ジャンゴ・ベイツは90年代には時代の寵児のように扱われていた。確かに聴きもしていたがそんなに無邪気にはしゃぐ気にもなれず、なんて人は少なくないのではないかと思うがどうか。しばらくは目立たなくなったなと思っていたのだが、気が付くと、またいろいろと発表している。
そんなわけでまた気になり、かれのピアノトリオ「Beloved」の新作『The Study of Touch』(ECM、2016年)が出たので聴く。
Django Bates (p)
Petter Eldh (b)
Peter Bruun (ds)
相変わらずトリッキーで才気煥発。これ見よがしな抒情とか激情とかいったものとは無縁。ひとは変わらないものである。オリジナル曲「We Are Not Lost, We Are Simply Finding Our Way」(いい曲名!)なんて変拍子で聴く耳の時間を狂わされて凄く愉快である。たぶんレコ屋でかけたら何人もがなんだこれと確認しにくるに違いない。
「Beloved」の初作は同じメンバーによる『Bird』(Lost Marble、2008年)。タイトル通りチャーリー・パーカーの曲ばかりを演奏したものだが、やはり最初から最後まで仕掛けだらけ。こういうものを聴いてふだん使わないシナプスに信号を送っても良いかもしれない。なお『The Study of Touch』はほとんどオリジナル曲だが1曲だけバードの「Passport」が収録されていて悪くない。