この土日(5/16~17)、上北山(かみきたやま)村を訪ねた。村の見どころは追って書くことにして、まずは宿泊場所の「ふれあいの郷 ホテルかみきた」(奈良県吉野郡上北山村河合552-2)を紹介したい。
※ふれあいの郷 ホテルかみきた公式ホームページ
http://www.htl-kamikita.jp/index.html

ホテル外観(吉公連のホームページより)
このホテルは1994年(平成6年)10月に村営ホテル「ふれあいの郷 かみきた」としてオープン、その後2005年(平成17年)3月からは民間のきたやまリゾート(株)が運営を受託している。再オープン時に館内が改装され、お洒落なプチ・リゾートホテルとして生まれ変わった(室数16、大広間・会議室完備)。客室の窓を開けると、高い山が目の前に迫っている。窓の下には北山川が流れる。底の砂利までくっきりと見える清流である。地名(河合)の通り、すぐ南で小橡(ことち)川と合流する。

このホテルについては「フロンティアエイジ」09年3月号(朝日新聞に折り込まれる情報紙)に詳しい。《行けども、行けども山。奈良・吉野から吉野川の源流域をひたすら上り、西大台ケ原の分水嶺・伯母峰峠(標高991メートル)の新トンネルからは逆に熊野灘へ続く北山川に沿って下る。整備された国道169号は走りやすく、長短19のトンネルをくぐって標高320メートルの谷あい、上北山温泉に1時間余で着いた》。私は奈良市内からマイカーで約2時間半だった。大阪市内からも同じくらいだそうだ(南阪奈道を利用)。

北山川の清流。夏でも冷たい
《役場などがある中心地だが、南朝・後亀山天皇の玄孫(げんそん=孫の孫)が隠れ住んだ里でもある。村おこし策として22年前、北山川の河原で掘り当てた温泉。4年前から民営になったが、日帰り温泉の薬師湯とホテル「かみきた」は大阪、京都、神戸、名古屋からリピーターたちが通うひそかな人気の湯どころとなっている》。
http://www.melma.com/backnumber_163970_4442046/

コウヤマキ(高野槙)を使った大浴場(上北山温泉。磨き石の浴槽と隔日交代)
《「初めての方が必ず口にされる通り山と川だけ。ですが自慢も二つ。きっと納得されるはず」と支配人の山根友喜さん(56)。一つは県内で「一、二を誇る」源泉の泉質の良さ。浴槽に足を入れた途端、薄い絹で覆われるような感触。腕も顔もたちまちツルンツルンになる。ナトリウム・炭酸水素塩泉の魅力という。毎分350リットルを自噴する豊富な湯量も自慢。湯上がりの女性たちは一様に艶やか美人に変身している》。

露天風呂(岩風呂と隔日交代)

ホテルの「二つめの自慢」が料理だ。あらかじめパンフレットを拝見すると、マグロやイカの刺身、エビの天ぷら、牛肉の陶板焼きといった料理が並んでいた。熊野までは約50kmなので、熊野灘の鮮魚や熊野牛といった良質の素材が手に入るのだそうだ。しかし、わざわざ奥吉野に来て刺身や熊野牛を食べたいとは思わない。

向かって左が佐伯料理長、右が山根支配人
あらかじめ山根支配人と連絡を取り「ぜひ、地元・上北山村の素材にこだわった料理を提供していただきたい」とお願いしてあった。何しろ料理長の佐伯惟教さんは、奈良県調理技能コンクール懐石部門でグランプリを取ったスゴ腕、いわば奈良の料理の鉄人だ。きっと期待にお応えいただけるだろうと、胸をワクワクさせながらレストラン「山ゆり」に向かった。

右上は季節八寸(北山川の稚鮎南蛮漬、白ずいき、ワラビの土佐煮など)。左は筍ご飯
下は刺身(熊野シビ=マグロ、ウニのアオリイカ巻きなど)。食前酒は「薬師の雫」(やたがらす)

北山ウナギと大和芋の茶巾。汁は絶品
「フロンティアエイジ」には《順に出される懐石料理の美しさに見惚れ、貝柱の椀物で汁の妙味にうなる。造りのマグロの鮮度にも驚くが、塩焼きで出た「北山アマゴ」は朱の斑点が浮かび、絶品の味》。

器にも気配りが行き届いている

猪肉の石焼き。グリーンアスパラなどを地元で捕れた猪肉で包み、バターで焼く
この日はアマゴの天ぷらが登場した。からっと揚がっていて、頭からバリバリといける。身にはたっぷりの木の芽。何でも、会長さんの自宅の庭に生えていたものを、今朝から摘んできていただいたのだそうだ。

射込み筍の含め煮
このタケノコも、会長さんが朝から竹やぶで掘り出していただいたもの。さすがに柔らかく、エグ味は全くない。

上北山の山菜天ぷら(ヨモギ、タラノメ、ウドノメなど)
これらを特別ブレンドした塩と抹茶でいただく

地元製コンニャクと山ウドを特別ブレンドの酢味噌でいただく
《「アマゴは北山川の天然ものを孵化から育て、臭みを抜くため、えさを与えずに地下水で蓄養したダイエット魚。熊野灘の深層水から取った塩を振って焼きました」。そう話す料理長・佐伯惟教さん(50)は県の調理技能日本料理部門でグランプリ受賞(03年)の腕。熊野の漁港まで車で1時間。その幸を奈良、大阪へ運ぶ国道169号は鯖街道と呼ばれてきた。そして豊富な山菜、山のけものたち》。

鹿肉の刺身。冷凍保存したものだが、臭味もなく美味しい

圧巻は、ご飯ものとして出てきた「上北山のとち餅茶粥(ちゃがゆ)」だ。実はホテル入りする前に、地元の方から「我々がいつも食べている栃餅の茶粥を観光客の方に食べていただければ、きっとご満足いただけると思うのですが」という話をお聞きしたばかりだったのだ。

茶粥の上にソフトな栃餅が浮かんでいる
確かにこれはイケる。Wikipediaによると《栃餅(とちもち)は、灰汁抜きした栃の実(トチノキの実)をもち米とともに蒸してからつき、餅にしたものである。もち米だけの餅よりも黄土色や茶色がかっており、独特の苦味がある。かつては米がほとんど取れない山村では重要な食糧で、21世紀初頭現在では土産物の1つとしても売られている。砂糖を付ける、餡に絡めるあるいは包む、塩茶漬けにするなどして食べる》。
私は、茶粥はよく食べるし、栃餅は吉野へ来るたびにお土産に買って帰る。それをドッキングさせると、こんな美味しい食べ物になるとは…。栃餅独特の苦みと、茶粥の香ばしさのコンビが絶妙である。

ここに山菜の佃煮や漬物を添えていただくと、もう気分は上北山村民だ。「とち餅茶粥」は従業員の上平さんが作られたもので、村内のご自宅と全く同じ方法で炊かれたそうだ。これまで、まかない飯として調理場で出されたことはあるが、料理として提供されたのはこれが初めてだそうだ。こんな美味しい郷土料理は、ぜひ定番にしていだきたいものである。
それにしても、このホテルの完成度の高さには舌を巻く。温泉、料理、接遇、設備のすべてが高いところでバランスしているのだ。リピーターが多いのも、当然だろう。上北山といえば、大台ヶ原への登山客が大半で、単に寝て食べて温泉に入ればそれで良し、という人が多いと思っていたが、最近は登山家や山男というより、一般のハイカーが多いので、食事や設備にもハイレベルなものを求められるのだ。

朝食。熊野産アジの干物、地元産の生湯葉、ワサビの茎の佃煮など
このホテルはそんなニーズにも十分応えられる素晴らしいホテルである。ぜひ、お訪ねいただきたいと思う。今回のメニューは「tetsudaスペシャル」との位置づけだった。
今後も地場産品をどんどんお使いになり、上北山村の良さを全国に発信していただきたいものである。
※ホテルかみきたスタッフブログ(ホテルかみきた新着情報)。もう少し、更新頻度を上げてほしいのだが…
http://bizleaders.jp/blog/htl-kamikita/
会長・社長、山根支配人、佐伯料理長、、福西さん、上平さんはじめ関係者の皆様、ムリを言って申し訳ありませんでした。おかげさまで温泉もお料理も、堪能させていただきました。今度はもっと大人数でお邪魔いたします。
※トップ写真は霧の西大台(5/17撮影)。大台ヶ原のなかでも「西大台」は入山者の利用調整(入山規制)が行われているが、ドライブウェイの道路沿いからは、こんな景色が眺められる。
※ふれあいの郷 ホテルかみきた公式ホームページ
http://www.htl-kamikita.jp/index.html

ホテル外観(吉公連のホームページより)
このホテルは1994年(平成6年)10月に村営ホテル「ふれあいの郷 かみきた」としてオープン、その後2005年(平成17年)3月からは民間のきたやまリゾート(株)が運営を受託している。再オープン時に館内が改装され、お洒落なプチ・リゾートホテルとして生まれ変わった(室数16、大広間・会議室完備)。客室の窓を開けると、高い山が目の前に迫っている。窓の下には北山川が流れる。底の砂利までくっきりと見える清流である。地名(河合)の通り、すぐ南で小橡(ことち)川と合流する。

このホテルについては「フロンティアエイジ」09年3月号(朝日新聞に折り込まれる情報紙)に詳しい。《行けども、行けども山。奈良・吉野から吉野川の源流域をひたすら上り、西大台ケ原の分水嶺・伯母峰峠(標高991メートル)の新トンネルからは逆に熊野灘へ続く北山川に沿って下る。整備された国道169号は走りやすく、長短19のトンネルをくぐって標高320メートルの谷あい、上北山温泉に1時間余で着いた》。私は奈良市内からマイカーで約2時間半だった。大阪市内からも同じくらいだそうだ(南阪奈道を利用)。

北山川の清流。夏でも冷たい
《役場などがある中心地だが、南朝・後亀山天皇の玄孫(げんそん=孫の孫)が隠れ住んだ里でもある。村おこし策として22年前、北山川の河原で掘り当てた温泉。4年前から民営になったが、日帰り温泉の薬師湯とホテル「かみきた」は大阪、京都、神戸、名古屋からリピーターたちが通うひそかな人気の湯どころとなっている》。
http://www.melma.com/backnumber_163970_4442046/

コウヤマキ(高野槙)を使った大浴場(上北山温泉。磨き石の浴槽と隔日交代)
《「初めての方が必ず口にされる通り山と川だけ。ですが自慢も二つ。きっと納得されるはず」と支配人の山根友喜さん(56)。一つは県内で「一、二を誇る」源泉の泉質の良さ。浴槽に足を入れた途端、薄い絹で覆われるような感触。腕も顔もたちまちツルンツルンになる。ナトリウム・炭酸水素塩泉の魅力という。毎分350リットルを自噴する豊富な湯量も自慢。湯上がりの女性たちは一様に艶やか美人に変身している》。

露天風呂(岩風呂と隔日交代)

ホテルの「二つめの自慢」が料理だ。あらかじめパンフレットを拝見すると、マグロやイカの刺身、エビの天ぷら、牛肉の陶板焼きといった料理が並んでいた。熊野までは約50kmなので、熊野灘の鮮魚や熊野牛といった良質の素材が手に入るのだそうだ。しかし、わざわざ奥吉野に来て刺身や熊野牛を食べたいとは思わない。

向かって左が佐伯料理長、右が山根支配人
あらかじめ山根支配人と連絡を取り「ぜひ、地元・上北山村の素材にこだわった料理を提供していただきたい」とお願いしてあった。何しろ料理長の佐伯惟教さんは、奈良県調理技能コンクール懐石部門でグランプリを取ったスゴ腕、いわば奈良の料理の鉄人だ。きっと期待にお応えいただけるだろうと、胸をワクワクさせながらレストラン「山ゆり」に向かった。

右上は季節八寸(北山川の稚鮎南蛮漬、白ずいき、ワラビの土佐煮など)。左は筍ご飯
下は刺身(熊野シビ=マグロ、ウニのアオリイカ巻きなど)。食前酒は「薬師の雫」(やたがらす)

北山ウナギと大和芋の茶巾。汁は絶品
「フロンティアエイジ」には《順に出される懐石料理の美しさに見惚れ、貝柱の椀物で汁の妙味にうなる。造りのマグロの鮮度にも驚くが、塩焼きで出た「北山アマゴ」は朱の斑点が浮かび、絶品の味》。

器にも気配りが行き届いている

猪肉の石焼き。グリーンアスパラなどを地元で捕れた猪肉で包み、バターで焼く
この日はアマゴの天ぷらが登場した。からっと揚がっていて、頭からバリバリといける。身にはたっぷりの木の芽。何でも、会長さんの自宅の庭に生えていたものを、今朝から摘んできていただいたのだそうだ。

射込み筍の含め煮
このタケノコも、会長さんが朝から竹やぶで掘り出していただいたもの。さすがに柔らかく、エグ味は全くない。

上北山の山菜天ぷら(ヨモギ、タラノメ、ウドノメなど)
これらを特別ブレンドした塩と抹茶でいただく

地元製コンニャクと山ウドを特別ブレンドの酢味噌でいただく
《「アマゴは北山川の天然ものを孵化から育て、臭みを抜くため、えさを与えずに地下水で蓄養したダイエット魚。熊野灘の深層水から取った塩を振って焼きました」。そう話す料理長・佐伯惟教さん(50)は県の調理技能日本料理部門でグランプリ受賞(03年)の腕。熊野の漁港まで車で1時間。その幸を奈良、大阪へ運ぶ国道169号は鯖街道と呼ばれてきた。そして豊富な山菜、山のけものたち》。

鹿肉の刺身。冷凍保存したものだが、臭味もなく美味しい

圧巻は、ご飯ものとして出てきた「上北山のとち餅茶粥(ちゃがゆ)」だ。実はホテル入りする前に、地元の方から「我々がいつも食べている栃餅の茶粥を観光客の方に食べていただければ、きっとご満足いただけると思うのですが」という話をお聞きしたばかりだったのだ。

茶粥の上にソフトな栃餅が浮かんでいる
確かにこれはイケる。Wikipediaによると《栃餅(とちもち)は、灰汁抜きした栃の実(トチノキの実)をもち米とともに蒸してからつき、餅にしたものである。もち米だけの餅よりも黄土色や茶色がかっており、独特の苦味がある。かつては米がほとんど取れない山村では重要な食糧で、21世紀初頭現在では土産物の1つとしても売られている。砂糖を付ける、餡に絡めるあるいは包む、塩茶漬けにするなどして食べる》。
私は、茶粥はよく食べるし、栃餅は吉野へ来るたびにお土産に買って帰る。それをドッキングさせると、こんな美味しい食べ物になるとは…。栃餅独特の苦みと、茶粥の香ばしさのコンビが絶妙である。

ここに山菜の佃煮や漬物を添えていただくと、もう気分は上北山村民だ。「とち餅茶粥」は従業員の上平さんが作られたもので、村内のご自宅と全く同じ方法で炊かれたそうだ。これまで、まかない飯として調理場で出されたことはあるが、料理として提供されたのはこれが初めてだそうだ。こんな美味しい郷土料理は、ぜひ定番にしていだきたいものである。
それにしても、このホテルの完成度の高さには舌を巻く。温泉、料理、接遇、設備のすべてが高いところでバランスしているのだ。リピーターが多いのも、当然だろう。上北山といえば、大台ヶ原への登山客が大半で、単に寝て食べて温泉に入ればそれで良し、という人が多いと思っていたが、最近は登山家や山男というより、一般のハイカーが多いので、食事や設備にもハイレベルなものを求められるのだ。

朝食。熊野産アジの干物、地元産の生湯葉、ワサビの茎の佃煮など
このホテルはそんなニーズにも十分応えられる素晴らしいホテルである。ぜひ、お訪ねいただきたいと思う。今回のメニューは「tetsudaスペシャル」との位置づけだった。
今後も地場産品をどんどんお使いになり、上北山村の良さを全国に発信していただきたいものである。
※ホテルかみきたスタッフブログ(ホテルかみきた新着情報)。もう少し、更新頻度を上げてほしいのだが…
http://bizleaders.jp/blog/htl-kamikita/
会長・社長、山根支配人、佐伯料理長、、福西さん、上平さんはじめ関係者の皆様、ムリを言って申し訳ありませんでした。おかげさまで温泉もお料理も、堪能させていただきました。今度はもっと大人数でお邪魔いたします。
※トップ写真は霧の西大台(5/17撮影)。大台ヶ原のなかでも「西大台」は入山者の利用調整(入山規制)が行われているが、ドライブウェイの道路沿いからは、こんな景色が眺められる。