原題:『Monte Walsh』
監督:ウィリアム・A・フレイカー
脚本:ルーカス・ヘラー/デイヴィッド・ツェラグ・グッドマン
撮影:デイヴィッド・M・ウォルシュ
出演:リー・マービン/ジャンヌ・モロー/ジャック・パランス/ミッチ・ライアン/ジム・デイヴィス
1970年/アメリカ
グダグダの「最後の西部劇」
作品冒頭において、狼を見つけたモンテ・ウォルシュはライフルで撃とうとするのであるが、何故かビッグ・ジョーのことを思い出して、なかなか撃とうとせずに、仲間のチェット・コリンズが仕留める。西部劇の出だしとしてはスッキリしないものであるが、本作はこの後も、モンテがベッドの上でガールフレンドの横でタバコを作ったり、雇い先の牧場でショーティー・オースティンと空の缶を撃ち合ったり、食事を巡ってコックとひと悶着あったり、カードゲームの最中にテーブルをひっくり返して全ての金を巻き上げたりする次第で、とにかくカウボーイにはもはや仕事がなく、暇を持て余しているのである。
ファイティング・ジョーは自ら馬を暴走させて振り落とされて絶命し、仲間が3人解雇されたことを巡って大喧嘩になるが、それを雇い主に言い出すことも出来ず、その間にマルティーニは鉄道工事で賑わっているチャーリービルに引っ越してしまう。
メアリーと結婚して金物屋を営むことにしたチェットに刺激されて、モンテもマルティーニを追いかけていき結婚を申し出る。つまりは流浪のカウボーイを引退しなければならないのであるが、暴れ馬の白馬を馴らそうとするものの、却って多くの牛を逃がしてしまうという失態を犯してしまう。偶然にもその暴れ馬を手なずけたモンテを見ていたサーカスの団長が、高額の給料でモンテを雇うことを申し出る。最初は定職にありつけると乗り気だったモンテも、「テキサス・ジャック・バトラー」なる芸名を与えられてウエスタン・ショーに出演することに違和感を覚え、結局、仕事を断ってしまうのであるが、もはや理想のカウボーイとは劇中にしか存在しないことを思い知らされる。実際のカウボーイたちは銀行強盗犯や牛泥棒に成り果てているのである。
そんな時、金物屋のチェットの店にショーティーが強盗に押し入り、チェットは射殺されてしまう。同じ頃、マルティーニは病に倒れて死んでしまうのであるが、彼女は葬儀代として遺産を残しており、「女伯爵」としてカウボーイよりも立派な最期を遂げる。彼女の部屋からモンテが出るショーティーがおり、2人は撃ち合いを始める。モンテの右肩を撃って、拳銃を扱えないと判断したショーティーが油断した隙をついて左手で拳銃を撃って、カウボーイとしての感の鈍ったショーティーを射殺したモンテは、ラストにおいても見つけた狼を撃たずにビッグ・ジョーの話を繰り返し、理想のカウボーイを目指すことになる。
『ワイルドバンチ』(サム・ペキンパー監督 1969年)や『許されざる者』(クリント・イーストウッド監督 1992年)など「最後の西部劇」として傑作と呼ばれているものは多々あるようだが、「The Good Times Are Comin」というテーマ曲をママ・キャス(Mama Cass)に歌わせているなど、多大にアメリカン・ニューシネマの影響が伺え、無駄だと思われるようなシーンが見当たらない本作もいずれDVD化されるなどして傑作の一本として認められるはずである。