ツーリスト
2010年/アメリカ=フランス
汚れ無さを求めて
総合 70点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーのコンビによる『ツーリスト』という‘ロマンス’映画は、去年公開されたトム・クルーズとキャメロン・ディアスのコンビによる『ナイト&デイ』を想起させるのであるが、この2作品の大きな違いは『ナイト&デイ』(ジェームズ・マンゴールド監督)が敵方との容赦のない銃撃戦に終始したことに対して、『ツーリスト』のフランク・トゥーペロとエリーズ・クリフトン・ワードの2人は決して敵方に発砲しないという禁忌を立てていることにある。金庫に金銭の代わりにフランクの好きな本が保管してあった理由は、ガラス張りのその家が最初からフランクがイギリス警察のスナイパーが自分たちを狙っているギャングを狙いやすいようにと選んだところであることを証明しており、脱税した理由も意図的に自分たちを警察に追跡させるためで、ギャングを殺してくれたお礼のようにフランクは金庫に高額の小切手を残しておくことで、脱税容疑も晴れてしまう。
このようにアクションシーンを犠牲にする代わりに『ツーリスト』はヨーロッパ各国の景観だけではなく、自分たちの手を汚さずに行なう‘完全犯罪’という美しさを目指したのであるが、さすがにしがない数学教師であるフランクがいとも簡単に社交ダンスをこなしてしまい、そのことに対してエリーズが何の疑問も持たない辺りになると完全にオチが分かってしまう。
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ノンフィクション作家の広瀬隆が去年の8月に出版した『原子炉時限爆弾』という本が
ベストセラーになっている。東海大地震を前提としているところが惜しいのであるが、
絶好のタイミングの出版ではある。2011年3月16日の毎日新聞夕刊で広瀬隆は
「メディアはなぜ、東電や政府の発表を垂れ流すのでしょうか。放射能が漏れていても
『直ちに人体に影響を与えない』と繰り返しています。しかし、発表されているのは
1時間当たりの数値。365日×24時間で計算してみなさい。想像力もなく、レントゲン
並みとか自然界の何分の1と報道している印象です。」「仮に最悪の事態に至った
ならば、放射能汚染は1週間ぐらいかけてじわじわ列島を包んでいく。逃げる場所は
全くありません。」と述べている。メディアが直接現地へ行って調査することには無理が
あるだろうし、“直ちに人体に影響を与えない”のだろうから、“365日×24時間”と
わざわざ計算する必要もないであろう。結局原子力発電は日本人が選択したものだし、
そもそも絶対安全なエネルギー開発は無かったのだから、それなりの覚悟をしなければ
ならないだろうが、放射能汚染の恐ろしさを十分認識していて著書がベストセラーに
なって潤沢な資金を携えておそらくもう日本から脱出している広瀬隆は羨ましい。