種まく旅人 ~みのりの茶~
2012年/日本
水に流される過去について
総合
50点
ストーリー
0点
キャスト
0点
演出
0点
ビジュアル
0点
音楽
0点
主人公の農林水産省官房企画官は大分県臼杵市役所の農政局長として辞令を受けるのであるが、彼の名前が大宮金次郎であり、実際に「金ちゃん」と呼ばれているところから、まもなく江戸町奉行の遠山金四郎景元を主人公にした時代劇『遠山の金さん』と同じような身振りを演じることが分かってしまう。日本人にとっては既に‘お約束’となっているそのネタばれをとやかく言うつもりはない。問題は本作でテーマとなっている日本の農業以外のところにあるからである。
もう一人の主人公である森川みのりはアパレル会社で服飾デザイナーとして働いていたのであるが、リストラは免れたものの実は自分の就職は父親の森川修一の口添えがあったことを知る。自分の実力で就職出来たと思っていたみのりは父親と口論になった末に自ら会社を辞めて大分県臼杵市に住んでいる祖父で無農薬栽培のお茶農家を営んでいる森川修造を訪ね、病に倒れた祖父の代わりにお茶の栽培に挑むことになる。みのりの努力はなかなか報われないのであるが、結局父親の修一が密かに娘に差し出した、みのりの祖母が記録していた気象ノートのおかげで高級茶葉を生産出来るようになる。
このシーンが典型的なのであるが、ここには葛藤というものが存在しない。正確に言うならば葛藤は全て過去のものとして処理されている。修一とみのりの関係のみならず、お茶農家の後継ぎを拒絶して東京に行ってしまった修一と修造の関係もいつの間にか修復されており、大宮金次郎自身もかつて取引の失敗で相手を失っているはずなのだが、回想シーンだけで処理されている。とにかく過去は全て水に流してしまっており、物語が薄っぺらなものになってしまっているのである。
演出なのかたまたまなのか分からないが、大宮金次郎が市長と会って新たなプロジェクトを始めることになった時点から、それまで止まっていた、局長室に置いてあった大きな柱時計の振り子がスイングし始めたシーンはメタファーとして上手いと思った。
「君が代斉唱の時は手を横に」 橋下市長、発令式で注意(朝日新聞) - goo ニュース
大阪市の橋下徹市長によると、「君が代斉唱の時は手は前に組むのではなく横に置く
もの」ということなのだが、いつからそんなことが決められたのであろうか 普段歌を
歌う時にマイクを持つという理由もあるが、手を横に置いて歌うことなどはありえない。
誰かの君が代斉唱を聞く時に手を組まずに横に置くということは考えられるが、個人的には
手を横に置きながら君が代斉唱は難しいと思う。例えば、オペラ歌手が歌っている様子を
見ると却って両手を胸に組んで歌っていたりする。それは腹の底から本気で声を出して
歌うからであり、もしもオペラ歌手が手を横に置いて歌っていたならばふざけているように
見えるだろう。つまり橋下徹自身が本気で君が代を斉唱したことがないから頓珍漢なことを
言っているのである。