日々のつれづれ(5代目)

旅行レポート以外の、細々としたこと。
割とまめに書くようにしています。
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【映画】ザ・サークル

2017-12-06 20:03:55 | 本・映画・展覧会
 今晩は映画のハシゴ、「ごちうさ」も本作も、いつもの映画館では上映しないので効率よく。

 難病の父親を抱える冴えないテレオペが、たまたま潜り込めた成長著しいIT企業で頭角を現し、エスカレートした「自己の情報化」は結果として親子関係も自身もボロボロになってゆくさまを描く、現代社会への警告の作品。準主役と言うべきIT企業のCEOにトム・ハンクス。作中に出てくる画像表示が綺麗でクール。

 もはや何でもウェアラブルだ。リストバンドから身体コンディションを取るのは実用化されている。そして指先ほどのカメラ、これで24時間実況中継!?「トイレタイム」は3分。風呂や恋人との時間はどうなる?カメラ付けた服を脱ぐから良いのか。違う、この実況中継は自宅内の何ヶ所にもカメラが設置されている。アダルトサイトでそんなのがあるらしいね、観たことないけど。

 それだけではない。ネット上のあらゆるリソース(この企業のアカウントを持った全世界数億人を含む)で「人捜し」をしてしまう。そしてそれは悲劇的な結果を生む。エグいのは、参加者、観ているものに意地悪さや嫌らしさが見えないこと。純粋にエンターテインメントを愉しんでいるように映されている。悪意が見えていればどれほど非難がラクだったか。CEOも腹黒い気配は見せない。純粋にITのチカラを信じ、「隠し事があるから悪事が起きる」と全てを白日に晒すことに何の葛藤もなさそう。この辺の割り切りには感心する。

 そして割り切りと言えば主人公のお嬢さんの割り切り方もすごい。自分が引き起こした悲劇の後始末のつけ方、日本人にはマネできないだろうな。遠まわしな報復とも言える手段をとるのだけど、それでも彼女は社に残る(らしい)。この行動原理、平均的ニッポン人に理解できるだろうか?賛同する必要はないが、こういうやり方もあるって理解できないと国際社会で上手くやってゆけないだろうなと思った。ストーリー展開に驚きはなかったけど、期待通り面白い(と言うか興味深い)作品だった。ところで写真は劇場ポップコーンなのだけど、どこも多いよね!

 2017年11月15日 TOHOシネマズ川崎にて
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【本】小川国夫著 「アポロンの島」(講談社文芸文庫)

2017-12-06 06:03:24 | 本・映画・展覧会
 飛行機の機内誌の書評で知って、それから古本で出物が出るのを待って、買ってからも「積ん読」から手にとって読むまでに時間がかかる本がある。本書など存在を知ってから読むまで半年はかかったのではないかな。しかし刊行からの年月を考えればどうと言う事はない。最初に刊行されたのは昭和32(1957)年。ちょうど60年前に世に出た作品集なのだ。何で今ごろ。

 内容は創作短編集だが、主人公はほぼ著者、内容もある程度のモチーフが存在していたようだ。それが解るのは巻末に著者による作品解説があるからで、極めて珍しい。それに解説、詳細な年表が加わり、文庫本とは思えない手厚さに驚かされる。そのぶん原稿(本文)が薄いのだと言えないこともないが、その内容は具体的な出来事と抽象的な空想や比喩暗喩が織られており理解は難しく思えた。内容は4部に分かれ、本書タイトルともなった「アポロンの島」ほか数編は昭和20年代末にベスパでヨーロッパ放浪をした時の経験が元、オートバイが中心ではないが壊れたり修理したりする様子は興味深い。そしてギリシャを始めとする諸国の記述こそ、旅心をくすぐる名作として機内誌に紹介されていたのではなかったか。確かに。

 静岡の藤枝に生まれた著者の少年時代(=戦時中)を描く作品は息苦しさと鬱屈した若気とが相まって空気感はことなるが、分かったような判らないような内省的な文面からはいかにも文学青年(少年)的な気負いが感じられた。

 読んで満足感も爽快感も得られたわけではないが、その時代の文学の空気を感じられた気がした。

 2017年11月15日 映画館の待合所にて読了
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