原題:『ばしゃ馬さんとビッグマウス』
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔/仁志原了
撮影:志田貴之
出演:麻生久美子/安田章大/岡田義徳/山田真歩/清水優/秋野暢子/松金よね子/井上順
2013年/日本
夢を叶えられる「環境」について
シナリオライターを目指している34歳の女性を主人公に設定するということは、それではその作品自体のシナリオは面白いのかというツッコミ覚悟がなければ出来ないはずであるが、さすがによく練られた脚本だと思う。例えば、『あの日、母へ』という映画の上映後、監督と主演した女優が登壇してインタビューを受ける際に、初めての主演で緊張したのではないのかと問いかけるインタビュアーに「別に」と女優に答えさせる、多少色あせてはいるが‘鉄板’のギャグや、あるいは天童義美に「Original Thought(独自の考え)」や「Man Knows So Much, Does So Little(行動を伴わない頭でっかちの男)」と書かれたTシャツを着させて皮肉るところなど、シナリオスクールの壁に菊島隆三の名前を載せているだけの細かい配慮がある。
夢を叶える人と諦める人との線引きというのは難しいと思うが、‘体を張って’までも自分の書いたシナリオを売り込もうとするマツモトキヨコや、馬淵みち代には冗談としていたが、実は母親が元ソープ嬢で、悲惨な幼少時代を過ごしていたという天童義美と、主人公の馬淵みち代に違いがあるとするならば、みち代には帰る実家があるということだと思うのだが、それは監督が意図した結論なのか、あるいはたまたまそういうストーリーの流れになったのか気になるところではある。