日々のつれづれ(5代目)

旅行レポート以外の、細々としたこと。
割とまめに書くようにしています。
お気軽にコメント下さい。

【写真展】芦沢武仁写真展 「マラムレシュ 家の記憶」

2012-10-04 07:11:28 | 本・映画・展覧会
 マラムレシュとは、ルーマニアの地方の名前だそうだ。ブカレストしか行かなかったから分かんない。列車だったので掠めたかもしれない。ブカレスト、たぶん来年もう一度行くだろうな、列車の旅の都合で…それはさておき。

鮮やかな内装、鮮やかな民族衣装を纏った住人。この地方に住む人々の家を訪ね、中を撮らせてもらったことに驚く。作品の仕上がりにまた驚く。写真と言うよりイラストに近い何と言うか、ボケと言うか滲み具合。時期を変えて撮った2枚の写真を見事に合成したパノラマ写真の出来。合成写真やコラージュって好みではないのだけど、本展のは違和感なく見られる。

 広い家はない。よくよく見れば鮮やかな色こそ塗られているけどテーブルは歪んでたり、扉は朽ちていたり、引き出しの金具は外れてたり。寒地なのだろう、小さい窓しかない部屋にぽつんと点された電球(蛍光球タイプもあるのがせめてもの救い)、色とりどりの布で飾られているのは文化の誇りだけでなく、貧しさを隠す意図もあるのではないかと思ってしまう。

 映っている住人の大半はお年寄り。残念ながら健康そうな人はいない。このムラで生涯を過ごして来たのだろうか、特にお婆さんはおしなべて表情が暗い。諦念なのかな。多くない年金、町に出たきりの子供達、そんなイメージを持ってしまう。

 「器」の明るさと「中身」の暗さの対比が際立つ、この地方の問題を無言のうちに訴えている作品展のように感じた。

 2012年9月28日 銀座ニコンサロンにて
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする