青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

稚子塚、太古の眠り

2019年09月23日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(どちらの方がお眠りか@立山町・稚児塚)

本線より立山線の分岐する寺田の駅。寺田から一つ目に、稚子塚(ちごづか)という名前の駅があります。駅としちゃ1面1線の簡素なホームがある無人駅で取り立てて言う事もないのですけども、じゃあ「稚子塚」って何なのよ?と思って地図を見てみると、駅の北側にそこだけこんもりと木の生い茂る一角があって、そこだけがポコリと地面が盛り上がっている。「稚児塚」とは、高さ7mあまりの円墳で、立てられていた看板には「5世紀ごろにこの辺りを支配してた有力者の墓ではないか」という説明書きがあったが、かすれてしまって読むのに難儀すること必至であった。そう訪れる人の多い場所ではないらしい(笑)。あと、駅名は「稚子塚」なのに、古墳は「稚児塚」なのね。

一面の田園風景の中に、そこだけポコっと島のように浮かぶ姿が何となく面白く、これをモチーフにアングルを組んでみる。午後の日射しの中、すっきりと晴れ上がった青空の下。豊かな実りを湛えた稚子塚の秋の風景の中を、立山に向けてダブルデッカーが行く。午後のTY運用への送り込みであろう。5世紀から、1500年の眠りに就いている名も知らぬ豪族様、最近の1世紀は近くを電車がゴトゴト走るので、ちょっと眠りに差し障りますでしょうか・・・(笑)。

刈られた田んぼと刈り取り前の田んぼが、間の畦道の草叢の緑を挟んで何となくパッチワークっぽくシンメトリーな感じだったので、稚児塚を取り込みつつ構図を調整・・・。後ろで稲刈り作業も真っ最中だった農家の老夫婦に「何か珍しいものでもあるですかの??」という撮り鉄あるあるな話しかけられ方をされてしまったのだが、皆さんにとってはなんてことはない普段の風景が自分にとっての最高の被写体ですよ!みたいなカッコイイ事が言えれば良かったんだけど、「あ、いつも走ってるアレ、ダイコン電車って言うんですか。アレがすごく好きなんです」みたいな指示代名詞多めのマヌケな受け答えをしてしまった。普段ダイコン電車なんて言わないから言葉が上滑りしてしまったよ(笑)。

14760形のサイドは、昭和のクルマらしくかっちりとした田窓で、またそれも好ましい。立山連峰の前山をバックに、モーターの音も高らかに走り抜けて行くのでありました。

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劒麓の街へ

2019年09月22日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(トトロが見つめる・・・?@相ノ木~新相ノ木間)

ビャクシンの木なのかな?と思いますが、まるで「となりのトトロ」のトトロのような両耳のピンと立った木が、住宅街に埋もれたような相ノ木駅を見つめています。そして、相ノ木の駅を颯爽と通過するのは、14760形のUN1。三角形の田んぼも黄金色に色付いた相ノ木の秋・・・え?駅なんかどこにあるんだって?ほら、駅、あるじゃないですか。列車の後ろに・・・(笑)。

寺田から上市まで、ほぼ真っ直ぐに敷かれた地鉄の線路。上市町は、富山まで地鉄電車で25分のベッドタウン。街道沿いには量販店も立ち並び、さほど鄙びた感じはありません。上市の町は、剱岳の麓の街として登山客の利用も多く、また古くから立山信仰の中心として祀られた大岩山日石寺という名刹があります。現在の滑川~上市間は、立山軽便鉄道が大正時代にこの日石寺への参拝客を目的として敷設した経路を使っていますが、滑川から南に向かった立山軽便の線路を活かすべく、地鉄は上市でスイッチバックする線形を取っています。

ちなみに、大岩山日石寺は素麺が名物なんだって。この日はまだ暑かったからね、茹で上げて、立山の麓の冷たい水でキュッと締めた素麺とか美味しそうですよねえ。

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鋳物師屋の秋

2019年09月21日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(富山平野稲刈候@沢中山~釜ヶ淵間)

立山方面に足を伸ばすも、ヤマのほうはイマイチ晴れないので、結局沢中山の陸橋まで戻って来てしまいました。富山平野は9月の半ばを迎えて稲刈り作業の真っ最中。陸橋の下の空き地でクルマを止めて、山から吹いてくる風を浴びながらセブンイレブンのアイスコーヒーを飲む。目の前で黙々と稲刈りの作業が続いているのだが、コンバインでの稲刈りは、一反程度の田んぼならあっという間に終わらせてしまうようだ。ぼちぼち電車の時間だなってんでカメラを構えると、TY仕業の終わったダブルデッカーが普通列車で山から下りて来ました。ちょうどフレームに入って来た稲刈り作業のコンバインが助演男優賞。

沢中山は鋳物師屋の陸橋に上がって寺田方を眺めれば、空は雲が切れ始め、ところどころから太陽の光が差して来た。富山湾の海の青さを見晴るかす散居村の田園地帯を、前パン振りかざして14760形が登って来た。そう言えば、去年も9月のこの時期に富山を訪れて、この陸橋から色付く稲穂と越中の秋の風景を切り取ったのだった。折角来るのであれば、もうちょっと季節を変えればまた違ったものが見えたかもしれないけど、まあそこはそれ、前回撮り逃したものにスポットを当ててみればよいだけの事でしょう。

去年はここ鋳物師屋の陸橋の手前側は枝豆の畑だったと思ったが、今年はまた田んぼに戻っている。同じ時期に来たからこそ、こういう小さな変化にも気付くことが出来るのかな。気に入った鉄道は、春夏秋冬それぞれに通って初めて免許皆伝と聞きます。富山には二回連続で秋に来てしまったけど、次はどの季節に来ようかねえ。夏と秋は来たことがあるので、大地が雪で白く染まる冬に行きたいな。春の桜の時期でもいいかもしれない。水の入った田んぼと桜をあしらって、14760のうなづき号とか撮れたら最高だろう。

先ほど千垣で見送った西武のレッドアローが、こちらも普通電車で戻って来た。春~秋ダイヤでは、やはり午前中にアルペンルートに向かう観光客に対応している立山線方面のダイヤが強い。これが、アルペンルートが閉じてしまう冬期間は、TY(特急立山)1・3・5号とAP(特急アルペン)が運休し、普通電車も間引かれてスカスカのダイヤになってしまうのよね。岩峅寺以遠で午前中最大2時間開くとか鬼。そんなスカスカダイヤの冬に、雪でこってり覆われた千垣の橋梁とか撮影してみたいよなあ。

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紅の矢の谷渡り

2019年09月20日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(緑に紅い矢を放ち@千垣橋梁)

寺田から立山線方面に上がって、千垣の鉄橋まで来ました。天候の回復を待っているんですが、今のところ空はどん曇り。SCWで情報を拾ってみると、かなり富山平野から雲は抜けて来ているので、もう少しのご辛抱と言う感じですが・・・。千垣の鉄橋もロケーションは相変わらず素晴らしいのですが、空が曇っているのにオーソドックスに撮影してもなんだかなーという感じでしたのでね。鉄橋の千垣側にグッと寄せて待っていると、宇奈月温泉発のAP2ことアルペン2号が橋のたもとからひょっこりと顔を出しました。この日はアルプスエキスプレスでの運転でした。

新緑でもなく、紅葉でもなく、雪景色でもない千垣の橋梁。風景的には中途半端だな。夏の暑さのせいなのか、常願寺川の断崖に沿った木々はやや赤茶けた葉の色をしていて、秋深まる頃にどのような色付きを見せるのか若干の心配はある。最近秋の紅葉が、夏場の日焼けや台風による葉の傷みによってきれいに色付かないような気がしている。夏場にダメージを受けた広葉樹は、秋の入口から早くも色が茶色っぽくなって、紅葉の本番を前にして落葉が始まってしまう。

ほぼ同じ構図の11月中旬の千垣橋梁はこんな感じ。それなりの色付きであった。カットは奇しくも同じアルプスエキスプレス、震災の次の年(2012年)だからもう7年前の話だ。そんな前になるのか。長野に住む某氏と2日間地鉄を追いかけ回したのだが、この頃から地鉄の事をかなり意識し始めた記憶があるなあ。この時に教えて貰った魚津の魚介系ラーメン屋は行くたびに贔屓にしていて、もはや富山へ行った時の楽しみの一つにもなっています。今回ちょっと時間なくて(ちょうど魚津付近を通りかかった時間が昼休憩だったんよね)行けなかったんだけど、あのスープは結構中毒的。富山の流行りは圧倒的にブラックラーメンだけど、そういうのとは一線を画したあの徹底的な魚介ダシ&豚骨スープはたまに無性に飲みたくなるんよね。って地鉄の話なんも関係ないやないか!

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立山線逍遥

2019年09月19日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(「げだん」じゃないよ「しただん」よ@立山線・下段駅)

寺田でクルマを回収した後は、アテもなく沿線をフラリとロケハン。地鉄の良さを味わうのには、「古い木造駅舎の駅巡り」という目線も欠かせないと思うのですけど、先ほど岩峅寺から寺田まで乗った電車の車窓から見て気になった下段駅へ。「しただん」という駅の名前に結構インパクトがあるよなあ。この辺りは中新川(なかにいかわ)郡立山町下段という地名で、上段と中段はどこに行ったのか・・・と思って調べたら、行政地名としては消えているようなのだけど、同じ立山町内の県道157号線沿いにある消防署や警察署に「上段」の名が残されていた。ちなみに「しただん」に対して「うわだん」と読むらしい。あくまで「じょうだん」じゃないよって事ですかね(ドヤ顔)。

焦げ茶色の板張り木造という富山地鉄の駅舎らしい待合室。外は蒸し暑いのだが、待合室の中に入ると少しだけひんやりとした空気が流れていて暑さを一時忘れることが出来ます。待合室の壁には、近所の保育所に通う子供たちから贈られた絵が似顔絵と共に貼られている。そして、その下には「最近当駅においていたずらが激しく皆さんの不評をかっております」という不穏な注意書きが・・・(笑)。

園児がアピールした「おはなの」「しただん」「えき」の名に恥じず、小さいながらも駅前の広場にはプランターに植えた秋の草花が咲いている。立山町のお隣である上市町のゆるキャラ「つるぎくん」のヘッドマークを付けた14760形が、岩峅寺に向けて坂を登って行きます。こんな何気ない風景に、物凄く惹かれてしまうね。

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