日々のつれづれ(5代目)

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【本】吉村 昭著 「ポーツマスの旗」(新潮文庫)

2017-02-09 06:27:59 | 本・映画・展覧会
 昨年夏の英国ドライブでポーツマスに寄った。その時ふと著名と思われる本書を読んでいないことに気付き入手していたのにようやく手をつけた。いやはや。

 日露戦争は中国戦線の快進撃、日本海海戦の大勝利ののち講和となったが、実情としては「ここで手を打っておかないと反攻されたらひとたまりもない」状態だったという。それをロシアに悟られず、ロシアにはロシアの事情があるのを調べいかに上手いこと講和に持ち込むか。本書は日本全権・小村寿太郎の卓越した交渉ぶりだけでなく、それを支えるスタッフや各国公使、政府首脳などの姿も描いて本の厚みを感じぬほどどんどん読み進められると言うか引き込まれる。

 人間としてはちょっといびつと言うか破綻しているように見える小村が起用され、みごと期待に応えるが講和に至る裏事情を知らぬ国民からは非難され不遇と言える生活に戻ったり、再度起用され内閣入りすると生き生きと活躍したり、毀誉褒貶と言うのかアップダウンの激しい小村の生涯は良くも悪くも現代では考えられない。そして講和成立後で起こった東京市内の騒擾事件を見ると、日本社会の未熟さが伺える。そして、なまじ講和が成ったが故に有頂天になり増長しやがて開戦~敗戦へと転がっていった我が国主導者の馬鹿さ加減が想起される。

 大変な時代だったのだなと思うと同時に、才ある人が存分に活躍できたのだなと、能力や正道以前に、党利党略に走っていると思える昨今の政府や官僚を思わずには居られない。国民にとってどちらが幸せなことだろうか。

 2017年1月31日 通勤電車にて読了
コメント
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