原題:『合葬』
監督:小林達夫
脚本:渡辺あや
撮影:渡辺伸二
出演:柳楽優弥/瀬戸康史/岡山天音/門脇麦/桜井美南/りりィ/オダギリジョー
2015年/日本
洋楽が流れる日本版「アメリカンニューシネマ」について
慶応四年(1868年)の鳥羽・伏見の戦いが終わり、「江戸」そのものが終わろうとし、新政府と将軍慶喜を援護する目的で結成された「彰義隊」が一触即発の中、主人公の吉森柾之助に緊張感は感じられない。養子だった柾之助は事故死のような形で死んだ父親の敵討ちを母親たちに強いられ、行く宛てがなかったために彰義隊に入ったような感じで、いわゆる「ノンポリ」で、むしろ松源楼の女将の姪の「かな」に夢中で、刀代として渡されたお金でかなにプレゼントするかんざしを買ったのだが、かなは秋津極に夢中で、かなに頼まれた極宛ての手紙を破り捨てた柾之助はかんざしを遊女に渡してしまう。
一方、秋津極は最初から将軍のために死ぬ気で、だから許嫁だった福原家の福原砂世と別れてしまうのであるが、一緒に活動している柾之助は相変わらず呑気で、茶碗の中で二人の武士が刀剣で切り合うところをただ眺めているのである。
ところが開戦するとすぐに彰義隊は劣勢を強いられ、幼なじみの福原悌二郎の死体を見てようやく柾之助は現実の厳しさを思い知るのである。辛うじて柾之助と極は逃げ切れたのであるが、逃亡を潔しとしない極が切腹する様子を柾之助はただ眺めていることしかできないのである。