原題:『すべては君に逢えたから』
監督:本木克英
脚本:橋部敦子
撮影:橋本尚弘
出演:玉木宏/高梨臨/木村文乃/東出昌大/時任三郎/大塚寧々/本田翼/倍賞千恵子
2013年/日本
『カサブランカ』の解釈について
デートムービーにいちいちケチをつけるようなことは避けたいとは思うが、ウェブデザイン会社社長の黒山和樹がクリスマスイヴに夜行バスで田舎に帰ろうとする佐々木玲子を東京駅で待ち伏せして、「初めてのデートで観る映画」を尋ねた際のシーンに関してはやはり一言言っておきたい。
玲子のアドバイスで2人は映画館で『カサブランカ』(マイケル・カーティス監督 1942年)を観ることになる。女優である玲子は勉強目的でレンタル店でアルバイトをしながら昔の名作を観ていたのであろうから、年上の黒山よりも映画に関しては詳しいのであろう。そして「君の瞳に乾杯」と訳された有名なシーンで、黒山が感動している姿を見て玲子はほくそ笑んでいるのであるが、あのシーンに女性が感動することはあっても、男性が感動するとは思えない。『カサブランカ』において男性が感動するシーンがあるとするならば、ハンフリー・ボガートが演じるリック・ブレインがイングリッド・バーグマンが演じるイルザ・ラントと彼女の夫のヴィクトル・ラズロを身を挺して飛行機に乗せて亡命させるところであろう。
このようなシーンを初め、全てのシーンにおいて可もなく不可もないように無難にまとめているような印象が拭えない。