原題:『はい、泳げません』
監督:渡辺謙作
脚本:渡辺謙作
撮影:笠松則通
出演:長谷川博己/綾瀬はるか/伊佐山ひろ子/広岡由里子/占部房子/上原奈美/阿部純子/麻生久美子
2022年/日本
ヒロインの水着姿を楽しむだけの作品について
原作者は高橋秀美というノンフィクション作家なのだが、敢えて小鳥遊雄司という哲学者にした理由を勘案するならば、「頭でっかち」の人間が余計なことを考えずに感じることで泳ぐことを学ぶというストーリーにしたかったのだと思う(因みに哲学監修は國分功一郎)のだが、例えば、フランスの哲学者のガストン・バシュラールの『L'Eau et les rêves(水と夢)』について語る人間が羊水に関して無知ということはあり得ず、水泳のコーチの薄原静香の発言にはことごとく反論できるはずなのである。小鳥遊が抱える問題は知識ではなく経験だからである。
ベースが間違っているために、ストーリー全体に説得力がないのだが、例えば、水族館にいる小鳥遊と事務所にいる静香が電話で会話している際の、静香が画面の「枠」を超えてくる演出は面白いと思った。だから本作で最も残念なシーンは作品の冒頭、2010年にカフェで小鳥遊と美弥子が談笑している際に、突然、美弥子の口に彼女の嫌いな納豆を無理やり入れてくる男女のカップルが、美弥子の口の中に正確に納豆を入れ損なっている点なのではないかと思うのである。
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