原題:『The Counselor』
監督:リドリー・スコット
脚本:コーマック・マッカーシー
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:マイケル・ファスベンダー/ペネロペ・クルス/キャメロン・ディアス/ハビエル・バルデム
2013年/アメリカ・イギリス
「外国語」の重要性について
結局最後まで黒幕が誰なのか明かされないことが本作を不評たらしめているようであるが、おそらく問題の本質はそこには無いはずで、主人公に「ロイヤー(Lawyer)」ではなく、「カウンセラー(Counselor)」と名乗らせておきながら、相手と全く「カウンセリング」出来ない原因は何なのかが描かれることになる。
例えば、カウンセラーとの会話の折にヘフェが口にする「マチャード」とは、1898年の米西戦争の時に、アメリカに対抗するために「Generation of '98」という組織を結成した際に中心的役割を果たしたスペインの詩人であるアントニオ・マチャード(Antonio Machado)のことである。あるいは、カウンセラーが気がついた、壁に貼られたポスターに写っていた人物は、『砲艦サンパブロ(The Sand Pebbles)』(ロバート・ワイズ監督 1966年)で、一等機関兵曹のジェイク・ホールマンを演じたスティーヴ・マックィーンであるが、1926年に内乱が続く中国におけるアメリカ人と中国人との軋轢が描かれている。
これらが何を意味するのか推測するならば、相手とコミュニケーションを取ろうとするならば、相手の母国語を理解しなければ無理であり、いくら「カウンセラー」としての交渉術を学んでいたとしても意味をなさないのである。だから本作における勝ち組は中国に行ってもすぐに中国語をマスターすると喝破するマルキナなのであり、スペイン語の部分が敢えて翻訳されていない理由も、理解出来ないならばスペイン語を勉強しろという挑発であろうから、不評なのはやむを得ないのかもしれない。