Sightsong

自縄自縛日記

シャイ・マエストロ『The Dream Thief』

2018-10-13 09:31:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

シャイ・マエストロ『The Dream Thief』(ECM、2018年)を聴く。

Shai Maestro (p)
Jorge Roeder (b)
Ofri Nehemya (ds)

シャイ・マエストロのライヴを観ればわかることだが、あくまで冷静でありながらも、ピアノの響きや旋律がもたらした結果がなんなのかを考え、すぐ次に活かしていくプロセスを隠そうとしない。ここでも予定と即興とのどちらがどちらでもいいような領域にあるとさえ思える。曲想はクラシカルでもあり、フォーク的でもあり、そしてこのプロセスがジャズ。あたりまえか。

白眉はホルヘ・レーダーのベースとハモり抜きつ抜かれつし、終始悦びのテンションを保っている「New River, Nwe Water」。しばらくしてお馴染みのテーマが浮かび上がる「These Foolish Things」も良い。

こんなに完成度が高くて動悸動悸させられて、この人はフォーマット的な冒険をしなくても良いのではないか。いやピアノソロももっと聴きたい。

●シャイ・マエストロ
シャイ・マエストロ『The Stone Skipper』(2016年)
カミラ・メザ+シャイ・マエストロ@新宿ピットイン(2016年)
マーク・ジュリアナ@Cotton Club(2016年)
シャイ・マエストロ@Body & Soul(2015年)
マーク・ジュリアナ『Family First』(2015年)


浅川マキ『Stranger's Touch』

2018-10-13 08:02:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

浅川マキ『Stranger's Touch』(東芝EMI、1989年)。

浅川マキ (vo)
本多俊之 (as, ss, key, p) (4, 6,7,10)
下山淳 (g) (5)
奈良敏博 (b) (5)
野島健太郎 (key) (5)
池畑潤二 (ds) (5)
山下洋輔 (p) (1)
川端民生 (b) (1)
近藤等則 (tp, toys) (1,2)
山内テツ (g) (2)
Bobby Watson (b) (6,7)
Tony Maiden (g) (6)
Andre Fischer (ds) (6)
Tristan Honsinger (cello) (3)
原田芳雄 (語り) (2,3)

最近中古盤で見つけた。LPが出されなかった作品であり、過去作品の再録と編集を中心としたものだからとも思い、今まで聴いていなかった(1曲だけ『Darkness I』に収録されている)。

しかし、実は単なるコンピレーションでないことが、浅川マキ世界を濃密に示すものとなっていることに気が付かされた。彼女の語りが随所に入っていることもその要素のひとつである。それに、暗がりでこっそり踊るようなトリスタン・ホンジンガーのチェロに、原田芳雄と浅川マキの語りが重ね合わせられて、ここまでイメージがふくらむものとは思いもしなかった。

本多俊之のサックスも時代と分かち難いものなのだな。

●浅川マキ
浅川マキ『Maki Asakawa』
浅川マキの新旧オフィシャル本
『浅川マキがいた頃 東京アンダーグラウンド -bootlegg- 』
『ちょっと長い関係のブルース 君は浅川マキを聴いたか』
浅川マキが亡くなった(2010年)
浅川マキ DARKNESS完結
ハン・ベニンク キヤノン50mm/f1.8(浅川マキとの共演、2002年)
浅川マキ『闇の中に置き去りにして』(1998年)
<浅川マキに逢う>ライブ&上映会@西荻窪CLOPCLOP(1993年、2017年)
『浅川マキを観る vol.3』@国分寺giee(1988年、2017年)
『山崎幹夫撮影による浅川マキ文芸座ル・ピリエ大晦日ライヴ映像セレクション』(1987-92年、2017年)
浅川マキ『アメリカの夜』(1986年)
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年)
浅川マキ『幻の男たち』 1984年の映像
浅川マキ『スキャンダル京大西部講堂1982』(1982年)
浅川マキ『ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏家たちのOKをもらった』(1980年)
オルトフォンのカートリッジに交換した(『ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏者たちのOKをもらった』、1980年)
浅川マキ『灯ともし頃』(1975年)
『恐怖劇場アンバランス』の「夜が明けたら」、浅川マキ(1973年)
宮澤昭『野百合』(浅川マキのゼロアワー・シリーズ)
トリスタン・ホンジンガー『From the Broken World』(浅川マキのゼロアワー・シリーズ)


クレイグ・ペデルセン+中村としまる、エリザベス・ミラー+広瀬淳二@Ftarri

2018-10-13 06:35:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2018/10/12)。

Craig Pedersen (tp)
Elizabeth Miller (amplified cl)
Toshimaru Nakamura 中村としまる (no-input mixing board)
Junji Hirose 広瀬淳二 (ts)

昨年来のクレイグ・ペデルセンとエリザベス・ミラーの来日である。カナダ名物のメープルシロップをいただいた。

■ クレイグ・ペデルセン+中村としまる

クレイグさんは昨年よりも表現が一方向に収束し、その意味では少し過激になったようにも思える。トランペットで息遣いのみを増幅するのだが、その息遣い自体はピストンの動きによってマイクの前に既に加工され増幅されている。ピストンを指で下から上へと押さえるのもユニークだ。途中でマウスピースを外して息を吹き込み、また別のマウスピースに付け替えもした。外して直接吹くと痛いってピーター・エヴァンスは言っていたけど、と訊くと、彼はアクティヴにプレイするからそりゃ痛いだろう、でも自分も常に痛いんだ、と。

その横で、中村さんは爆走などはしないが、ときに奇妙な音の棘があらぬ方向から突き出てきて驚かされる。静かな胎動はエレクトロニクスの息遣いなのかもしれない。しかし何かが提示されるときの加速度が速く、静かであっても周囲にマーキングをしていく。

クレイグさんも参加した、ロスコ―・ミッチェルのモントリオール・トロント・アート・オーケストラによる『Ride the Wind』も聴かないと。

■ エリザベス・ミラー+広瀬淳二

広瀬さんのプレイはとても新鮮で、頬や唇の動きであそこまでの奇妙な音を出し続けられるのかと驚いた。途中からヴァイブレイターをサックスやその横の発泡スチロール、またマウスピースにも当てた。(唇を震わせてしまい、こそばゆかったのか笑っていた)

エリザベスさんはクラリネット、机上の小道具(エレクトロニクス、ファン、磁石、マテリアルとしてのCDなど)、またクラリネットに戻って手前半分のみ、そしてまた完全形のクラリネット。

ふたりとも静かな音を繰り出し続けた。その音が、おのおのの触る楽器の近傍3センチメートル以内に限定されているように感じられた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●クレイグ・ペデルセン、エリザベス・ミラー
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+徳永将豪+増渕顕史+中村ゆい@Ftarri(2017年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる@Ftarri(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
クレイグ・ペデルセン、エリザベス・ミラーの3枚(2016-17年) 

●中村としまる
フタリのさとがえり@Ftarri(2018年)
竹下勇馬+中村としまる『Occurrence, Differentiation』(2017年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
中村としまる+沼田順『The First Album』(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)
山内桂+中村としまる『浴湯人』(2012年)
中村としまる+ジョン・ブッチャー『Dusted Machinery』(2009年)

●広瀬淳二
広瀬淳二『No-Instrument Air Noise』(2017年)
ブライアン・アレン+広瀬淳二+ダレン・ムーア@Ftarri(2018年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
クリス・ピッツィオコス+吉田達也+広瀬淳二+JOJO広重+スガダイロー@秋葉原GOODMAN(2017年)
広瀬淳二+今井和雄@なってるハウス(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
広瀬淳二『SSI-5』(2014年)
広瀬淳二+大沼志朗@七針(2012年)
広瀬淳二『the elements』(2009-10年)