原題:『J'accuse』 英題:『An Officer and a Spy』
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロマン・ポランスキー/ロバート・ハリス
撮影:パヴェル・エデルマン
出演:ジャン・デュジャルダン/ルイ・ガレル/エマニュエル・セニエ/グレゴリー・ガドゥボワ
2019年/フランス・イタリア
「真実と正義」で作られる映画について
舞台は1894年のフランス。作品の冒頭はユダヤ人の陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を宣告されるのだが、このシーンが当時描かれた挿絵を忠実に再現しており、それのみならず本作は当時フランスで主流になっていたマネやロートレックなどの印象派の作品をモチーフに取り入れており、監督の本気度が伺えるのだが、冒頭で「本作は史実に基づく」と断ってはいるものの、かなり脚色していることは知っておいた方が良いと思う。実際に作品前半は諜報部に配属されたばかりのジョルジュ・ピカール大佐が上層部とドレフュスが書いたとされる密書の筆跡鑑定を巡る攻防なのだが、DNA鑑定とは違い、どうもグダグダで、それはもちろん作品の問題ではなく、当時の捜査がグダグダなのである。
ところで個人的には本作の肝はラストシーンにあると思う。1907年に陸軍大臣を務めているピカールの下にドレフュスが訪ねてくる。軍に対する奉公に対して自身の中佐という階級は低いのではないかという問いに対して、大臣という立場にいるピカールは以前敵対していた相手とも協力しながら国を治めなければならないので無理に規則は変えられないと断るのである。それを聞いたドレフュスは、「ドレフュス事件」で一番得をしたのはピカールだと言うのだが、ピカールはただ真実と正義のために仕事をしただけだと応じるのである。このピカールの言葉は少女への淫行容疑で1977年に有罪判決を受けて、釈放後にアメリカからパリへ移住したポランスキー自身の言葉のように聞こえる。ポランスキーもまた「真実と正義(ところで何の?)」のためにクオリティーの高い作品を生み出しているはずだからである。
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