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田中利典師の「ふるさとに帰らなくなった現代」

2025年01月06日 | 田中利典師曰く
goo blog システムの不具合で、更新が今ごろになってしまった(昨日は更新ができなかった)。今日の「田中利典師曰く」は、「ふるさと喪失を憂う」(師のブログ 2017.5.7付)。
※トップ写真はずいぶん以前、明日香村で撮影。万葉集で「ふるさと」といえば「飛鳥」である

師は「ふるさと」の歌を聞きながら、〈大きな問題があるとすれば、もう、ふるさとを離れただけではなく、皆がふるさとには帰らなくなった時代。帰る場所もない時代。そう誰もがふるさとを捨てた時代なのだ。本当にこれで良いのだろうか…〉と憂える。以下、全文を紹介する。

「ふるさと喪失を憂う」…田中利典著述集290507
今日は過去の著述ではなく、いま(2017年)、出来立ての、書き下ろしです。

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「ふるさと喪失を憂う」
「ふるさと」という歌がある。以下、歌詞を転載。
兎(うさぎ)追いし かの山 小鮒(こぶな)釣りし かの川 夢は今も めぐりて 忘れがたき 故郷(ふるさと)
如何(いか)に在(い)ます 父母 恙(つつが)なしや 友がき 雨に風に つけても 思い出(い)ずる 故郷
志(こころざし)を はたして いつの日にか 帰らん 山は青き 故郷 水は清き 故郷

この歌、2番で「お父さん、お母さんはどうしているだろうか一緒に遊んだ友達は、あのころと変わらずに元気でいるだろうか、雨が降ったら、故郷の雨の日を思い出し、風が吹いたら、故郷の風を思い出す 毎日の、ふとしたことで思い出すのは故郷の景色」

と、ふるさとへの郷愁を唄い、3番では「故郷を離れて都会に出て、一人前の立派な社会人になり、いつか、ひとつでも大きな仕事を成し遂げたら、故郷に帰ろうと思う 緑の美しい、あの故郷へ 澄んだ水の流れる、あの故郷へ 」

と、最後はふるさとに帰りたいと唄う。そうなのです、この歌が出来た時代はふるさとを出てもずっとふるさとを思い、父母や友を思い、そしていつかはふるさとへ帰るのです。

実は明治以前、近代を迎える以前は、みんなその土地、ふるさとに繋がって暮らしていた。その土地で生まれ、その土地で死んでいった。そこを壊して、近代国家が出来、人々はみんな、それぞれの理由や事情で、ふるさとを離れていった。いま、NHKの朝ドラ「ひよっこ」で描かれる戦後、復興日本の姿はまさにふるさとを思いつつ、ふるさとを離れざるを得なかった時代のお話。

そして現在、大きな問題があるとすれば、もう、ふるさとを離れただけではなく、皆がふるさとには帰らなくなった時代。帰る場所もない時代。そう誰もがふるさとを捨てた時代なのだ。本当にこれで良いのだろうか…。「ふるさと」という歌を聴きながら、ひとり私は憂れいている。
コメント
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