(タチアオイ、初夏に咲く@内山駅)
集落を見下ろす少し小高い位置にある内山の駅。終点の宇奈月温泉に向かっての最後の交換駅になります。何だかんだここも自分の中では肌馴染みのするロケーションの駅で、地鉄の絵作りには欠かせない存在感があるんですよね。初めて来たのが秋だったんだけど、里の紅葉と背後に迫る黒部の山が雪化粧をしていてねえ。木造の古式蒼然とした駅舎との見事なコラボレーションを見て、この駅の魅力に射抜かれちゃったんだな・・・
駅舎の中は案外広くて、そして誰もいない朝の待合室は、打ちっぱなしのコンクリートがひんやりとして涼しく。開け放たれたホーム側のサッシ扉から入って来る山の空気が爽やかだ。梅雨空を透過して僅かに差し込む朝の光。待合室の長椅子に置かれた座布団が、仮眠しながら夜通し走って来た体を優しく迎えてくれます。
宇奈月温泉に向かって、次第に山深くなっていく黒部線沿線。黒部川の谷を遡って行く地鉄電車、人の住む集落はこの内山から次の音沢あたりまで。宇奈月は黒部川の電源開発に伴って作られた前線基地のような場所なので、温泉街こそあれど住民の数は少なかったりする。そして内山の駅のホームと言えば「白線の内側に入っている」。入って・・・いる?・・・入っていて=わかる。入っていろ=まあわかる。入っている=わからん。ってなるよな(笑)。
そんな内山の駅の雰囲気と佇まいを愛でていると、宇奈月温泉行の17480形が上がって来た。スカートを履いた地鉄第二次導入の田都車(K編成)ですが、なんだか前面幕が壊れているらしく運転台にクリアファイルに入れた行き先表示を出していた。そういう時のために電鉄富山の駅に行先表示用の丸看が置いてあるんじゃねーのか・・・と思ってしまうのだが、元東急車にヘッドマークステーなど付いている訳もなく。数々の改造工事を担った稲荷町の匠たちであれば、ヘッドマークステーなど苦も無く取り付けてしまうと思われるが。
ここで待っていたのは、電鉄富山行きの急行列車。特急がアルペンの片道運用のみと大減便になった今春のダイヤ改正ですが、愛称なしの急行列車は上り朝2便下り夕2便→朝1便夕2便と微減に留まりました。今や貴重となった地鉄の優等運用。内山交換ではどっちが先入れになるか分からんかったのだけど、宇奈月行きに先に入られてしまったので並び写真しか撮れんかった。願わくばこの運用に純正雷鳥カラーの60形をぶち込んでいただきたかったのであるが、この日は60形でもカボチャであった。それでも凛々しい前パン側を構内踏切から安全に切り取れるのが内山のいいところ。
まあね、急行がカボチャの60になるのは、さっき愛本で登ってったのがこの車両だったんで知ってたんだけど・・・正直、コロナ禍ダイヤで運用数減ってる中でロングの東急4編成は常時フル稼働ですのでね。相対的に60形とのエンカウント率が減る中で、カボチャだろうとなんだろうと文句言えないかなって思いはあるのですよね。どうせなら、緑と黄色の間に赤いラインを引いた平成初期の地鉄カラーリングとかも見てみたいな(笑)。
実際の急行運転区間は、新魚津~寺田までと僅かな区間のみで、新魚津までと寺田から先は各駅停車。単線での列車交換や上市でのスイッチバックもあり、途中駅を通過する事による速達効果はほぼありません。それでも山峡の小駅から、優等列車は県都富山を目指します。