日本のモーターリーゼーションの発達と共にベストセラー街道を歩み続けた「間違いだらけの自動車選び」の著者である、徳大寺有恒さん。しばらくは体調不良のため、著作は極僅かに控えられていたようだが、昨秋に復活され、近頃のエコカー事情に対して「モノ申す」とばかりに「間違いだらけのエコカー選び」を出版された。
その内容は最新エコカーを詳しく解説しつつ「エコカーのどこが従来のクルマより優れて(劣って)いるのか?」、「そもそもエコカーは本当に環境に優しいのか?」といったテーマで綴られている。
日本ではエコカーと言えば、一番判りやすい「ハイブリッド車」や「電気自動車」ばかりが目立つものだから、マスコミもそればかりを評価する。よってメーカーもソコに注力しているが、本当のところはみんな割高で全体のシェアで考えるとそう多くは普及していない。実際には一番売れ筋であるのは普通のエンジンを搭載した車であるのに、そのエコ化が遅れていると、徳大寺さんは指摘している。中でも結構な紙面を割いているのが、「ディーゼル・エンジン」についての話だ。
ディーゼル・エンジンはガソリン・エンジンと比べて燃費が良いのはよく知られているが、コレは燃焼特性が大きく違うからだそうだ。
徳大寺さんの説明によると、ガソリン・エンジンの燃費が悪い要因は、効率原理から1気筒あたりの容積に限界があるため、大出力を得るには多気筒化するしかない点にあり、そうなると、機械の内部抵抗が増え、熱損失も増えてロスが大きくなるのだそうだ。(4気筒のガソリン・エンジンに3000cc以上が見あたらないのは、ココに原因があったのか!と、ボクは初めて知った。)
ディーゼル・エンジンは「燃費が良い」といことに加えて「ガソリン・エンジンに比べてCO2排出量が少ない」という特性から、環境問題を考える人の選択肢がこちらに傾くのは当然の話だ。だから実際にヨーロッパでは乗用車全体の半分近くがディーゼル車になっているのだ。
また「ル・マン24時間レース」では4年連続でディーゼル・エンジン搭載車が優勝していることからも判るように、日本で一般に見られるようなイメージよりも実際は、かなり高性能化できるエンジンでもある。
ところが、日本では例の東京都から始まったディーゼル車の締め出し以降、事実上ディーゼル・エンジン搭載の乗用車が販売不可能となっている。(僅かに日産のエクストレイルと三菱のパジェロの一部に搭載車があるだけ)
こんな風に書いていると「ディーゼルはキタナイ排ガスを出すんだから、無くなっても仕方ないじゃ~ないか!」と言われてしまいそうだが、そういう人達に対して徳大寺さんがこの本の中で説明してくれている。
各車のカタログ見るとデータ欄に「10・15モード燃費」というのが書かれており、車の購入時に、このデータを燃費の参考にする人は多いと思う。しかし、このデータは良くて7割、下手すると半分くらいになることはほとんどの人が知っているハズだし、実際に体験もしていることだろう。
この「10・15モード」というのは、本来は排気ガスが規制値内に収まっているかを判断する際に設定する、10ないし15の走行パターンのことだ。その際に計測された燃費が、普通に走った実燃費とこんなにも差があるということは、テストの走行パターンが現実離れしている証拠になるのだ。更にそのパターンはガソリン・エンジンにとって、かなり有利なモノになっているそうだ。
一方でガソリン・エンジンに基準の甘い排ガス規制を与えておきながら、それを元に作成した実現不可能な新排ガス規制を特性の違うディーゼル・エンジンに課したことが、事実上の「日本国内でのディーゼル・エンジン搭載乗用車の禁止令」になった経緯なのだそうだ。
ちなみに「10・15モード」はもうすぐ「JCO8」という、新基準に変わるそうだが、徳大寺さんに言わせると、これもまた、ガソリン・エンジンに対して甘い基準である点では変わっていないそうだ。
実際に、ボクが見ていても以前には、確かに「古いディーゼル・エンジン、過積載、登坂時や加速時」という条件で黒煙をまき散らしていたトラックもたくさんあったし、そもそも整備不良丸出しのトラックもあった。しかし、ボクが20年以上乗り継いだ乗用ディーゼル車にはそんなヒドイ車はなかったし、第一そんな状態であれば購入に至ってはいなかったであろう。
以前は日本で販売されている軽油に、ススの発生原因でもある硫黄分が多く含まれるという問題もあったが、それも石油メーカーが重い腰を上げ、段階的に対応した結果、現在では改善され、「サルファーフリー(低硫黄)化」されている。だから規制自体も無理のないところをスタート地点としてディーゼルの特性に合った排ガス規制を段階的に導入していれば、現状とは違う結果になっていたと思え、残念でならない。
更に徳大寺さんは
「大気汚染の元凶としてディーゼルに『悪』のレッテルを貼り、それに対し、ガソリンエンジンを『善』とする考えは、誤りといえるのだが、そういう真実が正しく理解されない。また、一般の思い込みと違った事実を語っていくこと自体が忌避される。そういう状況が続いてきたところに、日本のディーゼル議論の、そして環境議論の危うさがある。」
と、ハッキリ述べている。
こういった類は、ディーゼル車乗りであり、一般市民であり、釣り人でもあるボクがこの目でウンザリするほど見てきた光景なので、大いに頷ける部分でもあった。
長距離走行をする機会の多いボクにとって、あらゆる面でコストが割高になるガソリンエンジン車の導入は、正直言ってツラい。だが、前回の車買い換え時には、もう既にディーゼル・エンジン搭載車の新車販売は無くなっていた。そこで中古車の中から必死に探した結果、ようやく出会えたのが今の車であった。
現在、その車の累計走行距離は、196000kmを越え、
もう間もなく200000km台に突入しようとしている。「一台の車にこれだけ長く乗るのもエコだ。」と、胸を張って言いたくはなるが、残念ながら例のディーゼル乗用車締め出し法によって、規制地域内の所有者であるボクにとっては前回の車検が「最後の車検」だと決められている。使用期限があと1年半という状況下にあって、今回の徳大寺さんの指摘はウレシイ援護射撃だ。
少しでも日本でのディーゼル・エンジン搭載車が正しく評価され=誤解が解かれ、それを契機に開発スピードが進んだ結果、エコロジー&エコノミーの両面で高性能かつ、乗って楽しいディーゼル・エンジン搭載車の早期の登場を願う毎日なのである。
その内容は最新エコカーを詳しく解説しつつ「エコカーのどこが従来のクルマより優れて(劣って)いるのか?」、「そもそもエコカーは本当に環境に優しいのか?」といったテーマで綴られている。
日本ではエコカーと言えば、一番判りやすい「ハイブリッド車」や「電気自動車」ばかりが目立つものだから、マスコミもそればかりを評価する。よってメーカーもソコに注力しているが、本当のところはみんな割高で全体のシェアで考えるとそう多くは普及していない。実際には一番売れ筋であるのは普通のエンジンを搭載した車であるのに、そのエコ化が遅れていると、徳大寺さんは指摘している。中でも結構な紙面を割いているのが、「ディーゼル・エンジン」についての話だ。
ディーゼル・エンジンはガソリン・エンジンと比べて燃費が良いのはよく知られているが、コレは燃焼特性が大きく違うからだそうだ。
徳大寺さんの説明によると、ガソリン・エンジンの燃費が悪い要因は、効率原理から1気筒あたりの容積に限界があるため、大出力を得るには多気筒化するしかない点にあり、そうなると、機械の内部抵抗が増え、熱損失も増えてロスが大きくなるのだそうだ。(4気筒のガソリン・エンジンに3000cc以上が見あたらないのは、ココに原因があったのか!と、ボクは初めて知った。)
ディーゼル・エンジンは「燃費が良い」といことに加えて「ガソリン・エンジンに比べてCO2排出量が少ない」という特性から、環境問題を考える人の選択肢がこちらに傾くのは当然の話だ。だから実際にヨーロッパでは乗用車全体の半分近くがディーゼル車になっているのだ。
また「ル・マン24時間レース」では4年連続でディーゼル・エンジン搭載車が優勝していることからも判るように、日本で一般に見られるようなイメージよりも実際は、かなり高性能化できるエンジンでもある。
ところが、日本では例の東京都から始まったディーゼル車の締め出し以降、事実上ディーゼル・エンジン搭載の乗用車が販売不可能となっている。(僅かに日産のエクストレイルと三菱のパジェロの一部に搭載車があるだけ)
こんな風に書いていると「ディーゼルはキタナイ排ガスを出すんだから、無くなっても仕方ないじゃ~ないか!」と言われてしまいそうだが、そういう人達に対して徳大寺さんがこの本の中で説明してくれている。
各車のカタログ見るとデータ欄に「10・15モード燃費」というのが書かれており、車の購入時に、このデータを燃費の参考にする人は多いと思う。しかし、このデータは良くて7割、下手すると半分くらいになることはほとんどの人が知っているハズだし、実際に体験もしていることだろう。
この「10・15モード」というのは、本来は排気ガスが規制値内に収まっているかを判断する際に設定する、10ないし15の走行パターンのことだ。その際に計測された燃費が、普通に走った実燃費とこんなにも差があるということは、テストの走行パターンが現実離れしている証拠になるのだ。更にそのパターンはガソリン・エンジンにとって、かなり有利なモノになっているそうだ。
一方でガソリン・エンジンに基準の甘い排ガス規制を与えておきながら、それを元に作成した実現不可能な新排ガス規制を特性の違うディーゼル・エンジンに課したことが、事実上の「日本国内でのディーゼル・エンジン搭載乗用車の禁止令」になった経緯なのだそうだ。
ちなみに「10・15モード」はもうすぐ「JCO8」という、新基準に変わるそうだが、徳大寺さんに言わせると、これもまた、ガソリン・エンジンに対して甘い基準である点では変わっていないそうだ。
実際に、ボクが見ていても以前には、確かに「古いディーゼル・エンジン、過積載、登坂時や加速時」という条件で黒煙をまき散らしていたトラックもたくさんあったし、そもそも整備不良丸出しのトラックもあった。しかし、ボクが20年以上乗り継いだ乗用ディーゼル車にはそんなヒドイ車はなかったし、第一そんな状態であれば購入に至ってはいなかったであろう。
以前は日本で販売されている軽油に、ススの発生原因でもある硫黄分が多く含まれるという問題もあったが、それも石油メーカーが重い腰を上げ、段階的に対応した結果、現在では改善され、「サルファーフリー(低硫黄)化」されている。だから規制自体も無理のないところをスタート地点としてディーゼルの特性に合った排ガス規制を段階的に導入していれば、現状とは違う結果になっていたと思え、残念でならない。
更に徳大寺さんは
「大気汚染の元凶としてディーゼルに『悪』のレッテルを貼り、それに対し、ガソリンエンジンを『善』とする考えは、誤りといえるのだが、そういう真実が正しく理解されない。また、一般の思い込みと違った事実を語っていくこと自体が忌避される。そういう状況が続いてきたところに、日本のディーゼル議論の、そして環境議論の危うさがある。」
と、ハッキリ述べている。
こういった類は、ディーゼル車乗りであり、一般市民であり、釣り人でもあるボクがこの目でウンザリするほど見てきた光景なので、大いに頷ける部分でもあった。
長距離走行をする機会の多いボクにとって、あらゆる面でコストが割高になるガソリンエンジン車の導入は、正直言ってツラい。だが、前回の車買い換え時には、もう既にディーゼル・エンジン搭載車の新車販売は無くなっていた。そこで中古車の中から必死に探した結果、ようやく出会えたのが今の車であった。
現在、その車の累計走行距離は、196000kmを越え、
もう間もなく200000km台に突入しようとしている。「一台の車にこれだけ長く乗るのもエコだ。」と、胸を張って言いたくはなるが、残念ながら例のディーゼル乗用車締め出し法によって、規制地域内の所有者であるボクにとっては前回の車検が「最後の車検」だと決められている。使用期限があと1年半という状況下にあって、今回の徳大寺さんの指摘はウレシイ援護射撃だ。
少しでも日本でのディーゼル・エンジン搭載車が正しく評価され=誤解が解かれ、それを契機に開発スピードが進んだ結果、エコロジー&エコノミーの両面で高性能かつ、乗って楽しいディーゼル・エンジン搭載車の早期の登場を願う毎日なのである。