11/23付の朝日新聞(大阪本社版・社会面)に、こんな見出しが躍った。《秘仏開帳 大ヒット》《奈良 古寺に人波 ひと月10人→2000人》。前文には《ひと月10人が来るだけだった山里の寺に1カ月で2千人が訪れ、桜の季節ばかりが有名だった吉野山にはこの秋、10万人が押し寄せる勢いだ。平城遷都1300年祭の今年、奈良県内の50を超す社寺が、ふだんは公開しない秘仏などを特別開帳。古寺巡礼ブームのなか、各地で参拝者が急増している。(編集委員・小滝ちひろ、成川彩)》
http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK201011230016.html
本堂で寺宝展を開く円成寺(奈良市忍辱山町 11/12撮影)
《奈良市東北部、柳生(やぎゅう)の里の入り口にある南明寺(なんみょうじ)は、寄棟(よせむね)造の本堂に薬師如来坐像(ざぞう)などを安置する。お堂も仏像も鎌倉期の重要文化財だが、市中心部と結ぶ路線バスは日に数本。米田弘雅住職は「拝観者が月10人を超すことはめったになかった」という。しかし、10月23日から本堂を公開すると、11月21日までに約2千人が参拝し、拝観料収入がどっと増えた。米田住職は「傷みが目立つ涅槃(ねはん)図=江戸時代=の修理費用などにいかし、多くの人にまた来てもらえるようにしたい」と話していた》。なるほど、拝観料が増えれば修理代に充当できる。やはり拝観者に来ていただかないと、ジリ貧になるのだ。
※奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳(平城遷都1300年記念事業協会の公式HP)
http://www.1300.jp/event/roam/yamatoji/index.html
1300年祭の今年は《大小五十数カ所の社寺で「祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳~」が行われ、普段あまり公開されていない建物や宝物が積極的に公開された。その効果はあちこちで表れた》。「祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳~」(「巡る奈良」事業)では、南都銀行OBによるボランティアグループ「ナント・なら応援団」(36人)が活躍している。年間を通じ、計15か所で仏像などの説明(ガイド)をしていて、活動日数は約878人日(=人数×日数)に上る。
※ナント・なら応援団の活動報告(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/b7ed818034bd72f6d79bee0fc4ee77e3
円照寺(奈良市山町)では、庭園が特別公開(11/18撮影・トップ写真とも)
《県南部の吉野山にある修験道の根本道場・金峯山寺(きんぷせんじ)は9月1日から100日間、秘仏の本尊・金剛蔵王権現像(16世紀、国重文)を特別公開している。田中利典(りてん)執行長は「参拝者は例年の10倍。100日で10万人を超すのではないか。吉野まで足を運んでもらおうにも、寺の努力には限界がある。やはり県をあげてのPRが届いた」とみる》。拝観料は大人1000円だから、1000円×10万人は、などという計算をしている場合ではない。桜の季節以外は閑古鳥が鳴いていた吉野山の飲食店や土産物店も、にわか景気に沸いている。金峯山寺蔵王堂には、土日だと1日2000人ほどが訪れるそうで、OBもガイドどころではなく、懸命に場内整理に当たっている。
※金峯山寺 金剛蔵王権現像(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/0c4a12cadfd8d653143ccf8b73ad1920
《秘仏・阿弥陀如来立像がある奈良市の「叙寰宦iれんじょうじ)」は「5月と10月の公開で1日平均100人以上。通常の3倍の拝観者が来た」、室町時代の再建以来初めて三重塔の初層を公開した同県高取町の壷阪(つぼさか)寺も「春は3~4割増、秋は1割増。これまでほとんどなかった関東からの参拝者が目立った」という》。壷阪寺の三重塔は初公開で、それが室町時代以来だというからスゴい。OBによると、東京からの日帰り客がいるそうだ。早朝に東京発→新幹線で京都→観光バスで金峯山寺蔵王堂と壷阪寺→その日の夜に東京帰着、というJR東海などの弾丸ツアーが企画されたのだという。
※裸形阿弥陀仏の寺・叙寰宦i当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/2bdb4ec1171dad2392ef7bbd9da5b834
壷阪寺三重塔前で開かれた事前説明会(9/7)
《金峯山寺を訪れた千葉県松戸市の主婦荻原貴美さん(63)は「今、秘仏を見逃したら、数十年先になるかも知れないと思って来た。本などで下見したが、本物は100倍素晴らしい」。室生(むろう)寺=奈良県宇陀市=や当麻(たいま)寺=同県葛城市=など5、6カ所の秘宝・秘仏を拝観した奈良市の飲食店長山田素子(もとこ)さん(26)は「秘仏に会えるとラッキーな気になる。いつも行っている寺社でも、特別なものが見られてお得だった」と言った》。
※まだ拝観できる主な特別開帳(11/23現在)
http://www2.asahi.com/kansai/entertainment/image/OSK201011220265.jpg
この事業の成功の陰には、平城遷都1300年記念事業協会の辻晋吾さん、露口真広さんをはじめとする職員の皆さんの献身的な努力があった。私もよく深夜や休日にお電話をいただいたが「皆さん、ちゃんと寝ているのだろうか」と心配になるほどの活躍ぶりだ。現地にも何度も足を運ばれ、その都度パンフレットを補充されたり、説明書きを追加されていて、全く頭が下がる。
《課題は来年からの取り組みだ。「今年のような開帳が続くとありがたい」(県幹部)と期待する声もあるが、具体的な動きはまだない》。継続については、すでに春頃から議論されていた。来年以降の体制づくりも、県を巻き込んで秋頃から準備されていて、今後の展開が楽しみである。
禅の教えに「明珠在掌(みょうじゅたなごころにあり)」という言葉がある。曇りのない明珠(宝珠)は、どこかヨソにあるのではなく掌(手のひら)、つまり自分の中にある、という意味である。奈良県には国宝の仏像が70件、国宝建造物が64件・71棟もあり、いずれもダントツで全国1位である。どこかに観光資源はないか、地域おこしのネタはないかと探さずとも、地元にこんな埋もれた「お宝」があったのだ。
折しも、世は歴史ブーム、仏像ブーム、古寺巡礼ブーム。2011年以降も、秘宝・秘仏特別開帳で全国から奈良県に拝観客を引きつけたいものである。
http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK201011230016.html
本堂で寺宝展を開く円成寺(奈良市忍辱山町 11/12撮影)
《奈良市東北部、柳生(やぎゅう)の里の入り口にある南明寺(なんみょうじ)は、寄棟(よせむね)造の本堂に薬師如来坐像(ざぞう)などを安置する。お堂も仏像も鎌倉期の重要文化財だが、市中心部と結ぶ路線バスは日に数本。米田弘雅住職は「拝観者が月10人を超すことはめったになかった」という。しかし、10月23日から本堂を公開すると、11月21日までに約2千人が参拝し、拝観料収入がどっと増えた。米田住職は「傷みが目立つ涅槃(ねはん)図=江戸時代=の修理費用などにいかし、多くの人にまた来てもらえるようにしたい」と話していた》。なるほど、拝観料が増えれば修理代に充当できる。やはり拝観者に来ていただかないと、ジリ貧になるのだ。
※奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳(平城遷都1300年記念事業協会の公式HP)
http://www.1300.jp/event/roam/yamatoji/index.html
1300年祭の今年は《大小五十数カ所の社寺で「祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳~」が行われ、普段あまり公開されていない建物や宝物が積極的に公開された。その効果はあちこちで表れた》。「祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳~」(「巡る奈良」事業)では、南都銀行OBによるボランティアグループ「ナント・なら応援団」(36人)が活躍している。年間を通じ、計15か所で仏像などの説明(ガイド)をしていて、活動日数は約878人日(=人数×日数)に上る。
※ナント・なら応援団の活動報告(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/b7ed818034bd72f6d79bee0fc4ee77e3
円照寺(奈良市山町)では、庭園が特別公開(11/18撮影・トップ写真とも)
《県南部の吉野山にある修験道の根本道場・金峯山寺(きんぷせんじ)は9月1日から100日間、秘仏の本尊・金剛蔵王権現像(16世紀、国重文)を特別公開している。田中利典(りてん)執行長は「参拝者は例年の10倍。100日で10万人を超すのではないか。吉野まで足を運んでもらおうにも、寺の努力には限界がある。やはり県をあげてのPRが届いた」とみる》。拝観料は大人1000円だから、1000円×10万人は、などという計算をしている場合ではない。桜の季節以外は閑古鳥が鳴いていた吉野山の飲食店や土産物店も、にわか景気に沸いている。金峯山寺蔵王堂には、土日だと1日2000人ほどが訪れるそうで、OBもガイドどころではなく、懸命に場内整理に当たっている。
※金峯山寺 金剛蔵王権現像(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/0c4a12cadfd8d653143ccf8b73ad1920
《秘仏・阿弥陀如来立像がある奈良市の「叙寰宦iれんじょうじ)」は「5月と10月の公開で1日平均100人以上。通常の3倍の拝観者が来た」、室町時代の再建以来初めて三重塔の初層を公開した同県高取町の壷阪(つぼさか)寺も「春は3~4割増、秋は1割増。これまでほとんどなかった関東からの参拝者が目立った」という》。壷阪寺の三重塔は初公開で、それが室町時代以来だというからスゴい。OBによると、東京からの日帰り客がいるそうだ。早朝に東京発→新幹線で京都→観光バスで金峯山寺蔵王堂と壷阪寺→その日の夜に東京帰着、というJR東海などの弾丸ツアーが企画されたのだという。
※裸形阿弥陀仏の寺・叙寰宦i当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/2bdb4ec1171dad2392ef7bbd9da5b834
壷阪寺三重塔前で開かれた事前説明会(9/7)
《金峯山寺を訪れた千葉県松戸市の主婦荻原貴美さん(63)は「今、秘仏を見逃したら、数十年先になるかも知れないと思って来た。本などで下見したが、本物は100倍素晴らしい」。室生(むろう)寺=奈良県宇陀市=や当麻(たいま)寺=同県葛城市=など5、6カ所の秘宝・秘仏を拝観した奈良市の飲食店長山田素子(もとこ)さん(26)は「秘仏に会えるとラッキーな気になる。いつも行っている寺社でも、特別なものが見られてお得だった」と言った》。
※まだ拝観できる主な特別開帳(11/23現在)
http://www2.asahi.com/kansai/entertainment/image/OSK201011220265.jpg
この事業の成功の陰には、平城遷都1300年記念事業協会の辻晋吾さん、露口真広さんをはじめとする職員の皆さんの献身的な努力があった。私もよく深夜や休日にお電話をいただいたが「皆さん、ちゃんと寝ているのだろうか」と心配になるほどの活躍ぶりだ。現地にも何度も足を運ばれ、その都度パンフレットを補充されたり、説明書きを追加されていて、全く頭が下がる。
《課題は来年からの取り組みだ。「今年のような開帳が続くとありがたい」(県幹部)と期待する声もあるが、具体的な動きはまだない》。継続については、すでに春頃から議論されていた。来年以降の体制づくりも、県を巻き込んで秋頃から準備されていて、今後の展開が楽しみである。
禅の教えに「明珠在掌(みょうじゅたなごころにあり)」という言葉がある。曇りのない明珠(宝珠)は、どこかヨソにあるのではなく掌(手のひら)、つまり自分の中にある、という意味である。奈良県には国宝の仏像が70件、国宝建造物が64件・71棟もあり、いずれもダントツで全国1位である。どこかに観光資源はないか、地域おこしのネタはないかと探さずとも、地元にこんな埋もれた「お宝」があったのだ。
折しも、世は歴史ブーム、仏像ブーム、古寺巡礼ブーム。2011年以降も、秘宝・秘仏特別開帳で全国から奈良県に拝観客を引きつけたいものである。
日程があわずに見逃した所がたくさんあります。
ひっそり静かな雰囲気のお寺が好きですが、お寺を維持していく為には拝観料収入が大切ですから拝観者を増やすことが必要でしょう。
でも、あまりに商売上手な感じにもならないで欲しいです。
朝日新聞を読んで、こんなにはしゃがれるのはおかしくないですか。
朝日の数値は正しいと認められたのですか。
> 来年以降も秘宝・秘仏の特別開帳をしていただきたい
> です。日程があわずに見逃した所がたくさんあります。
はい、私も同感です。拝観の困難な興福院(こんぶいん)なども、何とか開けていただきたいものです。来年以降の展開が、今から楽しみです。
> 朝日新聞を読んで、こんなにはしゃがれるのはおかしく
> ないですか。朝日の数値は正しいと認められたのですか。
朝日が嫌いとか、読売が好きとかいうことではありません。ならまちに関する数字の取り方に問題があったことは指摘したとおりですが、それと秘宝・秘仏開帳の記事とは、何の関係もありません。是々非々です。
こないだの日曜日、金峯山寺蔵王堂は人でごった返し、入場制限をしていたそうです。「4千人ほど来ていたのでは」という町の噂もあります。奈良県の底力には、感服します。