原題:『わたし達はおとな』
監督:加藤拓也
脚本:加藤拓也
撮影:中島唱太
出演:木竜麻生/藤原季節/菅野莉央/清水くるみ/森田想/桜田通/山崎紘菜/片岡礼子
2022年/日本
時系列を歪めることによる「後悔の念」について
本作はそのナチュラルで迫真にせまる描写が高く評価されているようだが、むしろ主人公の優実と直哉の交際時期の、時系列に則らない編集こそ本作を見応えのあるものにしているように思う。
例えば、優実が直哉に妊娠したことと、子供の父親が直哉ではないかもしれないと言ったことに対して、当初は理解を示すものの、その後やはり生む前に子供のDNA鑑定を勧めるという直哉の発言のブレは、その後に描かれるように直哉は元カノの伊藤に堕胎させている経験があるからだということが分かる。
あるいは唐突に優実は母親を病気で亡くし、駅前で待っていた父親と車で実家に戻ると母親の亡骸を目にすることになる。葬儀を済ませると父親に急かされて優実は大学に戻るまでのシーンが描かれた後、しばらくして再び実家のシーンが映り、母親が入院するために荷物をまとめているところを優実は目撃するのだが、母親の様子を見てそれほど重症だと思っていなかった優実は二度と会えなくなるとは夢にも思わずにそのまま出かけてしまうのである。
つまりこの特異な演出は私たち観客に登場人物と同じように後悔の念を抱かせるように仕組まれているのである。
この「逆再生」には『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督 2022年)には見られない細かな意図が感じられる。
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