(暁のホームにて@上総鶴舞駅)
「関東の駅100選」にも選ばれている上総鶴舞の駅。鶴舞の集落の端にあって、小ぢんまりとした木造駅舎が建っています。右にカーブしたホームから、田園地帯に向かってレールが伸びてゆく様は、数々の映像作品やCMのモチーフにもなっていて、小湊鐡道を象徴する風景の一つ。大寒の頃を過ぎてもまだまだ寒い房総の早朝、美しい青みを帯びた空の下、暁を待つホーム。そしてびっしりと霜が降りて、白く染まったレールがありました。
凍て付くホームでカメラを握りながら、鶴舞の駅を取り巻く風景を一枚一枚切り取っていると、その一枚一枚ごとに白々と夜が明けて来て、田園の向こうに続くレールが微かに光を帯び始めます。遠くに小さく見える四種踏切が、名撮影地でもある池町踏切。鶴舞の駅には、駅前の大きな農業倉庫と、今は使われていない島式ホームと側線があって、往時はこの地域の農産物の集散地だったのでは?と思われる施設の跡が雑木に覆われたまま残っています。
養老渓谷方面への一番列車が到着する頃合いにはすっかり夜は明けて、雪が降ったかのような房総の霜降る枯野が広がっていました。牛久方面からやって来たキハ200の2連は、私の目の前でアリバイ程度のドア開閉を行った後、軽く紫煙を棚引かせながら、靄混じりの池町のカーブの向こうに消えて行きます。
冬場の小湊は、里山も田園も色を無くす時期。それだけに、今まで撮りに来たことのない時期でした。それでも、澄み切った夜明けの空の色と、田園一面に降りた霜の白さと・・・冬らしい色というものも、時間を選べばあるものだなという事に気付きます。