青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

さいはてにおいでよ ~冬の北東北紀行 その2~

2009年02月13日 12時26分36秒 | 日常

(画像:五能線料金表)

大戸瀬(おおどせ)、風合瀬(かそせ)、驫木(とどろき)、艫作(へなし)。
日本海に沿って走る五能線の駅名には、厳しい気候風土に根ざした地名がある。
それぞれの起源が、強い風の行きかいだったり海鳴りのとどろきだったりするのだろうか。
東能代から川部の全長147.2km、今日はその半分を行きます。

東能代を出発した列車は、5分ほどで能代駅に到着。
予想通りほとんどの高校生がこの駅で降りた。
「バスケの町」を標榜するだけあって、ホームにバスケのゴールがw
能代高校と言えば山Qこと山田久志の出身校でもありますね。
昔はそのイメージの方が強かったかもしんない。

3両編成の列車は、能代駅を出ると米代川を渡る。
次の向能代で、最後尾車両は締切扱いとなってしまった。
一気に閑散とした車内、18きっぷのシーズンじゃないとこんなもんか。
北上するにつれ、車窓右側には白神山地が。

  

秋田県最後の町である八峰町の中心・八森駅。
ここから五能線は鰺ヶ沢までの約80kmを日本海に沿って走る。
カモメが休むその横を、そろそろと走る。
白神山地が日本海に落ち込んだ段丘の上に線路は敷かれており、
ディーゼルカーはエンジンを唸らせ、等高線に沿ってくねくねと右へ左へカーブする。

それにしても、全く雪がない。
こんな冬らしくない北東北は、正直拍子抜けかもしれん(笑)。
こちらの人は雪が少なくてありがたいのかもしれないが…
鉛のようにべたっと重い色の空だけは、冬の日本海らしい。

薄曇りの空から、太陽がのぞいたり隠れたり。
車窓に広がる海岸線と漁村、そして白神山地を遠望。
前ではヨメさんがうつらうつら。自分はカメラをパチリパチリ。

  

東能代から1時間30分、ウェスパ椿山駅に到着。
まだ朝の9時半なんですが、目的地に到着してしまいましたw
もちろんここで降りたのは自分たち二人だけだ。
なんか、取り残された感ありありw

ウェスパ椿山とは、青森県西津軽郡深浦町にある観光施設。
「ふかうら開発」と言う三セクが経営するヨーロッパ風滞在型リゾート…なのだが。

シーズンオフっすよねえ…
活気がないとか何とか言う以前に、人がおらんw
こりゃあ失敗か?と思っても、次の列車は昼まで来ない。
この駅で降りる人は、どっちかと言えば不老ふ死温泉に行く人が多いよね。
不老ふ死の送迎バスも、シーズン外れてるせいか来てないし…
やっちまった感は拭えないのだが、ここで夫として初の失策1を計上する訳にもいかない(笑)。

 

と言う訳で、施設の一番海岸寄りにある展望風呂に行く事に。
昨日は寝台列車の長旅で風呂にも入ってませんでしたんで…
つか、近付いても全く人の気配がなくてどうしようかと思ったのは内緒なw
ここも閉まってたら完全に詰みで失策1確定でした(笑)。

海に面した風呂場からは、日本海が一望出来て気持ちいい。
海岸の温泉だけに、海よりも塩辛い熱めの強塩泉は皮膚にピリピリ。
大事なところの粘膜もピリピリ。
バーデンバーデンの薬草風呂か!w
温泉で1時間、湯あがりは休憩室で1時間。時間はいくらでもあるのだから。

  

たっぷり体力を回復させた後は、施設のレストラン「カミリア」へ。
お昼を前に、ちょこちょこと観光客も集まって来た。
空いているのはいい事だが、あまり誰もいなさすぎるのも不安になるよなw
海を望む雰囲気のいいレストランで昼食。
「カミリア定食」は、深浦牛の陶板焼きにイカの一夜干し、刺身に小鉢が3皿の豪華版。
小鉢でついて来た「つるつるわかめ」がうまい!
わかめをしらたき状に成型加工した製品だが、口当たりのつるつる感が素晴らしい。
なんでも、ここを経営する「ふかうら開発」の主力商品だとか。
土産にいっぱい買っちまったよ!(笑)。

  

食後は園内の「ガラス工房」へ。
この辺り、正直言って今までの一人旅ではなかなか行かないところだと思いますw
時と場合によって、旅の趣向と言う物も変わると言う事でしょう。
青森らしくニンニクのオブジェとかあったりして、ちょっと欲しいかもw

ヨメさんは吹きガラスで一輪挿しの製作体験。
TXの旅番組とかでこう言うのをやってたりしますけど、実際にやるのは初体験。
工房の研修生の人が介助してくれるので、初心者でもやりやすいとは思います。
それでも高温の炉は1,200度あるらしくて、熱いのと目がチカチカするのとで結構大変。

ヨメさんの作品。三日後にウチに届きます(笑)。

 私のほうは「サンドブラスト」と言うガラス工芸の体験を。
シールに起こした絵柄を、研磨用の砂でガラスの表面に吹き付ける。
すりガラスで模様を作ると考えていただければ分かりやすいかと。
吹きガラス体験と比べると、地味な作業ですねえw

んで、これが私の作品。

鉄ヲタ丸出しww
お互い、初めてにしてはそれなりに上手く出来たかとw
ヘッドマークは、サンプルを見た瞬間に閃きました(笑)。
「あっ、今日は寝台特急でいらっしゃったんですねえ!」とか言われてしまった。
正解ですw

   

チェックインの午後3時までの時間で、この施設の名前の由来でもある椿山まで行ってみる。
南北に続く断崖の中、日本海に鼻のように突き出た標高56mの山が椿山。
日本海側の自生ツバキの北限であるらしい。
荒涼としたススキの草原に続く断崖、海鳴りとカモメの叫びにも似た声が何とも最果て感。
いや~、いいっすねえ。
最果て大好きっ子だから、こう言う雰囲気はたまらないw
そう言えば、ちょっと積丹半島の神威岬に似ているな。
右側の断崖の向こうが、艫作崎と不老ふ死温泉になります。

椿山は、ちょっと人の顔のように見えて不気味な感じだ。
頂上まで参道が続いているのだが、風と波にさらされて手すりはボロボロ。
新婚早々滑落しても嫌なんで、途中で引き返して来ましたw

 

今日のお泊まりはコテージ一棟貸し。
そもそもここには、普通の宿泊部屋はありません。
上下2部屋にそれぞれ2つのベッド、バストイレ洗面所台所にリビング。クローゼットが付いている。
バスはもちろん、源泉から温泉が引かれております。
すいません、ちょっと神奈川まで持って帰っていいですか(笑)。

夕方にかけて完全に曇ってしまい、夕日が拝めなかったのが残念。
日本海側でも、とくにこの辺りは夕日がきれいな場所なんだけどねえ。
それでも日没後の青い時間帯に、欧州調の建物群が浮かび上がる様は雰囲気がある。

夕食はコテージで、レストランから運んで来てくれる洋食コース。
これはメインの深浦牛ビーフシチュー。
さすがハウスのビーフシチューの味とは違う(当たり前)w
ポテトグラタンが美味しかった。

計7品のコース料理と、ワインのハーフボトル一本。
それにコテージ一棟貸しが付いて一人10,000円ぽっきり。
こんだけ立派な施設なのに、こんなにお得な内容なのに、今日の泊まりはどうやら我々だけ。
積極的にお勧めしたいんだけどねえ。

…やっぱ、ここはあまりにも遠すぎるって事なんでしょうか?(笑)。
JR東日本は、あけぼのとセットでパックでも売り出せばいいんじゃないの?
五能線活性化を含めて、一考願う。

続く。

コメント (2)
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スローな旅に 寝て行こう ~冬の北東北紀行 その1~

2009年02月13日 08時55分11秒 | 日常

(画像:尾久の車庫から推進(バック)運転でしずしずと入線するあけぼの)

無事、北東北紀行より帰宅致しました。
まずは、今回の旅のメインイベントと言ってもいいこの列車のご尊顔から。
寝台列車のコンパートメントって一回乗ってみたかったんだよねえ。
もろに自分の趣味を丸出しにした行程でしたが、
まずまず満足はいただけた模様(笑)。
天気も良かったしね。

所帯は持ちましたが、いつものようにレポ。
どうしてもどっか行くとこってりしたレポになってしまうのが難だな。
いつまで出来るか分からないけれど、なるべく頑張りますw

   

昔は東北・上越・常磐方面の特急列車がひっきりなしに出発して、
帰省時期には大混雑を極めた上野駅の地上ホーム。
未だに元気なのは常磐線方面くらいですか。
東北方面では北斗星と残り2本だけになった定期の寝台特急、それがこの「あけぼの」です。
ブルーの客車を従えた姿は、さすがに存在感がありますなあ。

今宵のお宿はこの車両。7号車の個室・シングルデラックス。
名前はシングルだけど、上段の補助ベッドを引っ張り出せばこんな感じで2名利用も可能(散らかってるのは許せw)。
その他洗面台、室内BGM用オーディオ、モニターがあります。
ちなみにこのモニター、このワンセグ全盛時代にも関わらず一般放送は映んないんだよね。
しかも流れる映画は寅さんのみと言う、驚きの20年前の観光バス仕様(笑)。
ただ、「最近の寝台列車って車両の老朽化が著しくて…」みたいな話もある中、
あけぼのの編成は客車が案外きれいな方なんではないでしょうか。
整備担当の青森車両センター(盛アオ)GJ。
洗面用ポーチもヘッドマーク付きで、なんだかかわいらしくいい感じだ。
会社帰りのグッピー氏のお見送りを受けつつ、定刻に上野を発車。
グッピー氏は「うらやましい」とか言ってましたが、今のところ乗ろうと思えば毎日出てますからw
会社帰りにいかがです?ゴロンとシートならお安いですし。

車内放送はおやすみのあいさつと翌朝の到着時刻を告げる。

(♪チャイム)
本日もJR東日本をご利用くださいまして、誠にありがとうございます。
この列車は、寝台特急あけぼの号、青森行きです。
ただいま、定刻どおり上野駅を出発いたしました。
ご案内してまいりますのは、秋田車掌区の○○と●●です。
途中、秋田までご一緒させていただきます。
これから止まって参ります各駅の到着時刻をご案内いたしますが、
夜も遅くなっておりますので、この放送を持ちまして明朝、
秋田着の20分前まで車内でのご案内を控えさせていただきます。

次は大宮に止まります。大宮22時08分。
高崎23時13分、村上3時19分、あつみ温泉4時07分、鶴岡4時34分。
余目4時51分、酒田5時04分、遊佐5時17分、象潟5時40分、仁賀保5時51分。
羽後本荘6時06分、秋田6時44分。秋田には明朝6時44分の到着です。
八郎潟7時15分、森岳7時37分、東能代7時52分、二ツ井8時07分。
鷹ノ巣8時19分、大館8時35分、碇ヶ関8時58分、大鰐温泉9時06分。
弘前9時19分、終点の青森には9時56分の到着を予定しております。

夜汽車の行路を、渋好みする声のおっさん車掌が低いトーンで告げる。
流れて行く都会の景色を見ながら過ごすこの時間が、夜行列車の旅情を一番濃厚に感じる時間だと思う。
普通の人が読むとただの数字の羅列に見えるかもしれないけどねえ…

列車は8両編成です。先頭が8号車、後ろが1号車です。
 1号車はレディスゴロンとシート、女性専用車両となっております。
デッキ、トイレなど含め、男性の方はご遠慮願いますようお願いいたします。
なお、車内には食堂車、自動販売機はございません。
車内販売は、翌朝秋田より乗車いたします。ご了承ください。
それではどちらさまも、ごゆっくりお休みください。
次は大宮に止まります。
(♪チャイム)
 
端々を要約してますが、上の文章を読みながら旅情を感じられる人は手を上げて下さい。私の仲間です(笑)。
新幹線でも、乗り換え放送とか好きなんですよね。
特に岡山駅が好きです(笑)。

横浜駅にて買った崎陽軒のシウマイをつまみに一杯。
車内販売が秋田までないので、いっぱい買いこんで来ました(笑)。
自動販売機もないんだもんなあ。一個くらい付けといてもいいと思うけど…
並走する京浜東北線に負けじと、EF81は懸命の力走。
モタモタしてると通勤電車が追っかけて来るから、結構なスピードを出して走る。
夜汽車の旅と言うのは久し振りで、それだけにゆっくり楽しみたい。
そう言う事なんで、私が下段を取りましたw

23:13高崎駅到着。ここで7分ほど停車。
こっから翌早朝の村上駅まで、停車駅はありません。
高崎を出て、上段の方はそろそろお休みモード。
室内を減光すると、いよいよ車窓の風景は夜汽車の旅らしくなって来る。
沼田を過ぎたあたりから車窓に雪が目立ち始めた。
月明かりのきれいな夜だ。上越国境の山が月に輝き、夜なのに仄明るい。
水上で短く停車。EF81の汽笛がこだまして、ガクンと言う衝撃が走る。
新清水トンネルを抜け、土樽の駅を通過したまでは覚えてるんだけどねえ。
そこで寝てしまった模様。

寝てはしまったのだが、各駅に停車するたびに客車の衝撃で目が覚める。
いわゆる「止まり」と「引き出し」の衝撃ですね。
この衝撃をいかに少なくするかが、夜行列車を担当する運転士の腕の見せ所。
長岡までは上手だったんだが、長岡以降は結構荒っぽかったw
おそらく長岡で運転士が交替したんだろうな。
真夜中の長岡駅では、上りの寝台特急「北陸」と交換。
寝台特急同士の交換と言うのも、既に貴重な光景でしょう。

翌朝の客扱いは、午前3時20分の村上から。
新津から羽越本線に入っているが、村上を出ると車窓には日本海が広がる。
村上でも衝撃で起こされてしまったので、トイレ行きがてら廊下に出てみた。
昼間なら素晴らしい景観を見せる笹川流れが、月明かりの下で幻想的だ。
ムリヤリ写真を撮ってみたが、感度を上げまくっても条件が悪過ぎるなw
それでも雰囲気は伝わったかなと。

 あつみ温泉、鶴岡、余目、酒田、遊佐、象潟…
停車駅を見て分かるのだが、日本海沿岸の小さな町に実に細かく止まりながら列車は走る。
まだ真っ暗な余目駅で、おじさん&おばさん夫婦が降りて行くのが見えた。

この辺りは、上越新幹線も、山形新幹線も、秋田新幹線もカバーしきれない地域だ。
あけぼのは、今でもそんな町の東京への直通需要を満たす重要な列車なんだろうねえ。
2月の平日なのに、乗車率も自分が思ったより良かったもんなあ。

ウトウトしつつ羽後本荘を出たあたりから、車窓には夜明けの光景が広がる。
うーん、まさに「あけぼの」と言う感じです。
車掌のおはよう放送が流れると、秋田はもうすぐ。

  

秋田では車内販売の積み込みのため少々停車。
一服がてらホームに出ると、さすが北国の朝。ホームが凍っていた。
昇る朝日にほんのりと色づく青い車両。
さあ、青森までもう少しだ。お願いしますよEF81。

車内販売のモーニングコーヒーを飲みつつ、そろそろあけぼのの旅もフィナーレ。
車窓には、八郎潟の広々とした干拓地。その向こうに男鹿半島が見える。
それにしても東北の日本海側とは思えないほど雪が少ないねえ…
さすがに寒風山は真っ白だけど。

さて、そろそろ東能代です。
一晩を過ごした個室を二人で片付けて、ソファーモードに戻しましょう。
補助ベッドも上に押し上げて、リネンは上の棚に畳んで入れます。
一人なら畳まずに投げ込んでもいいと思うが、ま、そこはそれだw

 

 シングルデラックス車両のスロネ24 551。
JR東日本があけぼの用に改造した個室車両24系550番台のトップナンバー。
快適な、そして楽しい一夜をありがとう。
ところで、スローな旅にネて行ける、って事でスロネなんですかねw
んなわけあるかい。

  

無事に東能代到着。
寝台券は青森まで持ってるんで、なんか降りるのも名残惜しい感じがするな~。
ホームを出るあけぼのに向かってヨメさんが手を振ったら、車掌氏が会釈をしてくれた。
さよなら、あけぼの。
大晦日と、新幹線には負けんなよ。

ここからは、五能線に乗り換え。
東能代7時55分発の弘前行き。
普通列車に限っては、五能線全線直通はこの一本だけ。
弘前発で全線直通の普通列車はないんですよねえ。
あとはだいたい途中の深浦で分断されるし、鬼のように接続が悪い。
ちなみに終点まで乗ると4時間20分かかるw
車内は高校生で一杯。おそらくバスケの強豪、能代工高の学生だろう。
まあ、どうせ隣の能代で降りるだろうからな…
と言う事で、キハ40系のロング部分に座り、五能線の旅がスタート。

続く。

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