■今期二度目の高原川■
今春は誰もが言うように寒暖の差が激しく、安定しない。この日も4月が終わろうとしているのにやって来た寒気の影響で、岐阜県北部の道端に立つ温度計は午前0時頃には既に氷点下を指していた。海とは違って外気温と連動しやすい川の水温を気遣いながらも岐阜県最北部を走破し、高原川河畔へと向かった。
■朝靄の中■
前回の脱渓地点だった「芋生茂(おいも)橋」を渡って、その近辺から入渓し、そこから上流を目指した。
あまりに激しい寒暖差の煽りを受けてか、各渓流では釣果ムラが出ているようだが、ここ高原川も例外ではなく、スタート地点に立ちこめる朝靄(あさもや)は前途を予感させるモノであった。
■実釣スタート■
まず、目に入ったポイントに仕掛を投入し始める。数頭目で早くも、そこそこサイズのヤマメをゲットし、その後も散々攻めてみたが、小型がポツンと1匹アタッたものの、それっきりで後が続かない。更にアタッたポイントは、通常ヤマメが好む流れよりも遅い部分だ。
「やはり、気温と共に水温低下で活性が落ちているのだろうか?」との思いが頭を巡り始める。
橋のすぐ上流にある、やや深みのある部分を攻めてみるが、ココは盛期にはヤマメの良いアタリがとれそうな感じはするが、この日の条件では流れが速すぎて無反応だった。更に他のそれらしきヤマメ・ポイントも攻めてみるが、稀にアタッてもエサの端をカジるのみで、食い込まない。これでいよいよ水温低下による食い渋りが現実のモノとして感じるようになった。そしてここから導いた予測から「流れの緩い部分にある、変化」に対する重点的な攻めを心掛けた。
その甲斐あってか、ポツリポツリとアタリが出始めるが、そのアタリの発信元は全てイワナからのモノだった。コレには理由がある。イワナはヤマメより低水温と流れがやや遅い部分を好むからである。
■晴れ渡る河原で■
時間が経つと朝靄も消え、天気はピーカン・モードに突入した。それと共に上流正面に「焼岳」が姿を現す。こういう景色も渓流釣りの楽しみの一つである。
焼岳に見とれつつ更に釣り上がるが、ココで他の釣り人と遭遇する。上流に向かって釣り上がってくる人に気付かず、前に入ってしまうことは偶然として考えられるが、そうではない。
動きを観察していると、こちらのペースが速くて追いついた結果であったり、その人が釣り上がる人の目の前にワザと入る「頭はね」と呼ばれる行為をしたのでもなさそうだ。どうやら下流に向かって釣り下って来ているようだ。
この釣りをやっていて何度か釣り下って来る人を見かけたことがあるが、そのほとんどがルアー釣りをする人で、この人もそうだった。
この「釣り下り」という行為をする人の神経は、どうにも理解できない。それは、ボクがもし仮にルアーをキャストする立場に変わった場合であってもだ。
元々、渓流でのルールを作ってきたのはルアーやフライが日本に入ってくるよりも、遙か昔からそこで釣りをしてきたエサ釣り師やテンカラ師達だ。だから、たとえ何かの不条理さを感じても「渓流では下流から釣り上がる」という基本ルールは何人であっても従わざるを得ないのだ。
唯一釣り下って構わないのは、下流に大型堰堤や滝のように人が絶対に上がってこられない区間=「一方通行区間」に向かう場合だけで、しかも自分が降りた場所から下流には人が降りられないという条件が必要だ。
釣り下りの弊害は、左側通行の日本の道路で「自分は右側通行の方が走りやすい」という根拠の下、「近くに誰も居ない」のをイイことに車を逆走させ続ければ、やがては必ず正面衝突するのと同じだ。お互いに気持ちの良い釣りがしたければ、絶対に守るべきルールなのだ。
一言言ってやろうと待ち構えていたのだが、その意気込みが事前に届いてしまったのか、そのルアー君は、ボクを避ける方向に歩いて行った。
「避けるくらいなら、最初からするな!」と思いつつ、彼がさっきまで執拗にキャストしていて、何も釣っていなかった地点を見ると、良さげなポイントではないか!。
「どうせ、この日の低活性下では、ルアーを追うようなヤル気のある魚は居るまい。」との判断から、ボクはそのポイントを攻め始めた。
数投目、アタリを捉えて良型のイワナをゲット。しかし、「ドーだ、参ったかこのヤロー」と振り返ってみるが、ルアー君は退散した後とみえて、既に姿は消えていた。
その後は更に釣り上がるが、既にルアー君が叩いていたのに加えて、更なる釣り人を発見したこと(この人はエサ釣り師だったが、ちゃんと釣り上がっていた)で諦めがつき、本日1回目の脱渓を決意した。
■情報収集■
今回のエサも前回同様「キンパク」であったが、サイズが小さく2個装着する機会が多くてエサ切れの心配があった。そこで追加のエサを購入するため、いつも高原川釣行でお世話になっている「宝フィッシング」さん(http://www.geocities.jp/takaraf/)に立ち寄り、同時に情報収集をする。
予想通り店長さんから
「3日前から水温が下がって昨日も食いが悪かった。」という情報をもらったので、ボクからは
「上流の蒲田川なら温泉が流れ込むので水温が高いの?」という、質問をする。
聞けばその通りだった。退店後は上流に車を走らせ、車窓から見下ろして気になる部分に仕掛を打ち込む「ラン&ガン」攻撃をしつつ、蒲田川に向かって高原川沿いを遡っていった。
■天然記念物■
途中、とある淵が気になって、河原に降りていこうとした際に、ナニヤラ茂みに気配を感じ、そこででゴソゴソと動くモノを発見した。「すわ、熊かっ!」と身構えたが、それは国指定特別天然記念物である、ニホンカモシカだった。自身3度目の遭遇であるが、それらは全て3年間での出来事なので、「遭遇密度?が濃いような…」との思いから「個体数はそんなに減っていないのでは?」と、調べてみたが、中国地方以西では絶滅状態にあるものの、予想通り、それ以東ではかなり増えているようである。
カモシカに見送られた先にある淵では、なんとかヤマメをゲットしたこともあって少々粘ってはみたものの、コレも単発だった。
どこも気配が薄く、万策尽きた感があったので、宝フィツシングさんのアドバイスに素直に従い、間のポイントはもう飛ばすことにしてダイレクトに蒲田川へと向かうことを決意した。
■蒲田川へ■
蒲田川は今見という地区で高原川に注ぎ込む、比較的規模の大きな支流の一つだ。ここの特徴は前述したように、川沿いに何カ所もある温泉地から流れ込む温泉水のお陰で、水温が他地区に比べて高く、低水温に強いのが特徴だ。しかし、ココを目指す釣り人=特にルアーやフライをする釣り人が多く、激戦区とも言われている。
人混みがキライなボクはこれまでこの川を意図的に避けてきたのだが、背に腹は替えられない。しばらく川沿いを走って入渓点を探しているうちに気が付けば中尾橋まで到達したのだが、既に日没の時間が迫っており、躊躇するヒマも無くなりつつあった。
ふと橋の上から見下ろすと、良い感じのポイントを発見した。しかし今、正にそこから釣りを切り上げて帰る人の姿がそこにあった。
「まだ、魚は残っているのだろうか?」と、不安になりつつもその釣り人の様子を確認してみる。「釣りは道具ではない」という人が居るが、偏見を承知で発言させてもらうと、長年釣りをやっていれば、立ち振る舞いや恰好、それに道具立てである程度実力が判ってしまうものだ。幸い?にも名人級ではなさそうだったので、半ば安心しつつ空いたポイントに入ってみることにした。
散々叩かれて、魚が警戒しているのかもしれないので、仕掛は今までよりも細いモノを装着し、投入する。すると、案の定、2投目でキレイなアタリが出た。
だが、小さなアマゴだった。
「日本海に注ぐ川なのにアマゴ?」と思うだろうが、漁協関係者の説明では昨年放流?した発眼卵(受精済みの卵)の中に手違いでアマゴの卵が混入していたようである。
「しっかりしてくれよ。」と、言いたくもなるが、もう入ってしまったものは取り返しがつかないので、誰が何を言っても無駄なことだ。
最後の約45分間で、合計6匹出たが、どれもが小型でキープ出来そうなモノは1匹も出ず、この日の釣りが終わった。
■頭の引き出しに…■
今回は、水温の低下でボクがいつもメインに狙っている、ヤマメやアマゴの良型に遭遇するチャンスがほとんど無かった。
こんな日には誰もが思いつくであろう、水温の高いエリアに混雑を承知で移るか、思い切ってイワナ専門に狙う方が結果的に楽しめるという経験が再確認されたうえでボクの、頭の中の引き出しに仕舞い込まれたのだが、反面、「玉砕覚悟で目的の魚を狙い続けていれば、もしかして…。」と、頭のどこかでチラついてしまうのも釣り師の性だ。
ボクの好きなギタリストである、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの曲に「PRIDE & JOY」というのがあるが、それは「非常に大事にしている人[もの]」という意味らしい。ボクにとっての釣りは、正しくそうであるが、釣りは(そんな英語があるのかどうかは判らないが)「PRIDE OR JOY」でもあるのだ。
「ひたすら本命の良型魚を求め続ける」=「プライド(PRIDE)をとるか?」、「そこそこサイズに妥協し、安定した釣果を得る」=「楽しみ(JOY)をとるか?」…。勿論、両方成立するのが最高だが、機会はそう多くはない。だが、こうやって葛藤するのも、「実は釣りの楽しさなのだ。」と、ボクは肯定的に捉えている。
「嗚呼、罪深きかな釣りという趣味は…。」ということだ。
今春は誰もが言うように寒暖の差が激しく、安定しない。この日も4月が終わろうとしているのにやって来た寒気の影響で、岐阜県北部の道端に立つ温度計は午前0時頃には既に氷点下を指していた。海とは違って外気温と連動しやすい川の水温を気遣いながらも岐阜県最北部を走破し、高原川河畔へと向かった。
●明け方にはいったい何度まで下がっているのだろうか?●
■朝靄の中■
前回の脱渓地点だった「芋生茂(おいも)橋」を渡って、その近辺から入渓し、そこから上流を目指した。
●芋生茂(おいも)橋●
あまりに激しい寒暖差の煽りを受けてか、各渓流では釣果ムラが出ているようだが、ここ高原川も例外ではなく、スタート地点に立ちこめる朝靄(あさもや)は前途を予感させるモノであった。
●朝靄の立ちこめる高原川●
■実釣スタート■
まず、目に入ったポイントに仕掛を投入し始める。数頭目で早くも、そこそこサイズのヤマメをゲットし、その後も散々攻めてみたが、小型がポツンと1匹アタッたものの、それっきりで後が続かない。更にアタッたポイントは、通常ヤマメが好む流れよりも遅い部分だ。
「やはり、気温と共に水温低下で活性が落ちているのだろうか?」との思いが頭を巡り始める。
●21cmのヤマメ●
橋のすぐ上流にある、やや深みのある部分を攻めてみるが、ココは盛期にはヤマメの良いアタリがとれそうな感じはするが、この日の条件では流れが速すぎて無反応だった。更に他のそれらしきヤマメ・ポイントも攻めてみるが、稀にアタッてもエサの端をカジるのみで、食い込まない。これでいよいよ水温低下による食い渋りが現実のモノとして感じるようになった。そしてここから導いた予測から「流れの緩い部分にある、変化」に対する重点的な攻めを心掛けた。
その甲斐あってか、ポツリポツリとアタリが出始めるが、そのアタリの発信元は全てイワナからのモノだった。コレには理由がある。イワナはヤマメより低水温と流れがやや遅い部分を好むからである。
●アタッてくるのは全てイワナ●
■晴れ渡る河原で■
時間が経つと朝靄も消え、天気はピーカン・モードに突入した。それと共に上流正面に「焼岳」が姿を現す。こういう景色も渓流釣りの楽しみの一つである。
●残雪の輝く焼岳●
焼岳に見とれつつ更に釣り上がるが、ココで他の釣り人と遭遇する。上流に向かって釣り上がってくる人に気付かず、前に入ってしまうことは偶然として考えられるが、そうではない。
動きを観察していると、こちらのペースが速くて追いついた結果であったり、その人が釣り上がる人の目の前にワザと入る「頭はね」と呼ばれる行為をしたのでもなさそうだ。どうやら下流に向かって釣り下って来ているようだ。
この釣りをやっていて何度か釣り下って来る人を見かけたことがあるが、そのほとんどがルアー釣りをする人で、この人もそうだった。
この「釣り下り」という行為をする人の神経は、どうにも理解できない。それは、ボクがもし仮にルアーをキャストする立場に変わった場合であってもだ。
元々、渓流でのルールを作ってきたのはルアーやフライが日本に入ってくるよりも、遙か昔からそこで釣りをしてきたエサ釣り師やテンカラ師達だ。だから、たとえ何かの不条理さを感じても「渓流では下流から釣り上がる」という基本ルールは何人であっても従わざるを得ないのだ。
唯一釣り下って構わないのは、下流に大型堰堤や滝のように人が絶対に上がってこられない区間=「一方通行区間」に向かう場合だけで、しかも自分が降りた場所から下流には人が降りられないという条件が必要だ。
釣り下りの弊害は、左側通行の日本の道路で「自分は右側通行の方が走りやすい」という根拠の下、「近くに誰も居ない」のをイイことに車を逆走させ続ければ、やがては必ず正面衝突するのと同じだ。お互いに気持ちの良い釣りがしたければ、絶対に守るべきルールなのだ。
一言言ってやろうと待ち構えていたのだが、その意気込みが事前に届いてしまったのか、そのルアー君は、ボクを避ける方向に歩いて行った。
「避けるくらいなら、最初からするな!」と思いつつ、彼がさっきまで執拗にキャストしていて、何も釣っていなかった地点を見ると、良さげなポイントではないか!。
「どうせ、この日の低活性下では、ルアーを追うようなヤル気のある魚は居るまい。」との判断から、ボクはそのポイントを攻め始めた。
●ルアー君の諦めたポイント●
数投目、アタリを捉えて良型のイワナをゲット。しかし、「ドーだ、参ったかこのヤロー」と振り返ってみるが、ルアー君は退散した後とみえて、既に姿は消えていた。
●結果的に本日最長寸の、27cmのイワナ●
その後は更に釣り上がるが、既にルアー君が叩いていたのに加えて、更なる釣り人を発見したこと(この人はエサ釣り師だったが、ちゃんと釣り上がっていた)で諦めがつき、本日1回目の脱渓を決意した。
●土手にはツクシが顔を出すが、気温は低い●
■情報収集■
今回のエサも前回同様「キンパク」であったが、サイズが小さく2個装着する機会が多くてエサ切れの心配があった。そこで追加のエサを購入するため、いつも高原川釣行でお世話になっている「宝フィッシング」さん(http://www.geocities.jp/takaraf/)に立ち寄り、同時に情報収集をする。
予想通り店長さんから
「3日前から水温が下がって昨日も食いが悪かった。」という情報をもらったので、ボクからは
「上流の蒲田川なら温泉が流れ込むので水温が高いの?」という、質問をする。
聞けばその通りだった。退店後は上流に車を走らせ、車窓から見下ろして気になる部分に仕掛を打ち込む「ラン&ガン」攻撃をしつつ、蒲田川に向かって高原川沿いを遡っていった。
■天然記念物■
途中、とある淵が気になって、河原に降りていこうとした際に、ナニヤラ茂みに気配を感じ、そこででゴソゴソと動くモノを発見した。「すわ、熊かっ!」と身構えたが、それは国指定特別天然記念物である、ニホンカモシカだった。自身3度目の遭遇であるが、それらは全て3年間での出来事なので、「遭遇密度?が濃いような…」との思いから「個体数はそんなに減っていないのでは?」と、調べてみたが、中国地方以西では絶滅状態にあるものの、予想通り、それ以東ではかなり増えているようである。
●ボクを見つめるメスのニホンカモシカ●
カモシカに見送られた先にある淵では、なんとかヤマメをゲットしたこともあって少々粘ってはみたものの、コレも単発だった。
どこも気配が薄く、万策尽きた感があったので、宝フィツシングさんのアドバイスに素直に従い、間のポイントはもう飛ばすことにしてダイレクトに蒲田川へと向かうことを決意した。
●淵での釣果=ヤマメの24cm(当日最長寸)●
■蒲田川へ■
蒲田川は今見という地区で高原川に注ぎ込む、比較的規模の大きな支流の一つだ。ここの特徴は前述したように、川沿いに何カ所もある温泉地から流れ込む温泉水のお陰で、水温が他地区に比べて高く、低水温に強いのが特徴だ。しかし、ココを目指す釣り人=特にルアーやフライをする釣り人が多く、激戦区とも言われている。
●蒲田川名物?地獄谷砂防堰堤(通称:メガネ橋)●
人混みがキライなボクはこれまでこの川を意図的に避けてきたのだが、背に腹は替えられない。しばらく川沿いを走って入渓点を探しているうちに気が付けば中尾橋まで到達したのだが、既に日没の時間が迫っており、躊躇するヒマも無くなりつつあった。
ふと橋の上から見下ろすと、良い感じのポイントを発見した。しかし今、正にそこから釣りを切り上げて帰る人の姿がそこにあった。
「まだ、魚は残っているのだろうか?」と、不安になりつつもその釣り人の様子を確認してみる。「釣りは道具ではない」という人が居るが、偏見を承知で発言させてもらうと、長年釣りをやっていれば、立ち振る舞いや恰好、それに道具立てである程度実力が判ってしまうものだ。幸い?にも名人級ではなさそうだったので、半ば安心しつつ空いたポイントに入ってみることにした。
●典型的な渓魚ポイントが空いた。●
散々叩かれて、魚が警戒しているのかもしれないので、仕掛は今までよりも細いモノを装着し、投入する。すると、案の定、2投目でキレイなアタリが出た。
だが、小さなアマゴだった。
「日本海に注ぐ川なのにアマゴ?」と思うだろうが、漁協関係者の説明では昨年放流?した発眼卵(受精済みの卵)の中に手違いでアマゴの卵が混入していたようである。
「しっかりしてくれよ。」と、言いたくもなるが、もう入ってしまったものは取り返しがつかないので、誰が何を言っても無駄なことだ。
●アマゴのサイズは15cm前後●
最後の約45分間で、合計6匹出たが、どれもが小型でキープ出来そうなモノは1匹も出ず、この日の釣りが終わった。
■頭の引き出しに…■
今回は、水温の低下でボクがいつもメインに狙っている、ヤマメやアマゴの良型に遭遇するチャンスがほとんど無かった。
こんな日には誰もが思いつくであろう、水温の高いエリアに混雑を承知で移るか、思い切ってイワナ専門に狙う方が結果的に楽しめるという経験が再確認されたうえでボクの、頭の中の引き出しに仕舞い込まれたのだが、反面、「玉砕覚悟で目的の魚を狙い続けていれば、もしかして…。」と、頭のどこかでチラついてしまうのも釣り師の性だ。
ボクの好きなギタリストである、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの曲に「PRIDE & JOY」というのがあるが、それは「非常に大事にしている人[もの]」という意味らしい。ボクにとっての釣りは、正しくそうであるが、釣りは(そんな英語があるのかどうかは判らないが)「PRIDE OR JOY」でもあるのだ。
「ひたすら本命の良型魚を求め続ける」=「プライド(PRIDE)をとるか?」、「そこそこサイズに妥協し、安定した釣果を得る」=「楽しみ(JOY)をとるか?」…。勿論、両方成立するのが最高だが、機会はそう多くはない。だが、こうやって葛藤するのも、「実は釣りの楽しさなのだ。」と、ボクは肯定的に捉えている。
「嗚呼、罪深きかな釣りという趣味は…。」ということだ。
●蒲田川上流方向に望む山々●