しばらく雑事に忙殺された。
酷暑の夏の終わり、くさむらに鳴く虫の音を聞きながら床に就く。
かすかだが季節は巡っている。
また、自然に癒されたい。野に咲く一輪の花や木々の風のそよぎに・・・
従然草には「一生は雑事の小節にさへられて空しく暮れなん」とある。
忙しさの中、振り返ることもなかったこころを見つめている。
ふと、自分が間違った生き方をしてきたような空しさを感じることがある。
でも、時折感じるこの空しさも、雑事の小節が忘れさせてくれたのでは。
雑事は決して無駄な時間ではないのだ。人生に無駄な時間はないのかもしれない。
まどろみにせんなきことを巡らしながら一夜が明けた。
寝床から、明けゆく空の色を眺めている。何と美しい黎明、空の色か。
悠久の宇宙に浮かぶ地球、ちまちましたアリのごとき人類の営みではないか。
何と些細な悩みであることか。
いつも、無一物の良寛に戻る。謄々とすべて天真に任せたい。