farrell (ts)
George Coleman (ts)
Pepper Adams (bs)
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)
Candido Camero (cga)
1972年
Dave Liebman (ss, ts)
Steve Grossman (ss, ts)
Pepper Adams (bs)
Thad Jones (flh)
Jan Hammer (p)
Gene Perla (b)
Elvin Jones (ds)
Frank Ippolito (perc)
Albert Duffy (tympani)
Carlos "Patato" Valdes (cga)
『Paris 1972』(Jazz Time、1972年)は『Lighthouse』の翌月、パリにおけるライヴ2枚組。1枚目では1曲でアート・ブレイキー、2曲でロイ・ヘインズが加わる謎編成だが、何かフェスででもあったのかな。ただそういうものは別に面白くはない。90年代にどこかのジャズフェスで、エルヴィン、ロイ・ヘインズ、それと誰かが3人並んで叩くという企画を観たが、くだらなくて忘れてしまった。
もちろん『Lighthouse』のメンバーであるから聴き所満載。特に、ここでもグロスマンがワンホーンで吹く「Soultrane」か。
Elvin Jones (ds)
Dave Liebman (ss, ts, fl)
Steve Grossman (ts)
Gene Perla (b)
Art Blakey (ds)
Roy Haynes (ds)
グロスマンとリーブマンの強力ツインサックスを置いたグループだとこんなところだが(録音は他にもある)、さらにこのあとの11月には、菊地雅章、ジーン・パーラとのピアノトリオでの傑作『Hollow Out』(Philips、1972年)を吹き込んでいる。充実した年だったのだな。
Elvin Jones (ds)
Masabumi Kikuchi 菊地雅章 (p)
Gene Perla (b)
●エルヴィン・ジョーンズ
エルヴィン・ジョーンズ(1)
エルヴィン・ジョーンズ(2)
チコ・フリーマン『Elvin』(2011年)
ベキ・ムセレク『Beauty of Sunrise』(1995年)
ミシェル・ドネダ+エルヴィン・ジョーンズ(1991-92年)
ソニー・シャーロック『Ask the Ages』(1991年)
エルヴィン・ジョーンズ+田中武久『When I was at Aso-Mountain』(1990年)
エルヴィン・ジョーンズ『Live at the Village Vanguard』(1968年)、ジョージ・コールマン『Amsterdam After Dark』『My Horns of Plenty』(1978、1991年)
アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』(1978、1983年)
エルヴィン・ジョーンズ『At Onkel Pö's Carnegie Hall Hamburg 1981』(1981年)
高橋知己『Another Soil』(1980年)
菊地雅章+エルヴィン・ジョーンズ『Hollow Out』(1972年)
フィニアス・ニューボーンJr.『Back Home』(1969年)
藤岡靖洋『コルトレーン』、ジョン・コルトレーン『Ascension』(1965年)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、1995年)
マッコイ・タイナーのサックス・カルテット(1964、1972、1990、1991年)
『Stan Getz & Bill Evans』(1964年)
ソニー・シモンズ(1963、1966、1994、2005年)
ジミー・フォレスト『All The Gin Is Gone』、『Black Forrest』(1959年)