■青物の代表■
日本の青物を代表し、出世魚を代表する魚でもあるブリ。その出世魚としての呼び名は、関西では釣りの対象魚となる小さい方からツバス(40cmまで) → ハマチ (60cmまで)→ メジロ (80cmまで)→ ブリ(80cm以上)と呼び、関東ではワカシ → イナダ → ワラサ → ブリと呼ぶ。他の地域でも呼び名は様々だが、四国ではメジロ(ワラサ)サイズに相当する呼び名がないので、「ハマチが釣れている」との情報が流れていて「な~んだハマチかよ」と思っても、実際は70cm級だと言うこともあるので注意が必要だ。
スプリンター系の魚体は砲弾型で、色彩も背が青、腹は白銀で、その中間に黄色のラインがあって、F1や耐久レース、あるいはバイクレースでお馴染み?の「ロスマンズカラー」のようだ。ボクにとっては少年時代に釣魚図鑑を眺め、あこがれていた魚の一つであった。だから、初めてこの魚を釣った際に、釣りたての色彩を見て「なんてカッコイイ魚なんだろう。」と感動したことを思い出す。
ボクが釣りを始めた少年時代は、現在ほど釣れている魚ではなかった。一説によるとこれは養殖業の衰退が関わっているという。
養殖と言っても、ブリ類は卵からふ化させる完全養殖ではなく、モジャコと呼ばれる稚魚を採取して大きく育てる方法がとられているので、本来は畜養と呼んだ方が正しいのかも知れない。そしてこの養殖業は市価の下落と反比例して上昇するコストと、赤潮などの水質汚染による大量死の影響で一時ほどの勢いは既に無くなっている。その結果獲られるモジャコの量が減って天然の資源量が増えたことが、釣り場への回遊が増えた経緯だと言われている。
■ハマチ~ブリの釣り味■
この魚(ブリ類)へのアプローチの中で、一番簡単な方法が、船(沖)釣りで、サイズが小さいほど数が出るし、大きくなるほど難易度が増すのは言うまでもないことだろう。実際に福井県鷹巣沖の船釣りでは、毎年のように晩秋になるとハマチクラスの三桁釣果(一船単位)が続くが、メジロクラス以上だとそんな釣果は起こりえない。そのことでサイズ別の難易度の違いが証明できると思う。
ハマチとその下のツバスを含めたクラスは、居る場所でさえ竿を出せれば、ほぼ間違いなく食ってくる。本来、ブリ類はフィッシュイーターである一面を持っているが、このクラスだと、オキアミへの反応が良い状態である確率がかなり高いから、マキエサを切らさず、その遊泳層を攻めることさえ出来れば、それこそ8号以上の太いハリスであっても、短いハリスの胴付き仕掛けでもお構いなしで食ってくるし、サビキ仕掛の類である疑似餌への反応も良い。だから、ある意味アジやサバと同じような感覚で釣れてしまう魚だ。(もちろん標準的な活性に於いて)
この傾向は磯からグレなどの上物釣りの外道で釣れる時も変わらず、この魚が欲しければ、回遊を感じたら如何にオキアミのマキエサを切らさずに、自身が立つ磯の周囲に足止めするかが数を釣る鍵となる。
その上のメジロクラスだと、少し話が変わってくる。まずハリスの短い胴付き仕掛では釣果が得辛くなり、船の直下を狙う場合は天秤ズボ仕掛の方が釣果が伸びるようになる。そして更には、直下よりも仕掛が潮下方向に自然に流れる完全フカセ釣りの方が釣果が伸びることが多くなってくる。その原因は、サイズが大きいほど生存競争を勝ち抜いた魚であるために、警戒心がある程度強まっていることと、個体数が減っているから我先に競い合って無闇矢鱈にエサをとる必要が無いためだと思われる。また、よりフィッシュイーターの傾向が強まって、小魚を追うために、オキアミへの反応が鈍くなる群れも垣間見られるようになるが、こういった群れの魚は、ジギング(ルアー)や、活きエサを使った「のませ釣り」以外では釣り辛くなる。
そして、更にその上のブリクラスになると、ボクの行動範囲の中ではオキアミのエサで専門に狙うことはなく、メジロクラスに混じって時折ドカンッ!と釣れてくる程度になる。
強引で知られるハマチ~ブリではあるが、上述したように小型であっても太ハリスを気にせず食ってくるから、掛かればガンガンと巻き上げれば良いだけなので、やり取りはかなり単調になる。だが、メジロクラス以上になると、引きとハリス強度のバランスが釣趣的に良くなってくるので、やり取りは、もう少しスリリングなモノになる。ただし、活きエサやジギング(ルアー)で狙う場合は更に太いハリスが使えるから、どうしても単調な「力対力」の展開になる傾向のままではあるが…。
この魚は最も経験を積んでいるであろう、最大のブリクラスになっても「頭の良さ?」をあまり感じない。
例えば、磯の上から釣る場合はもちろんのこと、船から釣る場合であっても頭の良い?魚であれば、海中にある根(上からは見えない大小様々な岩礁)に向かって疾走して岩穴に潜り込んだり、窪みに張り付くといった行動をとる、あるいは岩礁の合間を縫って走ることで危機を回避するのだが、ブリ類は基本的にそのような行動をとらない。一定の層をひたすら全力で突っ走り、下層に岩礁があってもその上を通過する習性があるようだ。
だから釣り人は自分が使用しているハリスに合わせたドラグ設定を行い、あとは相手の動きに合わせて落ち着いたやり取りを心掛ければ獲れる確率は高い。
磯からグレなどを釣る”上物釣り(うわものつり)”の外道で掛かった場合も同様で、根に入ったりしない習性を理解して、一番強烈なファーストランをオープンベイル(スピニングリールの道糸をフリーで放出すること)でかわし、あとは引きに合わせてオープンベイルと、レバー解放(レバーブレキ付きリールの場合)やドラグ調整をすることで相手の引きを凌ぐことができれば、ゲット率は低くない。ボクの磯での記録は82cmだが、これは2号ハリスで釣ったし、釣り友が同寸を1.75号で釣っていることでもそれが理解できるだろう。(どちらも偶然やラッキーといった感じではない。)
「大型であれば、パワーに圧倒される面もあるが、やや単調で、無理な引っ張り合いをしなければゲット率が高い」といったところから判断してみると、釣り味はメジロクラスで10段階の6、ブリクラスで7がボクとしては妥当なところだと思う。(それ以下のクラスは評価外。)
■実釣時のエピソード■
奇しくもマダイと同様のパターンになって申し訳ないが、この魚は寄生虫が入る率が高い魚だ。この寄生虫は「ブリ糸状虫」というのだが、ブリの成長サイクルに合わせて成長→産卵するそうだ。よく目にするのは春以降の水温が上がる時期で、逆に冬場は目立たないが、実のところは常在しているらしく、冬場に発見し辛いのは、その時期に形態が変わっているからだそうだ。
だから、寄生虫が棲み着いているのは「天然の証」と言うべきであり、逆にこれが夏場であっても入っていないのは、発生しないような餌を与えられた「養殖物」と判断した方が良いとも言われている。ただし、この寄生虫はアニサキスとは違って、知らずに生食しても人に一切害を及ぼさないということだから、見た目は兎も角、食べた後に、どうこうなるということはない。
今から、10年以上前、5月中旬にいつもの白石グリで、メジロクラスが入れ食いになったことがあった。サイズ的に、いかにもウマそうで、喜び勇んでの「お持ち帰り」となったのだが、このほとんど全てに数多くの寄生虫が棲み着いていた。ウチのキープ数は2本で、その他はもちろんお裾分けもしていたから、発覚後は近い知り合い平謝りしたことは言うまでもない。
よくよく考えてみると、例えば日本海側の漁師さん達だと12~2月の旬に積極的に狙って獲るが、それ以外の季節は手をつけたがらない。その理由がこの寄生虫であり、これによって市場価値が無くなって「二束三文になる」からだそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/8b/e24aef6cc9d76ac0f6e6fb88fda629ec.jpg)
■ハマチ~ブリの食い味■
「これほどサイズや季節によって評価が変わる魚はいないであろう。」そう思うほど味は変わる。
小さいツバスクラスは時期によって多少の差はあってもほとんど脂が乗っておらず、スカスカなので、料理法は味噌煮などで無理に味を入れる方法がベストだと思う。伝聞によると初夏のツバスは脂が乗っているとも言うが、ボク自身はそんなツバスを釣ったことがないから、真偽のほどは判らない。もっとも、このサイズをボクが狙って釣ることはなく、もし釣れてしまった場合は、ハリを飲み込んで血を噴いている個体以外はキープせずにリリースするようにしているが…。
では、ハマチクラスだとどうなるのか?。
ハマチと言えば、寿司ネタでは定番になっているが、真冬以外でも脂が乗っているのはほとんどの場合で養殖物であって、天然物はこのクラスになっても、普段は脂分が少ない。真冬近くになり、水温が下がればそこそこ脂が乗ってくるし、成長が早い魚だけにこの季節になればハマチと言ってもメジロサイズ近くになってくるので、話が変わってくる。
だが、本当に食って「ウマい」となるのは、個人的な好みかも知れないが、晩秋以降、晩冬までのメジロ~ブリサイズだと思う。この時期は「旬」であることから当たり前の話ではあるが、同時期に釣れる他の青物の中で一、二を争うほどウマくなる。平造りにして食べても良し、鍋や、しゃぶしゃぶで食べても良しで基本的に何の料理で食ってもウマいのだが、中でも一番ウマいと思うのが「カマ」と呼ばれる、エラブタを受ける側の半月状になった部位の塩焼きだ。(思い起こしてもヨダレが出そうだ。)
だが、この一番ウマい季節のメジロ~ブリサイズは市場価値も高い。だから漁師さんが懸命になって追い回すせいか、残念なことにボク自身がこの時期に得た釣果は極僅かだ。
上記から、食い味はハマチクラスであれば冬場のみ10段階の6で、それ以外の季節は評価外。メジロクラス以上は普段が6で、冬場のみが8という評価をつけたい。
■総合評価■
気まぐれな青物の中にあって、ほとんど毎年回遊があり、釣りの対象魚として安定した資源量がある。その結果、昔は考えにくかったが、瀬戸内海でもメジロクラスが“狙って釣れる”ようになっているほどだ。だから、ポピュラーな魚で親しみ易いうえに強烈な引き味で釣り師を楽しませてくれるから、有り難い存在ではある。だが、釣り自体は単調な展開になることが多い。
食味についてもサイズムラ、季節ムラが激しい。そこで、総合評価はハマチクラスは10段階の4.5、メジロクラスであれば6、ブリクラスで7.5としたい。
日本の青物を代表し、出世魚を代表する魚でもあるブリ。その出世魚としての呼び名は、関西では釣りの対象魚となる小さい方からツバス(40cmまで) → ハマチ (60cmまで)→ メジロ (80cmまで)→ ブリ(80cm以上)と呼び、関東ではワカシ → イナダ → ワラサ → ブリと呼ぶ。他の地域でも呼び名は様々だが、四国ではメジロ(ワラサ)サイズに相当する呼び名がないので、「ハマチが釣れている」との情報が流れていて「な~んだハマチかよ」と思っても、実際は70cm級だと言うこともあるので注意が必要だ。
スプリンター系の魚体は砲弾型で、色彩も背が青、腹は白銀で、その中間に黄色のラインがあって、F1や耐久レース、あるいはバイクレースでお馴染み?の「ロスマンズカラー」のようだ。ボクにとっては少年時代に釣魚図鑑を眺め、あこがれていた魚の一つであった。だから、初めてこの魚を釣った際に、釣りたての色彩を見て「なんてカッコイイ魚なんだろう。」と感動したことを思い出す。
ボクが釣りを始めた少年時代は、現在ほど釣れている魚ではなかった。一説によるとこれは養殖業の衰退が関わっているという。
養殖と言っても、ブリ類は卵からふ化させる完全養殖ではなく、モジャコと呼ばれる稚魚を採取して大きく育てる方法がとられているので、本来は畜養と呼んだ方が正しいのかも知れない。そしてこの養殖業は市価の下落と反比例して上昇するコストと、赤潮などの水質汚染による大量死の影響で一時ほどの勢いは既に無くなっている。その結果獲られるモジャコの量が減って天然の資源量が増えたことが、釣り場への回遊が増えた経緯だと言われている。
■ハマチ~ブリの釣り味■
この魚(ブリ類)へのアプローチの中で、一番簡単な方法が、船(沖)釣りで、サイズが小さいほど数が出るし、大きくなるほど難易度が増すのは言うまでもないことだろう。実際に福井県鷹巣沖の船釣りでは、毎年のように晩秋になるとハマチクラスの三桁釣果(一船単位)が続くが、メジロクラス以上だとそんな釣果は起こりえない。そのことでサイズ別の難易度の違いが証明できると思う。
ハマチとその下のツバスを含めたクラスは、居る場所でさえ竿を出せれば、ほぼ間違いなく食ってくる。本来、ブリ類はフィッシュイーターである一面を持っているが、このクラスだと、オキアミへの反応が良い状態である確率がかなり高いから、マキエサを切らさず、その遊泳層を攻めることさえ出来れば、それこそ8号以上の太いハリスであっても、短いハリスの胴付き仕掛けでもお構いなしで食ってくるし、サビキ仕掛の類である疑似餌への反応も良い。だから、ある意味アジやサバと同じような感覚で釣れてしまう魚だ。(もちろん標準的な活性に於いて)
この傾向は磯からグレなどの上物釣りの外道で釣れる時も変わらず、この魚が欲しければ、回遊を感じたら如何にオキアミのマキエサを切らさずに、自身が立つ磯の周囲に足止めするかが数を釣る鍵となる。
その上のメジロクラスだと、少し話が変わってくる。まずハリスの短い胴付き仕掛では釣果が得辛くなり、船の直下を狙う場合は天秤ズボ仕掛の方が釣果が伸びるようになる。そして更には、直下よりも仕掛が潮下方向に自然に流れる完全フカセ釣りの方が釣果が伸びることが多くなってくる。その原因は、サイズが大きいほど生存競争を勝ち抜いた魚であるために、警戒心がある程度強まっていることと、個体数が減っているから我先に競い合って無闇矢鱈にエサをとる必要が無いためだと思われる。また、よりフィッシュイーターの傾向が強まって、小魚を追うために、オキアミへの反応が鈍くなる群れも垣間見られるようになるが、こういった群れの魚は、ジギング(ルアー)や、活きエサを使った「のませ釣り」以外では釣り辛くなる。
そして、更にその上のブリクラスになると、ボクの行動範囲の中ではオキアミのエサで専門に狙うことはなく、メジロクラスに混じって時折ドカンッ!と釣れてくる程度になる。
強引で知られるハマチ~ブリではあるが、上述したように小型であっても太ハリスを気にせず食ってくるから、掛かればガンガンと巻き上げれば良いだけなので、やり取りはかなり単調になる。だが、メジロクラス以上になると、引きとハリス強度のバランスが釣趣的に良くなってくるので、やり取りは、もう少しスリリングなモノになる。ただし、活きエサやジギング(ルアー)で狙う場合は更に太いハリスが使えるから、どうしても単調な「力対力」の展開になる傾向のままではあるが…。
この魚は最も経験を積んでいるであろう、最大のブリクラスになっても「頭の良さ?」をあまり感じない。
例えば、磯の上から釣る場合はもちろんのこと、船から釣る場合であっても頭の良い?魚であれば、海中にある根(上からは見えない大小様々な岩礁)に向かって疾走して岩穴に潜り込んだり、窪みに張り付くといった行動をとる、あるいは岩礁の合間を縫って走ることで危機を回避するのだが、ブリ類は基本的にそのような行動をとらない。一定の層をひたすら全力で突っ走り、下層に岩礁があってもその上を通過する習性があるようだ。
だから釣り人は自分が使用しているハリスに合わせたドラグ設定を行い、あとは相手の動きに合わせて落ち着いたやり取りを心掛ければ獲れる確率は高い。
磯からグレなどを釣る”上物釣り(うわものつり)”の外道で掛かった場合も同様で、根に入ったりしない習性を理解して、一番強烈なファーストランをオープンベイル(スピニングリールの道糸をフリーで放出すること)でかわし、あとは引きに合わせてオープンベイルと、レバー解放(レバーブレキ付きリールの場合)やドラグ調整をすることで相手の引きを凌ぐことができれば、ゲット率は低くない。ボクの磯での記録は82cmだが、これは2号ハリスで釣ったし、釣り友が同寸を1.75号で釣っていることでもそれが理解できるだろう。(どちらも偶然やラッキーといった感じではない。)
「大型であれば、パワーに圧倒される面もあるが、やや単調で、無理な引っ張り合いをしなければゲット率が高い」といったところから判断してみると、釣り味はメジロクラスで10段階の6、ブリクラスで7がボクとしては妥当なところだと思う。(それ以下のクラスは評価外。)
■実釣時のエピソード■
奇しくもマダイと同様のパターンになって申し訳ないが、この魚は寄生虫が入る率が高い魚だ。この寄生虫は「ブリ糸状虫」というのだが、ブリの成長サイクルに合わせて成長→産卵するそうだ。よく目にするのは春以降の水温が上がる時期で、逆に冬場は目立たないが、実のところは常在しているらしく、冬場に発見し辛いのは、その時期に形態が変わっているからだそうだ。
だから、寄生虫が棲み着いているのは「天然の証」と言うべきであり、逆にこれが夏場であっても入っていないのは、発生しないような餌を与えられた「養殖物」と判断した方が良いとも言われている。ただし、この寄生虫はアニサキスとは違って、知らずに生食しても人に一切害を及ぼさないということだから、見た目は兎も角、食べた後に、どうこうなるということはない。
今から、10年以上前、5月中旬にいつもの白石グリで、メジロクラスが入れ食いになったことがあった。サイズ的に、いかにもウマそうで、喜び勇んでの「お持ち帰り」となったのだが、このほとんど全てに数多くの寄生虫が棲み着いていた。ウチのキープ数は2本で、その他はもちろんお裾分けもしていたから、発覚後は近い知り合い平謝りしたことは言うまでもない。
よくよく考えてみると、例えば日本海側の漁師さん達だと12~2月の旬に積極的に狙って獲るが、それ以外の季節は手をつけたがらない。その理由がこの寄生虫であり、これによって市場価値が無くなって「二束三文になる」からだそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/8b/e24aef6cc9d76ac0f6e6fb88fda629ec.jpg)
●実は、これにも”虫”が沢山入ってたのだ。●
■ハマチ~ブリの食い味■
「これほどサイズや季節によって評価が変わる魚はいないであろう。」そう思うほど味は変わる。
小さいツバスクラスは時期によって多少の差はあってもほとんど脂が乗っておらず、スカスカなので、料理法は味噌煮などで無理に味を入れる方法がベストだと思う。伝聞によると初夏のツバスは脂が乗っているとも言うが、ボク自身はそんなツバスを釣ったことがないから、真偽のほどは判らない。もっとも、このサイズをボクが狙って釣ることはなく、もし釣れてしまった場合は、ハリを飲み込んで血を噴いている個体以外はキープせずにリリースするようにしているが…。
では、ハマチクラスだとどうなるのか?。
ハマチと言えば、寿司ネタでは定番になっているが、真冬以外でも脂が乗っているのはほとんどの場合で養殖物であって、天然物はこのクラスになっても、普段は脂分が少ない。真冬近くになり、水温が下がればそこそこ脂が乗ってくるし、成長が早い魚だけにこの季節になればハマチと言ってもメジロサイズ近くになってくるので、話が変わってくる。
だが、本当に食って「ウマい」となるのは、個人的な好みかも知れないが、晩秋以降、晩冬までのメジロ~ブリサイズだと思う。この時期は「旬」であることから当たり前の話ではあるが、同時期に釣れる他の青物の中で一、二を争うほどウマくなる。平造りにして食べても良し、鍋や、しゃぶしゃぶで食べても良しで基本的に何の料理で食ってもウマいのだが、中でも一番ウマいと思うのが「カマ」と呼ばれる、エラブタを受ける側の半月状になった部位の塩焼きだ。(思い起こしてもヨダレが出そうだ。)
だが、この一番ウマい季節のメジロ~ブリサイズは市場価値も高い。だから漁師さんが懸命になって追い回すせいか、残念なことにボク自身がこの時期に得た釣果は極僅かだ。
上記から、食い味はハマチクラスであれば冬場のみ10段階の6で、それ以外の季節は評価外。メジロクラス以上は普段が6で、冬場のみが8という評価をつけたい。
■総合評価■
気まぐれな青物の中にあって、ほとんど毎年回遊があり、釣りの対象魚として安定した資源量がある。その結果、昔は考えにくかったが、瀬戸内海でもメジロクラスが“狙って釣れる”ようになっているほどだ。だから、ポピュラーな魚で親しみ易いうえに強烈な引き味で釣り師を楽しませてくれるから、有り難い存在ではある。だが、釣り自体は単調な展開になることが多い。
食味についてもサイズムラ、季節ムラが激しい。そこで、総合評価はハマチクラスは10段階の4.5、メジロクラスであれば6、ブリクラスで7.5としたい。