MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

日本の「アイヒマンたち」について

2021-05-09 22:36:01 | Weblog


(2021年5月8日付毎日新聞朝刊)

 ドイツの強制収容所から1200人のユダヤ人を救出したオスカー・シンドラーについてはスティーヴン・スピルバーグ監督が『シンドラーのリスト』(1993年)で描いており、日本にも「日本のシンドラー」と呼ばれる杉原千畝がおり、『杉原千畝 スギハラチウネ』(チェリン・グラック監督 2015年)という映画にもなっている。
 これは逆もまた真だと思うのは、殺されることを知っていながら多くのユダヤ人を強制収容所に送ったアドルフ・アイヒマンに対し、自分がしていることがどのような結果をもたらすのか知っていながら真実から目を逸らし自己保身に走りただ上司の命令を勤勉にこなしたことをハンナ・アーレントは「悪の凡庸さ(the banality of evil)」と呼んだのである。
 しかしこのようなことが21世紀にもなっていまだに行なわれていることをアーレントが知ったらどのように思うだろうか。例えば名古屋出入国在留管理局で収容中にスリランカ人女性が亡くなったことに対して出入国在留管理局で働く職員たちはどのように考えているのだろうか。彼らの考えが明確にならないどころか明確にならないが故に「帰国しないと同じ目に遭わせるぞ」という暗黙の恫喝が非正規滞在移民(undocumented immigrant)に対して発せられているのである。
 これまで築き上げてきた世界における日本の信頼を雲消霧散させようとしている日本の出入国在留管理局は日本の恥である。


(2021年5月14日付毎日新聞朝刊)
gooニュース
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