(長い翳伸びて@上州福島駅)
上州福島駅の線路脇に立つ、福島変電所。地方私鉄の線路端にある変電所、意外にも建設当時のモノがそのまま使われていたりして雰囲気がありますよね・・・。ここ、福島変電所も上信電鉄の社紋が白壁にくっきりと浮かんでいて。少し破れかけた変電所の窓のカーテンも、まあ地方私鉄の設備ってこんな感じだよなあという妙な納得感のある風情で。冬の西日に当てられる、白壁に伸びる架線柱の長い影が不思議な造形を結んでいます。
西日を浴びて、側線に佇む廃貨車。レールの上に置かれている以上、「廃」ではないのかもしれないが・・・西上州の物資輸送を担う貨物の取り扱いも活発であった上信電鉄、自社発注の貨車もテム1~10の10両を製造しており、下仁田の白石工業から水濡れ厳禁の袋詰め生石灰を運んでいたそうだ。同じ下仁田からは、白根火山を源とする酸性の強い吾妻川の水を中和するため、青倉工業の石灰石が渋川に向けて輸送されていましたが、こちらは国鉄のトキ25000を使っての輸送。1994年に貨物の取り扱いが終了するまで続けられていました。下仁田の駅には未だに当時の荷役の跡や倉庫がそのまま残されていて、地方私鉄が取り扱っていた貨物輸送の痕跡を見ることが出来ます。
6000形の大きな一枚ガラスから、夕陽の西上州を眺める。上信電鉄、交換駅が島式ホームで運転士がタブレット交換をする関係上、自社発注車は運転台を右側に設定するのがスタンダードであった。地方私鉄にはこういう右ハンドル車というのがたまにいる。運転台周りはシンプルですけど、1981年製造で、地方私鉄の車両がワンハンドルマスコンを採用したというのもかなり意欲的であり、画期的な話。
平日の夕方の車内は、富岡や吉井の高校生の下校時間とも重なって、学生たちが主力となる。2両編成のロングシートを学生服やジャージ姿が埋め尽くして、床にはスポーツバッグが投げ出される。冬の西日を受けたホームに、家路へ向かう姿。駅の改札で待つ妙齢の女性の駅員さんと交わす会話にも馴染み感があって・・・こういった地方私鉄らしい風景を一枚一枚カメラの中に収めて行くのだけど、自動車所有率が日本一高い群馬県のことだから、きっと高校を出るころには免許を取って、ワゴンRとかラパンに乗る生活を送ってしまうのでしょうね。