中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

釣り味・食い味 ~その3(メダイ編)

2013-04-27 12:30:00 | 釣り一般
 釣行予定日になると荒天となる悪循環にハマリ込み、もどかしい日々が続いている。よって、今週も、「釣り味・食い味」のシリーズだ。

■不思議な魚■

 「海の底は空の上(宇宙)と同じくらい謎が多い。」と、どこかで聞いたことがあるが、今回採り上げるメダイも、その謎の中にある不思議な魚だ。
  船釣りしかしない人が想像するメダイの行動範囲は、釣果実績から想像するに、300m~50mくらいに思うだろうが、実はこの魚、目で見える範囲、つまりは水面近くまで浮上してくる。それを知るのは離島遠征に向かう磯釣り師たちだ。
 磯からの大型魚狙いで有名な長崎県五島列島沖にある男女群島では、大型尾長グレを狙うのに一番楽なアプローチは夜釣りだとされている。その夜釣りでは集まった魚が、オキアミのマキエサを拾う際に夜光虫が反応して、蛍が飛び交うようなイメージの”淡く尾を引く光”が水中に走ることがある。そしてその光の尾が大きい場合は、大型魚が接近していると判断できるから、それを見た釣り人の心は期待で胸が膨み、アタリが来るまでの間はドキドキの瞬間となる。そして、その動きの中で電気ウキが消し込まれると、すぐさま強烈な引きを味わうことになる。
 以前であれば、その引きの正体は尾長グレ、そうでなければサンノジやイズスミといった磯魚であったのだが、ここ近年ではそれが大型のメダイであるケースも増えているのだ。
 男女群島での夜釣りでのウキ下は4ヒロ前後=6m前後からスタートすることから、そのあたりまでメダイは確実に浮いてきているということになる。反対に深い方では300m以上の水深でも釣れていることから、同一個体の移動ではないのかも知れないが、生息域として水深差が300m以上もある魚は極めて珍しい存在だと思う。

 以前は釣りの対象魚として大きく採り上げられることが少なかったように記憶しているのだが、資源量が増えて、現在では各地の沖釣りで盛んに釣られている。これには理由があって、実は前回ブリ類のところで触れた養殖業の衰退が関係しているそうだ。
 ブリの幼魚であるモジャコとメダイの幼魚はよく似た条件下で育つため、養殖魚の元となるモジャコ(ブリ~ハマチの幼魚)を獲る際にメダイの幼魚が混入してしまうのだそうだ。そして、ここでメダイの悲劇が起こるのだが、養殖業者にとってメダイは商品価値がない魚だから、発見されると除外されてしまうのだ。しかしそれは「捨てられる」のであり、一度捕獲されてしまうと彼らは恐らく生きてはいないか、成長できなかったであろう。
 それが現在では、ハマチの養殖量が減り、それと共にモジャコ漁が減って、本来の生態サイクル内に入るメダイの幼魚が増え、その結果、資源量が回復しているのだそうだ。
 沖縄の美ら海水族館の深海コーナーにも展示されているということから、沖縄近海にも生息しているのは間違いないだろうが、実際に釣りの対象魚として成立し、「狙って釣っている地域」を調べてみると、南は種子島あたりから始まって太平洋側は伊豆七島近海あたりまで、日本海側は新潟県沖あたりまでがそれに該当する。
 関西一円では、日本海側に大型が多く、最大で1m近いサイズがゲットされているのだが、太平洋側、特に和歌山県田辺沖で釣れているサイズはほとんどが65cmクラスまでであり、何故か小さい。


■メダイの釣り味■

 メダイは引きが強烈で、それがなかなか衰えずに下層から上層まで抵抗し続けるファイターだ。ブリほどのスピードはないのだが、トルクフルな引きが執拗に続く。これは体内に浮き袋を持っていないために、水圧の変化に強い体質となっているからのようだ。それとは反対に口腔内の肉質が柔らかいため、途中で口切れが起こって、ハリ外れるこることもある。その点、口が硬い上に後半になると浮き袋が膨れてだらしなく腹を返すマダイとは違って、船縁までハラハラ・ドキドキさせてくれるのは好敵手の証だ。

 しかし、生態の不思議と同じく、釣り味も掴み所がない要素があって評価が難しい。
 他地域のことはあまり知らないが、ボクの向かう若狭湾一帯では、一昔前であれば10号ハリスの5本バリ仕様の胴付き仕掛けでも十分な効果があり、一船30~40本という釣果もよくあって、釣れすぎて嫌になることもあったそうだ。
 その為、魚種の少ない冬場の「お土産釣り」としての位置づけであることが多かったようだが、次第に荒食いの機会が減って専門に狙わなくては釣果が伸びないようになってきたそうだ。
 そして、近年では仕掛もハリスが長く、より自然にエサが流れる天秤ズボ仕掛にしか反応しない魚が増え、ハリスも若干細くした方が食いが良くなるようになっているようだ。
 更に今シーズンに入ると天秤仕掛への反応も悪くなり、よりエサが自然に流れる「完全フカセ」での釣果のみが目立つようになってきた。同様にハリに着けるエサの種類も、ホタルイカで充分に釣果があったものが、イカの短冊→オキアミと、より食い渋りに強いタイプ、逆に言えばエサ取りに弱いタイプへと変わってきているから、その面でも難易度が増している。
 それらに対しては、各船の船長も同意見を述べているし、「魚探に反応がある位置にポジションを決めて釣りを始めても、群れが薄いために警戒心が強いせいか、アンカーを降ろした音に驚いてすぐに散る。」という話も聞いたことがあるから、個体数が減ってスレた魚が中心になっているのは事実であろう。
 船から釣る場合は「完全フカセ」を至上とするボクのような釣り師だと、より繊細になる傾向は喜ぶべきことなのかも知れず、その立場であれば釣り味の評価は高くなる。しかし、以前の若狭湾を知る釣り人や、他地域で竿を出す釣り人であればそんなに高くないのかも知れないから判断が難しい。
 だから、釣り味の評価は近年の若狭湾における「完全フカセ」での釣果であれば10段階の7.5をつけたいが、天秤ズボであれば6、胴付きで数が釣れる場合は5.5くらいが正当な評価であろうか?。そんな感じがする。

●ウマそう…●



■実釣時のエピソード■

 生まれて初めてこのメダイに出会った釣り人が口にするであろう台詞は、「何やこのヌルヌルは!」だと思う。それくらいこの魚の体表は多量の粘液で覆われている。その様子を表現するのなら、お笑い番組で「ローション・プロレス」というヤツがあるが、あれと同様の、したたり落ちるほどのヌルヌル具合なのだ。
 これは体表を細菌や寄生虫から守るために出すそうだが、浮き袋がないことと共に、これがあるために、行動範囲が広いのかも知れない。だが何れにせよこれが一旦ボートにしたたり落ちてしまうと、滑ること滑ること。荒れた日などは危険が伴うほどの滑りだ。
 このブログでもメダイを手に持った写真を何度か掲載しているが、その際に、どうしてもこのヌルヌルがウエアに付着するので、その後取るのに一苦労する。しかもこのヌルヌルはしたたったその時ばかりでなく、執拗だ。
 ヌルヌルがウエアに着いた後の処理は、ブラシを使って入念に洗い落とすようにしている。とある日もそのように洗い、乾燥させたのだが、ウエアを仕舞う際、一部に洗い残しがあって、ヌルヌルがガビガビッとなっいていることに気付いていた。しかし、「まぁいいや」と、あまり気にせずにいたのだが…。
 そして後日そのウエアを使用したのだが、途中でパラつきだした雨の水分に反応したガビガビが元のヌルヌルに復活していたのだ。慌ててティッシュで摘むように拭き取ったのだが、今度は綺麗に取れ、不思議と跡が残っていなかった。何とも不思議なヌルヌルである。
 韓国の化粧品でカタツムリのヌルヌルを使った物があって、好評だと聞くが、このメダイのヌルヌルは何かとてつもないパワーを秘めているに違いないとボクは思っている。しかし、「今から特許をとろうか?」と思ってもその能力もないし、乱獲でメダイが減ることも嫌だ。だからこの話は内緒にしておきたかったのだが…?。


■メダイの食い味■

 希に寿司ネタで提供されたことを経験しているが、そんなに感動があったワケではない。それが一変したのは一昨年の、秋のことだった。
 「メダイっていう魚を釣ったから、レシピを調べといて。」と、船上から妻に連絡しておいたのだが、帰宅すると妻が嬉しそうに「何やっても美味しいんだって。」と言うので、翌日に、まずは定番である刺身と手巻き寿司にして味わってみた。そしてこれが抜群にウマかったのだ。
 それでも80cmで10kgくらいはある魚なので、当然身が余る。それを翌日は鍋、更に残った身を西京味噌に漬け込んで5日後に味わったのだが、これまた全て激ウマであった。また、捌いた時点で出るアラに加えて頭部は兜割にして煮付けたのだが、これもまた絶品であった。そして、それ以降、我が家では「マダイは要らないからメダイを釣ってきて!。」との声があがるようになった。
 この魚の良さを付け加えるのなら、「不思議なことに骨が柔らかく、スッと刃先が滑るように切れてしまう」ということを挙げておきたい。頭部にしても同様で、マダイのように出刃を当ててハンマーで殴るような、危険なマネはせずともよく、スパッと割れてくれるのだ。その意味でも有り難い存在である。
 食したサイズは小は55cm、大は91cmまでと、ワイドだが、マダイのように大きくなればなるほど加速的にマズくなることはないが、80cm以上は身に入った筋が少しだけ気になる。食味的なベストサイズは75cm前後で、脂の乗りきった味が好みであれば、年末までに釣った物がベストになり、それ以降はやや脂が落ちて少しだけあっさり気味にはなるが、身のコクなど、基本的な味わいはそんなに変わらない。
 因みにボクの通う若狭湾周辺を中心に鳥取沖~新潟沖の個体の評価が高く、市場価値も高いそうだ。それに反して太平洋側の評価はここまでに及ばないので、地域差があることを考慮した方がイイのかも知れない。

 上記理由から、若狭湾のベストサイズであれば、食味の評価はかなり高く、10段階の8.5をつけたい。また、前評判の高い地域産であれば、それ以上の大型やそれ以下の中型サイズでも8をつけて構わないと思う。


■総合評価■

 釣ることよりも食いたくなる魚の一つであることから、総合評価は10段階の8としたい。ただし、上述したように近年の若狭湾での状況下においての判断だ。
 ここ近年の若狭湾では資源量が減る傾向にあるだけに、今後の動向が気になる存在である。
 釣り人は職漁者ではないので「元を取る」ことを優先する人は少なく、ゲーム性も求めるハンターであり、「釣れ過ぎては面白くない」が、「釣れなくては辛い」というジレンマを抱えている。若狭湾におけるメダイの現況は「掛かればデカイが、ある程度のテクニックが必要」な状態なので、バランスが取れた状態であるのかも知れず、喜んでイイ状態なのかも知れない。

コメント
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