ザ・築地 -魚食文化の大ピンチを救え! ルポ-
川本 大吾著[東京] 時事通信出版局 2010年
著者は時事通信の記者の築地担当で日々の取引デ―タを送信する仕事か始まった。水産部のアナログを嘆いているが心配はしている。世間とずれた生活で外部のライタ―の気に入る情報流しを世界の水産流通の地位の低下を警告しているがバブル崩壊で飲食店が高く売る工夫が消え、逆にイオンなどの大型量販店が産地直送で市場経由が減っていても何も対策のない築地に活を入れようとしている。
築地が消えそうということを、農林水産省と東京都が移転計画を築地移転反対派がさわいでいる水産物の消費拡大にはつながっていないようで、いわばデパ-トの閉店セ-ルで客を集めているようだ。豊洲移転直前は築地市場内の観光客の飲食店バブルで混んでいた。
2008年頃、築地市場のマグロのセリ場で観光客が素手でセリ前のマグロを触って、騒ぎとなった。当時は秘密裏に一般客が本場内の仲卸で買い物をしていた。減りすぎた魚屋のため廃棄するより、まとめ買いの素人に販売していた。今のコストコで購入する客が築地市場内の仲卸価格で購入していた。魚をさばける技術があれば激安ともいえる。今は減ってしまった魚屋は飲食店で魚も販売しているところが生き残っている。海には単一の魚が生きているのでなく多種多様な魚が生きていて,また大小があるのに量販店の規格の魚から外れたものは激安になるという。そのため産地では漁師の賄いで消費するしかないようだ。これは青果の取れすぎて、市場の価格暴落の補填の仕組みが水産にはないようだ。
著者は円高とバブル崩壊で築地が低迷している。悪循環の様子が書かれている。
また漁師の収入の魅力がなく新規の参入者も少ないという。そこで全国的に休漁を行ったが宣伝がうまくいって相場の変動が少なかったという。今は養殖や冷凍もあってかっての鮮魚の市場というのが薄れた。
2021年の豊洲市場は人手不足ということから、ほぼ週2回の休日となっている。市場の休日は全国の農林水産関係の休日と連動していて、東京の休市が決まらないと他の休日が決まらないようだ。
築地の時、水産部と青果部の休市が違っていた時があった。青果が休んで、水産が開市のという日は暇だった。その理由は水産部の日給月給の人のクレ-ムという。暇でもそのような仕事がないのに給与を支払うのが大手量販店の攻勢に市場が負けたのだろうか。それとも年中無休のス-パ-が休みの多い市場を避けたのだろうか。
単価を上昇を見込めない市場は生産者にしわ寄せが行く。規格を厳密にし、量販店が楽になるようにしている。昔は規格外品を漬物業者に売りつけていた時代もあった。
昭和の終わり頃、築地市場へ小学生の見学のバスが多数来ていた。いつの間に築地市場の設備の危険性なのだろうか、消えてしまった。最後の築地は大人の社会科見学の場だった。