エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

ツバキの花

2008-04-25 | 自然観察
                 【椿 乙女】

 寺田寅彦の随筆に、漱石の俳句についてその句を物理学的に考察した文があった。何時読んだものか、椿の花にハチか虫がとまり、椿の花が落ちてその虫を花瓣が伏せたというような情景を詠んでいた、と記憶している。5冊ある岩波文庫の「寺田寅彦随筆集」を開いて探したが、その文章が見つからない。

 今、庭先の椿「乙女」が満開で、もう何個かが落花していた。ピンクの八重咲きの幾何学模様がきれいな「乙女」が花びらを茶っぽく変色させ落下している。庭の敷石の上にはその幾何学模様を上にしているものが、土に残る枯れ葉の上には花を伏せた格好で落ちていた。数えてみたら表を上にしたものが4つ、伏せて裏面を見せているものが6個とほぼ半々だった。

 寅彦がどんな感想を科学的に述べていたのだろうかは忘れた。小さな粒子の落下にはストークスの法則があるが、大きな花に当てはまる必然的な科学的理論は導けるはずもないだろう。
 落花にはいろいろ条件はあるだろう。花の大きさや品種、咲いた位置の違い、時期も違う。昨夜は風がひどく雨戸の音に寝苦しかった覚えがあるが、風に吹かれて落ちるか自然落下するかもちがうだろう。諸々の条件が違って咲いた花だ、落下の要因はあまりに多変量だ。
そんな自然現象を眺め、そうした疑問を抱き句にまでした漱石、そしてその句を物理学者の目で考察する寅彦がいた。そうした創造的な心の動きに関心を抱いた。

椿を数輪手折り、一輪挿しに飾った。「白侘助」はまだつぼみが堅い。
もう一度、寅彦の椿にまつわる随筆を探して読んでみたい。


【一輪だけ他の花と違った、花びらが丸まった花があった。】