久しぶりのタックルインプレッション。今回は完全フカセ対応では最新のシーボーグ600MJについて。
■500MJとの違い■
とりあえずシーボーグ600MJのカタログ・データから。
ギア比=1:3.6 自重=970g 最大ドラグ力=28kg ベアリング/ローラー数=21/0
標準巻糸量(ナイロン)8号-360m 最大巻上力=101kg(112kg・リチウムバッテリー)
常用巻上速度・1kg負荷時=Hi・165m/分(180m/分・リチウムバッテリー)
JAFS基準巻上力=22kg JAFS基準巻上速度=Hi・210m/分
と、なっている。
実際に手にしてみると「シーボーグ500MJのスプール軸を単に細くしたバージョンでは?」と感じてしまう。検証の為、両リールのデータを比較して考察した結果は以下のようになった。
1.ギヤ比は同じで、巻き上げスピードの最高速は同じ、必要な電流値も同じなので、モーターは同じと考えてイイと思う。
2.メガツイン構造の2スピードタイプだが、両モデル共にHi&Loギヤの最高速が同じなので、ギヤ構成も同じだろう。
3.600MJの方がスプール軸が細いが、それにより結果的に巻糸量の少ない位置がローギヤ化され、最大巻上力が上がったようだ。
4.自重は600MJの方が10g軽くなっているが、これはスプール軸が細くなって、スプール重量が減った事と、下段で触れるが、ローラーベアリングが1個無くなった事で、これまた結果的に減ったように思える。
5.最大ドラグ値が23kg→28kgに向上しているが、これはドラグワッシャーが5枚構成の500MJの上を行く7枚構成に変わった事で600MJが得た数値だろう。
という事で、両モデルは「カラーリングの違い」、「スプール軸径の違い」、「ドラグワッシャー数の違い」以外は同じと考えてイイとボクは思う。
番手が違うのは当然、巻糸量が違うからだ。完全フカセでの使用であれば、300m以上のフロロカーボンラインが巻き込める事が前提になるので、500MJは7号ラインまで、600MJは10号ラインがリミットになる。因みに自身が実際に、600MJに巻いたフロロカーボン・ラインの号数は3種で、使用時の巻糸量はそれぞれ以下のようになる。
1.サンライン・トルネード船10号=300m、2.シーガー完全ふかせ8号=360m、3.シーガー完全ふかせ7号=400m
従って、ボクのように玄達瀬での使用が視野に入る釣り人は、巻糸量に関する限り600MJが一台で事足りる事になる。
不思議な事に、取扱説明書のデータでは500MJはボールベアリングが22+ローラーベアリングが1となり、対する600MJはボールベアリングが22のみになってローラーベアリング廃止されているのに、両リールのパーツリストは、上述したドラグワッシャーとプレートの数のみが違うだけで、全く同じだ。
ローラーベアリングは、普通ハンドル周りのインフィニットストッパーに使用される事が多いので、「ドラグワッシャー&プレートを増やすためのスペースが必要になって、廃止したのか?」と思ったが、展開図をどう睨み付けても、ローラーベアリングの位置がよく解らないのだ。(単なる見落としならスンマセン。)
■完全フカセでの性能■
昨年の記事で完全フカセ釣り用リールに不可欠な要素は、①「フリー回転が滑らか」、②「巻き上げスピードが速く、かつ強力」、③「スムーズなドラグ」と記したが、それぞれを検証すると、以下の通りになる。
①=自己所有した電動リールの中では、シーボーグZ500MMを自身でメンテナンスした物が一番ストレスフリーで回り、次いでノーマルのシーボーグ500ATとなるが、600MJは500ATと同等の回りをする。
因みに600MJと500ATはスプール軸にメンテナンスフリーの”マグシールド・ベアリング”を搭載しているが、常にメンテをする立場から本音を言わせてもらうと、自分で注油の出来ないこれが邪魔であり、究極の回りを得るにはZ500MMのような旧式の、「ノーマルベアリング+注油ポート付き」タイプの方がチューンアップ出来るので都合がイイ。
②=同クラスのシマノ・ビーストマスターほどではないが、結構パワーがあり、自身の経験での最大魚は119cmのヒラマサだったが、全く問題は無く、必要なタイミングで必要な量を巻き取ってくれた。また、このリールは2段ギヤが搭載されてパワーポジションに入れるとローギヤに落ちるが、ボクの場合は全くそっちを使わない。だが、落とせば更にパワーアップするのは間違い無いところだ。
③=これまでダイワの電動リールに搭載されているドラグはスムーズさに欠け、ある一点を境に、締めると引っ掛かり、緩めると出過ぎる傾向があった。その為、このブログで記してきたようにボクは改善方法を探って、ディスクやグリスを交換して来た。
その結果、得た知識は「フィーリングが悪いドラグ程ワッシャーが分厚く、枚数が少ない傾向がある。」というモノだった。他に材質も重要だ。旧式のモデルには紙を樹脂で固めたベークライトのような物もあったが、ここ近年は殆どのリールがカーボン製に置き換えられている。但し、同じカーボン製でもメーカーやモデルによって粗さが違っている。
ヒラマサ狙いではなるべくポンピングはしない方が良いとボクは考えている。その観点からだと、電動リールのドラグは「滑らせつつ巻き取る」事が必要となるので、粗さはほどほどで0.5mm厚の5枚以上のワッシャーで構成されたドラグがこれまでの経験上、好印象だ。
その点、厚みは不明だが600MJでは500MJの5枚構成から7枚構成に変更されているが、実際に119cmとのやり取りでは8号ハリスという条件的にキビシイ中、スムーズに効いて、「ようやくダイワ製品もシマノのフィーリングに近づいた。」と思わせてくれた。とは言え、ボクとの相性が良い’13ビーストマスターとの比較では、やや効きすぎの感があり、スベリの滑らかさでは600MJに軍配を上げる事は出来ない。
■総合評価■
上段で示したように、福井~京都~兵庫方面の完全フカセ・ユースでは最太の10号が300m巻き取れる上、パワーも十分、ドラグの引っ掛かりもあまり感じないので、下は近場のマダイ狙いから、上は玄達瀬のメーターオーバー・ヒラマサまで守備範囲は広く、まさに万能機に値する。
但し、スプール軸が細いのはどうにか解決して欲しい問題だ。軸径が人差し指ほどしかないので10号を巻く場合は200mを過ぎたあたりで巻きグセがきつくなってくるし、糸潰れも酷くなってくる。また、ダイワ製品では過去、600MJよりもスプール軸の太いシーボーグ500FTで、「フロロカーボン・ラインが縮む際の圧力で外側にスプールが伸びた事が原因(ダイワSLPで確認済み)」で回転不良を起こした経験があるから心配になる。
もっとも、軸径が太いままで巻き糸量を確保するにはスプールやフレーム他を一から設計し直す必要があるので、ニーズ数から考えても製品化は実現しなかったように思うし、以前の600FEのようにガタイがデカくなる可能性がある。
ライバルは巻糸量で言うとシマノのフォースマスター4000のみだが、あちらはフリー回転性能が悪く、電動糸送り機能を使うなど、かなりの工夫をしても完全フカセ釣りユースではキビシイ。
また、「絶対に玄達瀬に行かない。」と言うのなら、サイズが下のダイワ500番&シマノ3000番もライバルになるが、ダイワ・シーボーグ500ATはカウンターユニットにトラブルが多く、ドラグは旧式のまま。シーボーグ500MJは機械的にほぼ同じだが、ドラグワッシャーの数が減るのでわざわざ選ぶ必要は無いし、シーボーグ500Jシリーズはベルト駆動の為フリー回転性能が落ちる。
シマノに目を転じるとビーストマスターMD3000もライバルに成り得るが、フリー回転でやや劣り、フロロカーボンラインを巻くとトラブルが多い。よって、完全フカセのヒラマサ狙いでは今のところ、このシーボーグ600MJがベストの選択だと思う。
後は販売価格だが、これが一番の問題だろう。カラーを趣味がイイとは言えないキンキラにする必要もないし、完全フカセでは2スピードは不要だと思うので、最大スピードが分速200mでシングルスピード化する等、メーカーさんの努力でどうにか廉価版を販売して欲しいモノだ。
■2023年更新■
愛用していたシーボーグ600MJだったが、スプールに巻いた新品のフロロカーボンライン6号が、わずか3投目にして80cmほどのブリを掛けた際に一旦伸びた後に縮もうとする力でスプールが破壊されて使用不能となった。ボクの使用していた物だけがそうなった可能性もあるが、心配していたスプール軸の細さが仇となったように思う。
80cmのブリ?が大きいとは思わないが、メーカー曰く、「大きな魚を掛けたらラインを引き出して軽いテンションで巻き直せ。」との事。
完全フカセは読みが当たった際に連発するからやめられないのであって、連発する時合にテンションを緩めるために巻き直しをしなくてはならないとは、トホホな話。カタログにもそんな使用法は掲載されておらず、メーカーの返答は困惑する内容しか帰ってこない。よって、2023年の玄達釣行では怖くて使用できずにいる。