■行きそびれていた高原川■
本格的に渓流釣りに取り組んで4年目のシーズンが始まっている。始めたばかりの頃は3月の解禁からスタートしていたのだが、サビ(越冬状態)の消えたコンディションの良い状態の渓魚が釣りたいことから、水温の低い3月はパスするようになり、いつしか自身のスタートは4月になっていた。
ボクの場合はここ数年来、4月に入って最初に入る川は、釣れだしの早い川として知られている高原川に向かうことをパターンとしていた。そのために昨年までの2年間は年券を購入していたのだが、考えてみると元を取るまでには通っておらず、それに加えて昨年はヤマメが不調とあって一考の余地があった。また、沖釣りに意地になっていたところもあって今年はとうとう年券は購入せずにいた。
ところがである。悪い方の巡り合わせに行ってしまいがちなボクが、年券を購入しなかった年だからこそだろうが、今シーズンは解禁以来、ヤマメが好調という噂が流れていた。そのあたりは、いかにもボクらしい展開になっている。今更それに乗っかっても、どうせ乗り遅れだろうが、せめて一度くらいは竿出ししておこうと、ようやく重い腰を上げるに至った。
■葛山堰堤上流■
さてさて、どこから入渓しようかと思ったが、今年は恐らくこの川には一回しか訪れないだろうから、勝手知ったるポイントに入ろうと思い、毎年一度は入る葛山堰堤の上流から釣り上がることにした。
この区間に入り始めて3年が経つが、随分と川筋が変わった。特に最初の区間は砂の堆積が進み、一面が砂浜のようになっている。そのためにポイントのいくつかが潰れ、区間全体の水深も浅くなっている。
「これも山が荒れたせいなのか?」と考えつつ、要所に仕掛けを打ち込んでゆくが、相手にしてくれるのは最近放流された稚魚ばかり。キープサイズが全く出ないままに小一時間が経過していく。
■風光明媚■
過去に良い思いをしたポイントはほとんど条件が変わってしまって、稚魚以外の反応はなく、「もしかして今日はキープサイズはゼロかも?」という、予感が走る。それでもここ高原川の河原から見る景色は風光明媚という言葉がピッタリと当てはまるので、気分がイイ。
晴れた日には冠雪した焼岳が正面に見え、ガスがかかり気味になれば今度は周囲の山々が水墨画のように見えるのだ。
■ようやくのヤマメ■
「この区間はもうダメかも?」という念に支配され、早めに退渓して、「他の区間に走ろうか?」とも考えたが、過去の実績ポイントが目前に見えたので、「ここがダメなら…。」との思いで一通りの攻めを展開する。
このポイントには瀬から落ちてくる流筋が浅い淵(以前はもう少し深かったが…)に流れ込み、条件は整っている。淵尻には適度に人頭大の石が散らばり、それが隠れ場所になってヤマメがエサをとり易い環境だ。水深があまりないので、晴天時には厳しそうな感じがするが、幸いにも当日は小雨模様であるから期待が持てそうだった。
まずは基本の下流側から。何とその一投目、淵尻の最後尾、それも仕掛けの流し終わりに、いきなりのアタリが目印に出た。あまり気合いが入っていなかったせいか、それまでチビを掛け続けていた仕掛けがそのままだったせいか、はたまた竿と腕が伸びきった辺りでアタったせいか、チモト切れ(ハリの結び目のすぐ上で切れること)でバラしてしまう。
慌てて仕掛け全部を念のために交換して、投入を再開する。再開後は食いの渋い状態が続いたが、朝一よりも雨量の増し始めると、スイッチが入ったようで、アタリが連続し始める。
しかし、まだアタリは小さく、掛け損ねやハリ外れをやらかして、それまでの稚魚とは違う手応えがあっても、なかなか取り込みまでには至らない。
目先を変えるためにクロカワムシとミミズ、そしてブドウ虫やヒラタと何度かエサローテーションをさせた末に、ようやく当日一号が受け玉に収まった。
このポイントで腰を据えて釣る内に何となく傾向が見えてきた。つまり、稚魚サイズが反応する位置にはマトモサイズが居ないということであり、稚魚サイズはヒラタに対して特に敏感に反応するということである。そこで最初にヒラタを使って、稚魚のたまり場を見つけたらそこは省き、地形から見れば、そこにはヤマメが着いているはずなのに、実際の反応が鈍ければミミズとクロカワムシをローテーションさせてじっくり釣るというパターンを組んでみた。
これが当たってポツポツとゲット数が増えてゆく。
■釣り下るルアーマン■
同じポイントでは結構アタリはあったのだが、初期のハリ外れや掛け損ね等がたたって、結局ゲット数は5匹にとどまった。
それでも当日の展開から考えると、上出来な釣果に満足し、次なるポイントへと向かうため上流方向へ目をやると、ルアーマン2人の姿が目に入った。盛んキャストしているようだが、しばらく経つとこちらの存在に気付いたようだ。
どう見ても釣り下りであり、ルール違反だ。他人のレポートではフライやエサ釣りの人も居るということだが、ボクが渓流に入り始めて以来、何度か出会った明らかなマナー違反の釣り人全てがルアーマンだった。あまりの確率に、ボクには渓流でのルアー釣り経験はないが、「この釣りは釣り下った方が釣り易いのか?」と思うほどだ。
以前にも書いたが、日本の渓流釣りは、元々はエサ釣りとテンカラ釣りの人達が始めた釣りであり、後から来た人が、元々そこに存在するルールに従うのは当然だと思う。これまた書くのは二度目だが、「左側通行の日本の道路で、自分が左ハンドルの車に乗っているからと言って右側を走行すれば、正面衝突は避けられない。」ということだ。(勿論、ボクが見ていない他タイプの釣りを含めて”釣り下り行為”をする人全てにおいて同様の話だ。)
人気河川だけに人が多いのは仕方がないし、何も独占しようとなど思ってはいない。極端な”頭はね”と呼ばれる、直前に入る行為以外であれば、河川上で攻めるポイントが重複するのは仕方がないことだと思う。だから、下から釣り上がってくるだろう釣り人と適度な距離を保って入渓し、そこから釣り上がるという基本ルールを守って欲しい。ただただそれだけだ。
実際にはルールを守っているルアーマンも多いことだろうから、釣り上って渓魚を得るのに高度な技術が必要とは思えないが、もしそれが必要であるのならば、技術を磨きながらチャレンジして欲しいものだ。
で、その二人、こちらに気付いてからは、元来た方向へと慌てて戻っていった。
■釣り残し■
これから先は、ルアーマン二人が盛んにキャストし終わったポイントばかりになるが、今更戻ろうにも先に進んだ方が脱渓点に近いので、かまわず釣り上がってゆく。
次に目に入ったのは、割に傾斜がきつく、流れも速いポイントだった。
まず、下流側の淵尻(と言っても淵と呼べるほどの水深はないが)部分の石裏で目印がアタリを捉えた。流れが速いので多少手こずったが、体高のあるヤマメを無事に取り込む。
結局、この区間では3匹のヤマメを追加した。ルアーとエサでは反応する魚が違うのかも知れないが、釣り残しからの3匹に気を良くし、これで以後の攻めに自信をもって望むことができるようになった。
その2へ続く
本格的に渓流釣りに取り組んで4年目のシーズンが始まっている。始めたばかりの頃は3月の解禁からスタートしていたのだが、サビ(越冬状態)の消えたコンディションの良い状態の渓魚が釣りたいことから、水温の低い3月はパスするようになり、いつしか自身のスタートは4月になっていた。
ボクの場合はここ数年来、4月に入って最初に入る川は、釣れだしの早い川として知られている高原川に向かうことをパターンとしていた。そのために昨年までの2年間は年券を購入していたのだが、考えてみると元を取るまでには通っておらず、それに加えて昨年はヤマメが不調とあって一考の余地があった。また、沖釣りに意地になっていたところもあって今年はとうとう年券は購入せずにいた。
ところがである。悪い方の巡り合わせに行ってしまいがちなボクが、年券を購入しなかった年だからこそだろうが、今シーズンは解禁以来、ヤマメが好調という噂が流れていた。そのあたりは、いかにもボクらしい展開になっている。今更それに乗っかっても、どうせ乗り遅れだろうが、せめて一度くらいは竿出ししておこうと、ようやく重い腰を上げるに至った。
■葛山堰堤上流■
さてさて、どこから入渓しようかと思ったが、今年は恐らくこの川には一回しか訪れないだろうから、勝手知ったるポイントに入ろうと思い、毎年一度は入る葛山堰堤の上流から釣り上がることにした。
この区間に入り始めて3年が経つが、随分と川筋が変わった。特に最初の区間は砂の堆積が進み、一面が砂浜のようになっている。そのためにポイントのいくつかが潰れ、区間全体の水深も浅くなっている。
●区間の始めにはポイントは少ない●
●河原に残る足跡=4本爪は犬科だそうだが、狸にしてはデカ過ぎる●
「これも山が荒れたせいなのか?」と考えつつ、要所に仕掛けを打ち込んでゆくが、相手にしてくれるのは最近放流された稚魚ばかり。キープサイズが全く出ないままに小一時間が経過していく。
●15cmが精一杯●
■風光明媚■
過去に良い思いをしたポイントはほとんど条件が変わってしまって、稚魚以外の反応はなく、「もしかして今日はキープサイズはゼロかも?」という、予感が走る。それでもここ高原川の河原から見る景色は風光明媚という言葉がピッタリと当てはまるので、気分がイイ。
晴れた日には冠雪した焼岳が正面に見え、ガスがかかり気味になれば今度は周囲の山々が水墨画のように見えるのだ。
●当日は水墨画の世界●
■ようやくのヤマメ■
「この区間はもうダメかも?」という念に支配され、早めに退渓して、「他の区間に走ろうか?」とも考えたが、過去の実績ポイントが目前に見えたので、「ここがダメなら…。」との思いで一通りの攻めを展開する。
このポイントには瀬から落ちてくる流筋が浅い淵(以前はもう少し深かったが…)に流れ込み、条件は整っている。淵尻には適度に人頭大の石が散らばり、それが隠れ場所になってヤマメがエサをとり易い環境だ。水深があまりないので、晴天時には厳しそうな感じがするが、幸いにも当日は小雨模様であるから期待が持てそうだった。
●過去にも実績があるポイント●
まずは基本の下流側から。何とその一投目、淵尻の最後尾、それも仕掛けの流し終わりに、いきなりのアタリが目印に出た。あまり気合いが入っていなかったせいか、それまでチビを掛け続けていた仕掛けがそのままだったせいか、はたまた竿と腕が伸びきった辺りでアタったせいか、チモト切れ(ハリの結び目のすぐ上で切れること)でバラしてしまう。
慌てて仕掛け全部を念のために交換して、投入を再開する。再開後は食いの渋い状態が続いたが、朝一よりも雨量の増し始めると、スイッチが入ったようで、アタリが連続し始める。
しかし、まだアタリは小さく、掛け損ねやハリ外れをやらかして、それまでの稚魚とは違う手応えがあっても、なかなか取り込みまでには至らない。
目先を変えるためにクロカワムシとミミズ、そしてブドウ虫やヒラタと何度かエサローテーションをさせた末に、ようやく当日一号が受け玉に収まった。
●高原川らしい体高のあるヤマメ(25cm級)●
このポイントで腰を据えて釣る内に何となく傾向が見えてきた。つまり、稚魚サイズが反応する位置にはマトモサイズが居ないということであり、稚魚サイズはヒラタに対して特に敏感に反応するということである。そこで最初にヒラタを使って、稚魚のたまり場を見つけたらそこは省き、地形から見れば、そこにはヤマメが着いているはずなのに、実際の反応が鈍ければミミズとクロカワムシをローテーションさせてじっくり釣るというパターンを組んでみた。
これが当たってポツポツとゲット数が増えてゆく。
●先ほどと同寸●
●ヤマメよりも小型だが、イワナも登場●
●アタリの多かったミミズ(キヂ)●
■釣り下るルアーマン■
同じポイントでは結構アタリはあったのだが、初期のハリ外れや掛け損ね等がたたって、結局ゲット数は5匹にとどまった。
それでも当日の展開から考えると、上出来な釣果に満足し、次なるポイントへと向かうため上流方向へ目をやると、ルアーマン2人の姿が目に入った。盛んキャストしているようだが、しばらく経つとこちらの存在に気付いたようだ。
どう見ても釣り下りであり、ルール違反だ。他人のレポートではフライやエサ釣りの人も居るということだが、ボクが渓流に入り始めて以来、何度か出会った明らかなマナー違反の釣り人全てがルアーマンだった。あまりの確率に、ボクには渓流でのルアー釣り経験はないが、「この釣りは釣り下った方が釣り易いのか?」と思うほどだ。
以前にも書いたが、日本の渓流釣りは、元々はエサ釣りとテンカラ釣りの人達が始めた釣りであり、後から来た人が、元々そこに存在するルールに従うのは当然だと思う。これまた書くのは二度目だが、「左側通行の日本の道路で、自分が左ハンドルの車に乗っているからと言って右側を走行すれば、正面衝突は避けられない。」ということだ。(勿論、ボクが見ていない他タイプの釣りを含めて”釣り下り行為”をする人全てにおいて同様の話だ。)
人気河川だけに人が多いのは仕方がないし、何も独占しようとなど思ってはいない。極端な”頭はね”と呼ばれる、直前に入る行為以外であれば、河川上で攻めるポイントが重複するのは仕方がないことだと思う。だから、下から釣り上がってくるだろう釣り人と適度な距離を保って入渓し、そこから釣り上がるという基本ルールを守って欲しい。ただただそれだけだ。
実際にはルールを守っているルアーマンも多いことだろうから、釣り上って渓魚を得るのに高度な技術が必要とは思えないが、もしそれが必要であるのならば、技術を磨きながらチャレンジして欲しいものだ。
●釣り下ってきた二人●
で、その二人、こちらに気付いてからは、元来た方向へと慌てて戻っていった。
■釣り残し■
これから先は、ルアーマン二人が盛んにキャストし終わったポイントばかりになるが、今更戻ろうにも先に進んだ方が脱渓点に近いので、かまわず釣り上がってゆく。
次に目に入ったのは、割に傾斜がきつく、流れも速いポイントだった。
●二人のルアーマンが、さんざん攻めていたポイント●
まず、下流側の淵尻(と言っても淵と呼べるほどの水深はないが)部分の石裏で目印がアタリを捉えた。流れが速いので多少手こずったが、体高のあるヤマメを無事に取り込む。
●またもや25cm級●
結局、この区間では3匹のヤマメを追加した。ルアーとエサでは反応する魚が違うのかも知れないが、釣り残しからの3匹に気を良くし、これで以後の攻めに自信をもって望むことができるようになった。
その2へ続く