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 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『神は見返りを求める』

2022-06-28 19:58:59 | goo映画レビュー

原題:『神は見返りを求める』
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
撮影:志田貴之
出演:ムロツヨシ/岸井ゆきの/若葉竜也/吉村界人/淡梨/柳俊太郎
2022年/日本

「知性」と「感性」による映像の作り方の違いについて

 最初に前提として本作が本当に「映画」なのかどうかという問題があると思う。それは本作の三分の一を占めるであろう「YouTube的」映像が含まれている作品がはたして映画と呼べるに足るもなのか考える必要はあると思うからである。
 それでは「映画」と「YouTube」の違いをはっきりさせておかなければならないだろう。それは「純文学」と「エンタメ小説」の違いと例えてみても分かりづらいだろうから、趣味がDVD観賞という人には二種類いて、「映画」か「AV」かと言った方が分かりやすいと思う。言い換えるならば、「知性」に訴えかけるものと直接「感性」を刺激するものとの違いであり、それが主人公の川合優里がサイン会で少女に「その時だけ楽しめれば作品は歴史に残らなくても良い」と言われたことに対する答えにもなると思う。
 改めて本作が映画かどうか勘案してみるならば、「YouTube的」映画と答えたくなる。それは決して折衷案ではなく、感性至上主義のような作りのYouTubeを巡り、YouTubeの映像制作に関わる全てのスタッフが感情をむき出しにして相手に関わった結果が、主人公の田母神尚樹と優里が、田母神の会社の後輩の梅川葉も巻き込んで最後までお互いに嫌悪感を隠さない子供のような有様と、熟慮の無い撮影による優里の全身の大火傷と田母神が正体を暴いた覆面YouTuberに傘で背中を刺されてスマホを奪われるという救いようのない結末なのである。それは負の側面だけではなく、例えば、素顔を晒してかつて優里と一緒に踊っていたダンスを披露する田母神を見て反応する優里と、入院している優里の「でも、ありがとう」と言っている場面だけを何度も繰り返してスマホで見る田母神の条件反射的な感性も関わっているはずなのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/bikenews/entertainment/bikenews-261586


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