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出口治明著『還暦からの底力~歴史・人・旅に学ぶ生き方~』講談社現代新書

2020年06月21日 | ブック・レビュー
元気が湧き出る本を読んだ。出口治明著『還暦からの底力~歴史・人・旅に学ぶ生き方~』(講談社現代新書)だ。出口氏は1948年(昭和23年)生まれで、今年72歳。版元のHP「担当編集者より」には、

立命館APU(大分県別府市の「立命館アジア太平洋大学」)学長に就任した出口治明氏の今までの歴史書、読書論、ビジネス書とは一線を異にする本です。50代から新しく事業を展開し、還暦後も豊かな交流関係、幅広い視点からの講演活動等、業界内外から篤い信頼を寄せられる氏の満を持した本書です。

本書の主題である「還暦後の人生を充実させる考え方」は、「飯・風呂・寝る」の会社人生から脱却することを提案し、「60歳は折り返し地点」に過ぎないと新しい生き方に一歩を踏み出す高齢者へのエールでもあります。

「還暦後」と謳ったのには、理由があります。定年制廃止を訴える氏の意思を強く反映させるためです。出口学長ならではの思想・哲学をベースに、還暦後の底力の付け方を独特のおおらかな語り口で伝授します。還暦後(定年後)のみならず、現役のビジネスマン、学生にも役に立つ本です。


サブタイトルの「歴史・人・旅」は、本書では「人・本・旅」と出ている。これは「働き方改革を行い、早く職場を出て、いろいろなことを学ぶべきです。たくさんの人に会い、たくさん本(歴史書や古典など)を読み、いろいろなところに出かけていって刺激を受ける」ということである。

私は齋藤孝氏のすすめに従って三色ボールペンで傍線を引きながら読んだが、「おわりに」(あとがき)に、見事に本書の内容が凝縮されていたので、以下に抜粋して紹介する。

人生は楽しくてなんぼです。楽しい人生をおくるためには行動しなければなりませんが、「人・本・旅」できちんと学んで腹落ちしないと本気の行動はできません。

「還暦を超えたらもう仕事はせず、のんびり過ごそう」 そんな人もいるでしょう。各人の好みなのでそれはそれで結構です。ただし、「仕事をせずにのんびり」は寝たきり老人への道です。

大事なことは平均寿命より健康寿命で、医者は口を揃えて「健康寿命を延ばすには働くことが一番いいい」といっています。なぜ働くことが一番いいのか。それは規則的な生活をもたらし、かつ頭と身体を使い続けるからです。

メディアで取り上げられる高齢化社会の話題が暗くなる理由は単純で、ヤング・サポーティング・オールドという敬老思想に毒されているからです。つまり「若者が高齢者を支える」という、高度成長期に人口がどんどん増えた特殊な時代の理念や方法がいつまでも続くと考えていたら、若者が減って高齢者が増えれば社会構造的に続かなくなってしまうので、もうお先真っ暗と考えてしまうのです。

しかし、先進的な国ではもう年齢フリー社会、オール・サポーティング・オールの世界に入っています。年齢に関係なくみんなが能力と意欲、体力に応じて働く。そしてシングルマザーなど本当に困っている人に給付を集中する。すなわち、年齢で優遇するのをやめ、困っているかどうかで優遇する人を決める。

敬老思想から脱却し、きちんと数字・ファクト・ロジックで考えていけば、高齢化社会の将来は暗くないし、人はいくつになっても楽しい人生を過ごすことができます。還暦後でも社会的に大きな活躍をしたり、好きなことを追求して卓越した成果を残したりした人がたくさんいる事実は、本書でここまで述べた通りです。望むなら仕事や勉強だけではなく、恋愛だってガンガンすればいい。読者の皆さんにはそれぞれのやり方で、「還暦からの底力」を発揮していただきたいと思います。


出口氏はよく「いつまで働くのですか?」と聞かれるそうだ。氏は「そんなことは考えても仕方ないと思っています。今日も朝起きて元気だから仕事をしているだけの話で、しんどいと感じるようになったら、そのときに引退すればいいだけの話ではありませんか。年齢に意味がないというのは、そういうことです」と喝破する。

還暦を過ぎて将来を案じている皆さん、まだ若いけれど自身の行く末を考えている皆さん、この本はオススメですよ!

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