水道橋のFtarriにおいて、しばてつさんによる「リアル・タイム・オーケストレイション」という企画(2016/8/11)。なんといっても、大蔵雅彦、森順治という全く異なるタイプのサックス奏者の共演が気になって、足を運んだ。
Shibatetsu しばてつ (pianica, p)
Junji Mori 森順治 (as, bcl, fl)
Masahiko Okura 大蔵雅彦 (as, bcl)
Riuichi Daijo 大上流一 (g)
1、しば~大蔵~大上。しばさんは異なるピアニカを並べ、弄ぶように吹き始める。大蔵さんのアルトはやはり面白く、妙な倍音を出したり、真横に加えてヘンな音を出したり。大上さんは、横に古いラジオを置き、ギターで弾く音を飛ばしてそれで受信する(あとで訊くと、ヤフオクなんかで安く入手しているとか)。従ってノイズが入り、それも相まって、急に抽象空間があらわれた。
2、しば~森。森さんはアルトを吹く。大蔵さんのアルトが乾いてイラストレイティヴだとすれば、森さんのそれは湿っていて情で濁っている。その森さんのアルトには、ピアニカよりもピアノが合っているような印象。
3、森~大蔵~大上。森さんはフルートを、大蔵さんはバスクラを吹いた。このふたりがはじめて交わったこともあってか、存外に長く熱がこもった演奏となった。
4、森~大蔵。休憩の間に、しばさんが、バスクラのデュオを観たいと言い出した(わたしもそう思った)。なるほど、先の演奏でも感じられたふたりのコントラストが明確となった。
5、全員。最後まで誰もお互いに迎合しなかった。ずっと大上さんの音を聴いていると朦朧としてきた。
そんなわけで、脳のあちこちが思いがけず刺激されて、ひたすら面白いギグだった。
大蔵さんを観たのは90年代以来なのでもう20年近くも前である。大友良英さんの企画で、老いも若きも即興演奏家を集めるセッションが新宿ピットインであったのだ。故・金井英人さん、吉田アミさん、杉本拓さんなども出ていた記憶がある。藤川義明さんと翠川敬基さんが***っていた。大蔵さんは、自身のプレイについては、そのあと音を抑えた時代があって、またそのころに戻っているかもしれないと語った。
●参照
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)
本多滋世@阿佐ヶ谷天(2016年)(森順治参加)
M.A.S.H.@七針(2016年)
森順治+橋本英樹@Ftarri(2016年)
M.A.S.H.@七針(2015年)