大型ショッピングモールの進出で苦戦を続ける商店街の主が読むべき本である。内容は極めて刺激的だが、私としては昭和37(1962)年生まれの著者の意見に共感する部分が非常に多い。見出しをざっと以下に列記してみよう。
商店街内の格差‐レトロ商店街で利益を得るのは、一部の店だけ P.22~24
地元の客のニーズに応えているのは、大型店 P.27~29
「大型店に客を奪われた」論のウソ P.29~31
人より自動車を優先する商店街は必ず衰退する P.36~39
自治体は補助金を出すなら、運営に責任を持て! P.47~49
戦略とは「勝てない土俵では戦わない=勝てる土俵を探すか創る」P.121~122
公務員と議員は、身銭を切って「顧客目線、市民感覚」を感じとれ! P.147~150
商店街を金融商品と考える困った人たち P.176~178
不動産オーナーが私益を追求すると「まちは滅びる」P.181~184
私が最も興味深く読んだところは3つだ。厳しい指摘がバンバン続き店主でもないのに思わず苦笑した。
商店街問題は、個店が解決すべき問題から着手 P.71~72
水木しげるロードはまず、個店が工夫や努力を重ねているから、個店の努力に報いる意図も含めて、商店街全体で格差問題を解決する取組も行っています。一方、ダメな商店街は、個店に意欲・工夫がないまま、いきなり「商店街の個店が平等に結果・利益を得られるような取組」だけを実施したがります。
このように、「結果の平等ありきの発想」だから、効果がでないのです。なぜなら結果の平等ありきの発想からは、成功事例を表面的に模倣する取組しか導くことができないからです。
…私は全国の商店街を見ていますが、水木しげるロードほど「個店が知恵を絞り、その知恵を自らリスクをとって行動に繋げる」商店街はありません。…
支援する側と支援される側だけ意見を聞くから、成果が出ない P.156~158
①支援する側と支援される側だけ意見を聞いて、市民(顧客)の意見を聞いていない。
②市民の意見は、役所が実施したい施策を誘導するアンケートでは把握できない。
③視察は、目的と視点を明確にしてから、自腹を切って行かないと結果は出ない。
…商店街が衰退し続ける最大の要因は、顧客目線の欠如という認識をもつ…
まちを守るために、商店街の「再生策は利用者が創る」P.186~187
自治体が補助金を投入する商店街に関しては、不動産オーナーが店舗を「誰に貸すか、貸さないでシャッターを閉じてしまうか」を、自治体が責任をもって管理すべきです。自治体がそれを怠ると、商店街を救済する名目で補助金を使ったのに、まちを破壊する悲しい結果をもたらしてしまいます。
商店街の衰退理由が「商店街を金融商品と考える不動産オーナーの私益追求行為」にあるのに、自治体が更に別の補助金を出し続ける実態は本末転倒と言えます。
地元の駅前の再開発が失敗した(広島市南区・愛友市場の取り壊しの方が先になったという現実)要因がすべて当てはまるのである。また何の知恵も絞らず補助金ばかりをあてにする田舎町の悲しい未来もここに描かれている。結局のところ、欲深過ぎる地主や店主(市全体の利益を無視して己さえ儲ければいいという浅はかな考えを持つ)は顧客(や観光客)にそっぽを向かれ自滅していくほかない。失敗の原因は自分にあることを深く反省して悔い改めていけるかどうかが運命の分かれ道なのだ。