青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

春は初鹿野

2018年04月10日 22時55分00秒 | 中央東線

(見上げれば桜@甲斐大和駅)

勝沼に隠れてあまり話題にはならないものの、勝沼の一つ手前の甲斐大和の駅もなかなかに桜の見事な駅です。大きな掘割の中にある駅のホームを囲むように咲く桜。いつ頃に植えられたものなのかは定かではありませんが、枝ぶりも花付きも見事な勢いのある桜です。線路沿いに植えられた桜と言えば、中央本線では名物だった東中野の桜が樹木の老齢化や病気などによる倒木などの危険性から伐採に至ってしまったらしい。結構地元住民とも「切る・切らない」で揉めたそうなんだけど、鉄道の安全な運行が第一なのは理解するにしても、景観も大事にしてあげて欲しいものですよねえ。


小仏峠から、桂川の刻む谷筋の隘路を進んで来た中央本線。大月からは支流の笹子川の谷を詰め、郡内と甲州を隔てる笹子峠へ。長い長い笹子トンネルを出て、ようやく日の当たる甲府盆地へ抜けてきたところにあるのが甲斐大和の駅。甲斐大和なんて言うとちょっと旅情の薄れる感じがあって、やはりここは旧駅名で「初鹿野」と呼んであげたいところ。


甲斐大和は中線を挟んだ2面3線のいわゆる国鉄型中間駅で、普通列車が特急退避のために10分くらいの停車時間を取ったりするダイヤも多い。いつもならかったるいだけの通過待ちの時間も、この時期だけは話が別。普通列車の乗客も、カメラ片手にぞろぞろと。新型のスーパーあずさと絡めて桜をパチリ。通過待ちの10分が短すぎて後ろ髪を引かれる思いの、つかの間の花見の時間であります。
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春日居桃源郷

2018年04月08日 22時01分16秒 | 中央東線

(春日居桃源郷@山梨市)

笛吹川の扇状地に広がる果樹園。ブドウをはじめモモ、ナシ、リンゴとこの時期からあまたの花が咲き始める山梨はまさにフルーツ王国の名に相応しいものがあります。鮮やかなピンクの花を付ける春日居町駅近くの桃畑の眺めも、甚六桜に負けず劣らずの見頃。基本的には桜が終わる頃に桃の花と言う感じなんですけど、一気に咲き始めてしまう時もあるんですね。


正徳寺地区の桃畑。この正徳寺地区には山梨屈指のぬる湯の名湯「正徳寺温泉初花」があるのですけど、春日居町駅からぶらぶらと桃畑を歩いてひとっ風呂浴びに行くというのも実によろしい休日の過ごし方であります。春日居町駅から初花まではのんびり歩いても20分くらいですし、それこそ東京から春日居町とか18きっぷで1往復するのにちょうどいいくらいの距離感なので、次の夏シーズンに行かれてみてはいかがでしょうか。夏になると余計にあそこのぬる湯が恋しくなるのよなあ。竜王始発の82レが、春日居桃源郷を行く。


正徳寺の桃畑を見下せるオーバーパスに来てみました。おおー。これぞ春の甲府盆地の風景ですなあ。普通の町工場や民家の間に広がる果樹園に一斉に咲き乱れる桃の花。よくちらし寿司の上とかに乗っかってる桜でんぶってありますよね。あれを神様がちらし寿司の上に乗せようとしてうっかり甲府盆地の上にぜーんぶぶちまけてしまったような感じだなあ(笑)。


「桜梅桃李」なんて言葉がありますけど、確かに桜も桃もそれぞれの良さがあって風景としては甲乙つけがたいものがありますな。正直走って来る電車が211系であろうとなんだろうと、いいものはいいよね。ステンレスの車体をほのかにピンクに染めて走って来たこの列車は高尾14:02発の長野行き441M。長野到着は18:53とおよそ5時間弱に亘って走り続ける長距離普通列車で、まさに18きっぷに打って付けの列車なのであります。
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甲州花鳥風月

2018年04月07日 17時55分49秒 | 中央東線

(青い空まで埋める様に@甚六桜)

青い空に溢れる桜。鉄道と絡んでいなくても、素直にカメラを向けたくなる光景。朝の少しひやりとした甲州勝沼の空気が、桜の色を少し蒼ざめさせているようにも見え。ホント桜と言うのは細かく見ていると朝と昼と夜で花の開き方が変わっていたり、色味が変わっていたりするもので、一日撮影していると印象が大きく変わります。朝に開いてなかった蕾が夕方に開いててハッとさせられたりする。


花鳥風月を愛でるという趣味は、ある人に言わせれば人間の老化の一種なんだそうで。歳を取ってくるとギラギラした俗世の欲から離れ、流れていく自然の移ろいに身を任せる事が楽であり、好きになってくるんだとか…いやいや、いい写真撮ろうとギラギラしてるうちは、決して老化なんかしてないと思いたい(笑)。「あずさバイオレット」と名付けられたE353系のパープルのライン。紫と言う色は和の色なので、散り際の桜のピンク色と見事に調和していると思う。青空に一筋、緩やかな飛行機雲。甲州の麗春です。


すっかりこの区間のヌシになった211系。基本ロングなのが寂しい。ボックスシートの編成もあるっちゃあるみたいですが…。やはり窓の下に飲み物を並べて、左に甲斐駒、右に八ヶ岳を見ながら旅をしてゆくのが正しい中央東線の楽しみ方だと思われる。ちなみに松本方面に向かうのであれば、車窓は進行方向左側の眺めの方がいい。勝沼ぶどう郷から塩山にかけては、昼も良いけど夜景もなかなか見応えがあります。


HDS俯瞰で竜王からの石油返空80レ。ブルサン&エメラルドグリーンのタキという色鮮やかな編成なので大きい構図で。霞んではいても、やっぱり盆地を囲む山並みを入れたくなります。もうちょっと下手に回ると雪をかぶった南アルプスの山並みが入るのですが、そこまでの空気のヌケがありませんでしたね。桜の隙間から、盆地の桃畑の花色がチラリと見えるのもなかなか趣があります。


HDS俯瞰は桜の時期がいいのはもちろんなんですけど、秋になると下のブドウ畑が紅葉してまた一味違う絵になるそうです。隣にいたおっちゃんが三脚を畳みながら教えてくれました。秋には撮影したことないので、またその時は澄んだ空気で南アとブドウ畑の紅葉をキメに来ましょうかねえ。

撮影後に自販機で買う100円の缶コーヒーが、至福の味です。



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桜の花びらたち

2018年04月06日 21時56分43秒 | 中央東線

(桜の花びらたち@甚六桜)

甚六桜公園でベンチに座って桜を眺めていると、時折風に吹かれてフワーっと舞い上がって消えていく桜の花びらたち。どれだけ持ってもソメイヨシノは一週間程度ですが、その儚さと潔さが「旬」を大事にする日本人の心を捉えて離さないのかもしれません。ぶどうを収穫するももずきんのイラストもかわいらしい駅名票の脇を、足早な春たちが「また来年」と通り過ぎて行きます。




旧ホームを囲む桜たち。見事だね。よく咲いたね。そしていい天気だったね。


ホームを吹き抜ける風に乗って、桜舞い散る。インスタ女子ならずとも、思わずスマホを取り出す鮮やかな春の瞬きです。
花吹雪花吹雪、風の中を泳げ。
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桜が紡ぐ半世紀

2018年04月05日 22時06分47秒 | 中央東線

(サクラトキヲコエテ@甚六桜)

旧線のスイッチバックの引き上げ線跡に咲く、私が愛してやまない勝沼の甚六桜。少しだけオオシマザクラ系の桜が混じっていて、既に葉を出した枝もありましたけど、最後の見頃と言う感じで坂道にしなだれかかっていました。あたかもそれは桜のタイムトンネルのように見えて、ひょっとしてタイムトンネルの向こうに行けば、旧型客車を連ねたED16とかが走っていたりするのかな。そんな妄想がはかどりそうな、幻想的な世界でした。


甲府から塩山へ、大きく扇状地を回りながら高度を稼いできた列車は、勝沼の駅に停車した後この引き上げ線までバックし、改めて勢いをつけて笹子峠の下にある初鹿野へ向かって登って行ったのでしょう。残された鉄道境界杭の遺構だけが、峠道の苦労話を静かに語りかけてくれます。


いつものHDS俯瞰でいつものE257。春霞む南アルプスの山並み。甲府盆地の底では桃の花が咲き始めて、桜桃が咲き競って華やぐのが甲州の春でもあります。昭和43年にスイッチバックが廃止されてから、既に50年の月日が流れました。スイッチバックが廃止されてから、地元有志の取り組みで植えられた甚六桜。半世紀を経て自然に還りつつある築堤に、見惚れるような桜が咲きます。
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