済州島の中西部にある平和博物館に足を運んだ。近くには茶畑や茶文化を展示するオーソルロクティーミュージアムがあり、うまい緑茶のアイスやロールケーキを食べることができる。宿のご主人は、茶の博物館のことは知っていたが、平和博物館のことは知らなかった。タクシーの運転手は、日本人ならそれを見て反省することも良いだろうと言っていた(と、通訳してくれた)。もちろん自然なことである。
最初に13分間ほどの映像を観る。日本軍が済州島に駐留したのは1945年はじめから敗戦までの1年未満に過ぎないが、それは大きな戦略上の意図を伴っていた。日本軍は済州道民を強制的に動員して洞窟陣地を作り、日本の「本土」防衛のための場所にしようとしていた。すなわち、済州島が沖縄のようになる可能性は十分にあった。映像では、動員された体験者が、手袋もなく掘ることを命じられ惨めなものだったと語っていた。
展示室の中には、日本軍の遺したものが主に展示されている。また日本教育に使われた教科書の横には、安重根の写真を載せた自国の歴史書も置かれていた。朝鮮戦争時に北朝鮮軍によって使われたロケット砲の残骸もあった。テーマが絞られていないのではなく、歴史をひとつながりのものとして見せようとするものと理解した。
外には、なんと、その洞窟陣地が保存されている。その一部には入ることができるのだが、戦慄すべきものだ。ここで戦争末期に虐殺や「集団自決」が起きていたかもしれないのである。
Nikon P7800
●参照
済州島四・三事件69周年追悼の集い〜講演とコンサートの夕べ
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
オ・ミヨル『チスル』、済州島四・三事件、金石範
文京洙『済州島四・三事件』
文京洙『新・韓国現代史』
金石範、金時鐘『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか 済州島四・三事件の記憶と文学』
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』 済州島のフォークロア
金石範『新編「在日」の思想』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編
金時鐘講演会「日本と朝鮮のはざまで」
金時鐘『朝鮮と日本に生きる』
金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
『海鳴りの果てに~言葉・祈り・死者たち~』
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
梁石日『魂の流れゆく果て』(屋台時代の金石範)
仲里効『悲しき亜言語帯』(金時鐘への言及)
林海象『大阪ラブ&ソウル』(済州島をルーツとする鶴橋の男の物語)
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』(済州島から大阪への流れ)
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
鶴橋でホルモン(与太話)
三河島コリアンタウンの伽耶とママチキン
尹東柱『空と風と星と詩』(金時鐘による翻訳)
『越境広場』創刊0号(丸川哲史による済州島への旅)
徐京植、高橋哲哉、韓洪九『フクシマ以後の思想をもとめて』(済州島での対談)
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』(沖縄と済州島)
宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(沖縄と済州島)
長島と祝島(2) 練塀の島、祝島(祝島と済州島)
野村進『コリアン世界の旅』(つげ義春『李さん一家』の妻は済州島出身との指摘)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」
「岡谷神社学」の2冊