■選択ミス■
約20分の航海で、海祐丸さんは最初のポイントに到着した。道具類をセッティングする際、一番に迷うのは、小魚を掛けるためのサビキ仕掛けの選択になると思う。この釣りのベテランの人達であれば、なんと言うのかは判らないが、ボクの場合だと、こういった際にはシンプルなモノから使い始めることが多い。よって、最初に選んだ仕掛けはハリのきらめきだけで小魚を誘う、「カラバリ」タイプの方で、それに4号のハリスが結ばれたモノだった。因みに、結果的にだが、この日は終始カラバリが効果を落とすことはなかったし、”ブチ切られ”の後、ハリスを6号にアップしても、当日のエサになる小魚=ベイトであるウルメイワシの掛かり具合に大きな変化はなかった。
船長の指示で50号のオモリを装着して投入を開始する。
船長が現時点でベイトが水深何mを泳ぎ、底までの水深がいくらかを刻々とアナウンスしてくれるので、それをイメージしながら仕掛けを落とし込むことが大切になる。
ボクの場合は、とりあえずベイトの泳ぐ層の5m手前まで急速降下させ、そこからスプール回転を指で制御し、幾分セーブしながら落とし込んでみることにした。すると、途端にウルメイワシがハリに掛かったようだが、そのアタリは竿を介して手に伝わる感覚ではなく、非常にとり辛い「何となく」というモノだった。
もしその仕掛けにウルメイワシが着いていなかった場合は以降の、一切の作業が無駄になるので、竿先の動きやリールの回転の変化=落とし込んでゆく仕掛けの落下スピードの変化を読み取ろうと神経を集中させてゆくが、こんな状態での投入では自信を持った攻めが展開できない。
しかし、打って変わって、船首に陣取った同船者には、ボクのように苦労をしてウルメイワシを掛けている様子はなかった。
その苦労?を船長に訴えると、答えがすぐに返ってきた。どうやら持ち込んだ竿の選択ミスが悪影響を与えているとの指摘だった。
ボクは当日、自分の持っているマダイ竿の中で、一番しなやかなモノを持ち込んでいた。全長は3.3mのムーチング(5:5調子)竿だが、計量なので、手持ち操作でも不自由がないモデルであるし、実際このクラスを、例えば京都府経ヶ岬周辺のヒラメ釣りでは流用している釣り人も多いので、専用ではないものの、選択に問題はないと思っていた。
しかし、同じ小魚を本命に食わせる釣りであっても、経ヶ岬周辺ではあらかじめエサとして船内にある小魚をハリに刺して釣るスタイルなので、竿の調子を、本命を釣ることのみに絞り込むことができる。これに対してタテ釣りでは、まずはエサの小魚を海中で掛けることを優先しないと当然ながら後に続くモノはないので、それらへの対処も必要になる。特にシーズン初期の場合、エサになる小魚も小型であり、それがイワシ類となると、更にアタリが小さく、掛かった後の引きも弱いので、それを捕らえる性能が竿に求められるのだ。
その点、当日ボクが持ち込んだムーチング系の竿は、小アタリと掛かった後の、魚の動きを吸収するので、「やり辛いことこの上ない」状態だったのだ。約一時間の苦労の末、船内備品の竿に交換することで解決をみたが、当日一日での印象では、エサになる小魚と本命魚が大型化し、青物の回遊も盛んになる中期以降は別として、狙いがヒラメやマダイ中心の時期であれば、ヒラメ専用竿の他、7:3調子で鋭敏なソリッド穂先等を搭載している竿=例えば和歌山県加太でのビニール疑似餌で使用するマダイ竿や、三重県伊勢湾でのウタセエビで狙う際のマダイ竿もぴったりな選択に思えた。
■アタリの違い■
船長に最適な竿を選んでもらった結果、以降はウルメイワシのアタリを順調に捉えることが出来るようになった。そして、これが安定した攻めに繋がって「後は結果が伴えば」という状態になった。
要領が何となく掴め、動きがスムーズになった頃、待望の前アタリがボクの竿に(と言っても借り物だが…)前アタリを捉えた。
因みに、ウルメイワシがハリに着いた状態で、仕掛けを底まで送り込むと、近くに魚食魚が近づくと怯えて逃げ惑う振動が竿に伝わる。これが前アタリで、そこから一気に食い込んで走るのは青物系統で、一度押さえ込んでから本アタリと共に竿が大きく曲がり込むのがヒラメ系統、マダイはそれらの中間といった感じだ。
待望の一匹目は、前アタリの後に一度は疾走するが、その距離は短く、予想通りの小型マダイだった。
続いての魚は、本アタリの後に全く走らないので、「根魚か?」との予想をしたが、その通りのガシラ(カサゴ)が続く。
■ようやくの本命■
この釣りは、アンカーを掛けずに魚礁周りを流し、活性の高い魚を獲り、食いが落ちると次の魚礁へと移動を繰り返す。従って仕掛けの上げ下げは頻繁で、結構忙しい。
そんな中にあって、「来る者は拒まず」の姿勢で対処していたが、とは言うものの、大本命は高級魚のヒラメであった。こちらとしても、それを狙っているつもりだが、なかなかアタってくれない。
いつしか陽も高くなり、エサとなる小魚のアタリも次第に渋くなって、一度に掛かるウルメイワシの数が減ってくる。すると、それまで感じていた「エサが着いている感覚」が希薄になって、不安に思うシーンが増えてくる。
そんな中、底に沈めたウルメイワシの動きに神経を集中していたが、久方ぶり前~本アタリと続く展開があり、十分に送り込んで食い込ませた後にアワセを入れると、竿が大きく絞り込まれていった。
引きの具合からしてヒラメには間違いないようだが、そう強くない。ただし、けっこうな重みがあるので、心の内ではそこそこのサイズを期待していた。そして無事に取り込んだのだが、ヒラメのサイズは大きくはないのに重いハズである。何と、ソイとのダブルだったのだ。
続いて青物などを追加する。
■釣果の差■
昼近くになると、ボクの仕掛に掛かるウルメイワシの数は更に減り、同時にごく希にしか本命魚らしきアタリが来ないようになった。だが、反対に不思議と前方の同船者には順調にアタリが続いているようだ。
「何が違うのか?」と思い、問い合わせてみても、操作その他に関してはそんなに違いはないように思え、納得できないままに時間だけが過ぎていった。特にヒラメの釣果は歴然とした差があって、頭を抱えていたのだが、終了30分前になって、ようやく原因が判明した。その違いはリールのセッテイングにあったのだ。
ボクの使用していたリールは、超スムーズな回転性能を誇るモデルであり、仕掛けが落ちてゆくスピードはものすごく速い。普段からオキアミエサを使用する機会が多いボクは、その経験上から、「仕掛けを落とすスピードアップは、手返しの早さ」とばかりに、リールはフルスピ-ドで回るように調整し、過回転で起こるバックラッシュには自分の指で押さえる=サミングすることで対策していた。しかし、前方の同船者は初めからスプールの調整つまみを絞って、回転を抑制していたのだ。この差が釣果の差となっていたようだ。
もう少し詳しく書くと…。イワシとは漢字で魚偏に弱いと書かれるように大変弱い魚だ。そのイワシ類の一つである、ウルメイワシがハリに掛かった後、猛スピードで海底近くまで強制的に落とされることによって、水圧の変化やハリの刺さった位置からの出血によって瀕死の状態、もしくは既に死んでいる状態になっていたようだ。
釣れたタイミングを冷静に振り返ってみれば、思い当たるフシがあった。朝早く、たくさんのウルメイワシがサビキに掛かっていた頃は、ウルメイワシ自体が抵抗になって、落ちるスピードが抑制されていたし、ハリに掛かる数が減った日中であっても、実際に本命魚が食ってきたのは、ウルメイワシの回遊層と本命の居る層との差が少なく、落ちる距離が短かかった時のことだったようだ。逆に食わなかったタイミングでは、仕掛けが底に着いてから先の、ウルメイワシの動きが伝わらないことが多かった。
また、ソイやガシラといった魚は死んだエサも食うのに対して、ヒラメは死んでしまって動きの無くなったエサには、ほとんど口を使わない習性がある。従って、「底でウルメイワシが活きていたか、死んでいたか」の差が歴然と出たのだと思う。
しかし、気付いた頃にはもう遅かった。残りの30分間は、ウルメイワシの乗り自体が悪くなって釣りにはならず、何となく不完全燃焼のままで納竿時間を迎えることになった。
色々と迷いがあってモタついたが、釣果を確認すると、そこそこの土産量にはなっていた。更には、同時期にオキアミエサで狙った場合には、お目に掛かることのできない魚も混じっていたことも嬉しい。
ハリスの短いサビキ仕掛けと活きエサを使った釣りだけに、掛かった瞬間に猛ダッシュされ、得体の知れない相手にブチ切られることが2回あった。こういった「思うようにいかない」部分のある釣りはチャレンジのしがいもあるし、工夫のしがいもある。そして、更にはこちらの闘争心にも火が着く。再チャレンジも間近に迫っているが、次回の釣行こそは”大ヒラメゲット”といきたいところだ。
約20分の航海で、海祐丸さんは最初のポイントに到着した。道具類をセッティングする際、一番に迷うのは、小魚を掛けるためのサビキ仕掛けの選択になると思う。この釣りのベテランの人達であれば、なんと言うのかは判らないが、ボクの場合だと、こういった際にはシンプルなモノから使い始めることが多い。よって、最初に選んだ仕掛けはハリのきらめきだけで小魚を誘う、「カラバリ」タイプの方で、それに4号のハリスが結ばれたモノだった。因みに、結果的にだが、この日は終始カラバリが効果を落とすことはなかったし、”ブチ切られ”の後、ハリスを6号にアップしても、当日のエサになる小魚=ベイトであるウルメイワシの掛かり具合に大きな変化はなかった。
●カラバリ・タイプ(左)と、ハゲ皮付き・タイプ(右)●
船長の指示で50号のオモリを装着して投入を開始する。
船長が現時点でベイトが水深何mを泳ぎ、底までの水深がいくらかを刻々とアナウンスしてくれるので、それをイメージしながら仕掛けを落とし込むことが大切になる。
ボクの場合は、とりあえずベイトの泳ぐ層の5m手前まで急速降下させ、そこからスプール回転を指で制御し、幾分セーブしながら落とし込んでみることにした。すると、途端にウルメイワシがハリに掛かったようだが、そのアタリは竿を介して手に伝わる感覚ではなく、非常にとり辛い「何となく」というモノだった。
もしその仕掛けにウルメイワシが着いていなかった場合は以降の、一切の作業が無駄になるので、竿先の動きやリールの回転の変化=落とし込んでゆく仕掛けの落下スピードの変化を読み取ろうと神経を集中させてゆくが、こんな状態での投入では自信を持った攻めが展開できない。
しかし、打って変わって、船首に陣取った同船者には、ボクのように苦労をしてウルメイワシを掛けている様子はなかった。
その苦労?を船長に訴えると、答えがすぐに返ってきた。どうやら持ち込んだ竿の選択ミスが悪影響を与えているとの指摘だった。
ボクは当日、自分の持っているマダイ竿の中で、一番しなやかなモノを持ち込んでいた。全長は3.3mのムーチング(5:5調子)竿だが、計量なので、手持ち操作でも不自由がないモデルであるし、実際このクラスを、例えば京都府経ヶ岬周辺のヒラメ釣りでは流用している釣り人も多いので、専用ではないものの、選択に問題はないと思っていた。
しかし、同じ小魚を本命に食わせる釣りであっても、経ヶ岬周辺ではあらかじめエサとして船内にある小魚をハリに刺して釣るスタイルなので、竿の調子を、本命を釣ることのみに絞り込むことができる。これに対してタテ釣りでは、まずはエサの小魚を海中で掛けることを優先しないと当然ながら後に続くモノはないので、それらへの対処も必要になる。特にシーズン初期の場合、エサになる小魚も小型であり、それがイワシ類となると、更にアタリが小さく、掛かった後の引きも弱いので、それを捕らえる性能が竿に求められるのだ。
その点、当日ボクが持ち込んだムーチング系の竿は、小アタリと掛かった後の、魚の動きを吸収するので、「やり辛いことこの上ない」状態だったのだ。約一時間の苦労の末、船内備品の竿に交換することで解決をみたが、当日一日での印象では、エサになる小魚と本命魚が大型化し、青物の回遊も盛んになる中期以降は別として、狙いがヒラメやマダイ中心の時期であれば、ヒラメ専用竿の他、7:3調子で鋭敏なソリッド穂先等を搭載している竿=例えば和歌山県加太でのビニール疑似餌で使用するマダイ竿や、三重県伊勢湾でのウタセエビで狙う際のマダイ竿もぴったりな選択に思えた。
■アタリの違い■
船長に最適な竿を選んでもらった結果、以降はウルメイワシのアタリを順調に捉えることが出来るようになった。そして、これが安定した攻めに繋がって「後は結果が伴えば」という状態になった。
要領が何となく掴め、動きがスムーズになった頃、待望の前アタリがボクの竿に(と言っても借り物だが…)前アタリを捉えた。
因みに、ウルメイワシがハリに着いた状態で、仕掛けを底まで送り込むと、近くに魚食魚が近づくと怯えて逃げ惑う振動が竿に伝わる。これが前アタリで、そこから一気に食い込んで走るのは青物系統で、一度押さえ込んでから本アタリと共に竿が大きく曲がり込むのがヒラメ系統、マダイはそれらの中間といった感じだ。
待望の一匹目は、前アタリの後に一度は疾走するが、その距離は短く、予想通りの小型マダイだった。
●タテ釣りで初めての魚●
続いての魚は、本アタリの後に全く走らないので、「根魚か?」との予想をしたが、その通りのガシラ(カサゴ)が続く。
●大きなガシラ(カサゴ)●
■ようやくの本命■
この釣りは、アンカーを掛けずに魚礁周りを流し、活性の高い魚を獲り、食いが落ちると次の魚礁へと移動を繰り返す。従って仕掛けの上げ下げは頻繁で、結構忙しい。
そんな中にあって、「来る者は拒まず」の姿勢で対処していたが、とは言うものの、大本命は高級魚のヒラメであった。こちらとしても、それを狙っているつもりだが、なかなかアタってくれない。
いつしか陽も高くなり、エサとなる小魚のアタリも次第に渋くなって、一度に掛かるウルメイワシの数が減ってくる。すると、それまで感じていた「エサが着いている感覚」が希薄になって、不安に思うシーンが増えてくる。
そんな中、底に沈めたウルメイワシの動きに神経を集中していたが、久方ぶり前~本アタリと続く展開があり、十分に送り込んで食い込ませた後にアワセを入れると、竿が大きく絞り込まれていった。
●心地良い竿のしなり●
引きの具合からしてヒラメには間違いないようだが、そう強くない。ただし、けっこうな重みがあるので、心の内ではそこそこのサイズを期待していた。そして無事に取り込んだのだが、ヒラメのサイズは大きくはないのに重いハズである。何と、ソイとのダブルだったのだ。
●ヒラメ&ソイのWゲット●
続いて青物などを追加する。
●58cmのハマチ●
●40cm近いソイ●
■釣果の差■
昼近くになると、ボクの仕掛に掛かるウルメイワシの数は更に減り、同時にごく希にしか本命魚らしきアタリが来ないようになった。だが、反対に不思議と前方の同船者には順調にアタリが続いているようだ。
「何が違うのか?」と思い、問い合わせてみても、操作その他に関してはそんなに違いはないように思え、納得できないままに時間だけが過ぎていった。特にヒラメの釣果は歴然とした差があって、頭を抱えていたのだが、終了30分前になって、ようやく原因が判明した。その違いはリールのセッテイングにあったのだ。
ボクの使用していたリールは、超スムーズな回転性能を誇るモデルであり、仕掛けが落ちてゆくスピードはものすごく速い。普段からオキアミエサを使用する機会が多いボクは、その経験上から、「仕掛けを落とすスピードアップは、手返しの早さ」とばかりに、リールはフルスピ-ドで回るように調整し、過回転で起こるバックラッシュには自分の指で押さえる=サミングすることで対策していた。しかし、前方の同船者は初めからスプールの調整つまみを絞って、回転を抑制していたのだ。この差が釣果の差となっていたようだ。
もう少し詳しく書くと…。イワシとは漢字で魚偏に弱いと書かれるように大変弱い魚だ。そのイワシ類の一つである、ウルメイワシがハリに掛かった後、猛スピードで海底近くまで強制的に落とされることによって、水圧の変化やハリの刺さった位置からの出血によって瀕死の状態、もしくは既に死んでいる状態になっていたようだ。
釣れたタイミングを冷静に振り返ってみれば、思い当たるフシがあった。朝早く、たくさんのウルメイワシがサビキに掛かっていた頃は、ウルメイワシ自体が抵抗になって、落ちるスピードが抑制されていたし、ハリに掛かる数が減った日中であっても、実際に本命魚が食ってきたのは、ウルメイワシの回遊層と本命の居る層との差が少なく、落ちる距離が短かかった時のことだったようだ。逆に食わなかったタイミングでは、仕掛けが底に着いてから先の、ウルメイワシの動きが伝わらないことが多かった。
また、ソイやガシラといった魚は死んだエサも食うのに対して、ヒラメは死んでしまって動きの無くなったエサには、ほとんど口を使わない習性がある。従って、「底でウルメイワシが活きていたか、死んでいたか」の差が歴然と出たのだと思う。
しかし、気付いた頃にはもう遅かった。残りの30分間は、ウルメイワシの乗り自体が悪くなって釣りにはならず、何となく不完全燃焼のままで納竿時間を迎えることになった。
色々と迷いがあってモタついたが、釣果を確認すると、そこそこの土産量にはなっていた。更には、同時期にオキアミエサで狙った場合には、お目に掛かることのできない魚も混じっていたことも嬉しい。
ハリスの短いサビキ仕掛けと活きエサを使った釣りだけに、掛かった瞬間に猛ダッシュされ、得体の知れない相手にブチ切られることが2回あった。こういった「思うようにいかない」部分のある釣りはチャレンジのしがいもあるし、工夫のしがいもある。そして、更にはこちらの闘争心にも火が着く。再チャレンジも間近に迫っているが、次回の釣行こそは”大ヒラメゲット”といきたいところだ。
●他左向きがボクの釣果(但し、スズキはもらい物)●