原題:『The Post』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:リズ・ハンナ/ジョシュ・シンガー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:メリル・ストリープ/トム・ハンクス/サラ・ポールソン/ボブ・オデンカーク
2017年/アメリカ
「ポスト」の重圧について
ワシントン・ポストの社主で発行人だった夫のフィリップ・グラハムが拳銃で自殺した後に、妻のキャサリンが夫の会社を引き継いだ年は1963年で、正式に就任したのは1969年。
1971年にニューヨーク・タイムズが「ペンタゴン・ペーパーズ」をスクープした時にワシントン・ポストの一面は要人の娘の結婚式に関するものだったらしい。ワシントン・ポストという地方紙が当時どのような性格の新聞だったのかよく分からないのだが、本作を観る限りではキャサリンは地元に根差した「アット・ホーム」なものを目指していたのではないだろうか。
ここで気になるのが原題の「ザ・ポスト」である。それはもちろんワシントン・ポスト紙を指しているのではあろうが、「Post」には「郵便」という意味もある。つまり本来ならばキャサリンは自分の好きなように編集したかったはずなのに、「郵便」として突然届けられた「ペンタゴン・ペーパーズ」を巡っていきなり「報道の自由」という重い責任を強いられる地方紙が混乱する「不条理劇」が二人の大物俳優を中心に描かれているのではないだろうか。
作品冒頭で使用されていたクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの「グリーン・リヴァ―」を和訳しておきたい。
「Green River」 Creedence Clearwater Rivival 日本語訳
冷たい水が流れているところへ俺を連れて行って欲しい
俺が愛しているものを忘れさせないでくれ
ナマズが食いつく丸太小屋に泊まって
夜に川沿いを歩いていくと
月明りの中で裸足の少女たちが踊っている
ウシガエルが俺を呼んでいる声が聞こえる
俺が木にかけたロープはまだあるだろうか
浅瀬に向かって飛び跳ねるのが何より好きなんだ
黒砂糖入りのパイやトンボがおまえに母親を思い出させる
平べったい石を拾い上げると
グリーン・リヴァ―に向かって投げて跳ねさせる
コーディ・キャンプで俺は時を過ごした
そこには無賃で貨車に乗る者たちや
枕木の上を歩いて旅する者たちも一緒だった
コーディ親子が俺を連れて言ったんだ
「おまえは世界がくすぶっていることを知るだろう
もしも途方に暮れてしまったならば
我がグリーン・リヴァ―に戻ってこいよ」と
Creedence Clearwater Revival - Green River (Lyric Video)