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寅さんシリーズ全50作品のうち、下記の作品はまだ観ていない(2021.09.24)。
第4作 「新・男はつらいよ」栗原小巻
第9作 「柴又慕情」吉永小百合
第13作「恋やつれ」吉永小百合
第24作「寅次郎春の夢」香川京子
第45作「寅次郎の青春」風吹ジュン
第49作「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」*1
■ 寅さんシリーズ全50作品(寅さんを演じていた渥美清さん亡き後制作された49、50の2作品をカウントしないで全48作としている寅さんファンも少なくないようだ)を今年の5月からDVDで観始め(過去ログ)、これまでに44作品観た(第50作「お帰り寅さん」は2020年1月13日にシネコンで観た)。
今日(24日)第48作「寅次郎 紅の花」を観た。
寅さんとマドンナのリリー(浅丘ルリ子)、満男とマドンナの泉(後藤久美子)、二つの恋物語の行方は・・・。
寅さんとリリー。ふたりは奄美大島で一緒に暮らしている。一緒に柴又に帰ってきて、また二人で奄美大島に帰る。ある夜リリーと喧嘩した寅さんは置手紙を残して翌朝島を離れる。その後ふたりがどうなるのか、分からない。さくらに宛てた手紙でリリーは寅さんとの再会を暗示と言うか予想しているが。
満男と泉。満男は泉との結婚を決める2回の決定機を逃す。だが、その後もふたりの恋は続く。しかし、ふたりは結婚しなかったことが第50作「お帰り寅さん」で明らかになる。
以下、8月22日の記事を再掲する。
□ 第10作「寅次郎夢枕」。この作品のマドンナは幼なじみの千代(八千草薫)。 ふたりが亀戸天神でデートする場面は印象的。お千代さんが寅さんにもう4時間も経っているけれど、話しがあるのなら話して欲しいという場面。その後、寅さんに結婚を申し込まれたと勘違いしたお千代さんはいいわよと答える。過去ログ
□ 第11作「寅次郎忘れな草」。マドンナはリリー(浅丘ルリ子)。リリーが夜遅くに酔っぱらってとらやを訪ねてきて、寅さんと飲みながら今から旅に出ようと誘う。でもこんなに遅い時間だともう夜汽車もないと寅さんは断る。この時の寅さんは理性的で良識あるおとなの振る舞いをする。寅さんには家があり、家がなくて根無し草の自分とは違うことに気がついたリリーが寂しさに耐えかねて涙する場面。過去ログ
□ 第28作「寅次郎紙風船」。ラスト、マドンナの光枝(音無美紀子)を柴又駅まで送る寅さん。駅前で光枝は俺が死んだら寅の嫁になれって亡くなった旦那から言われ、寅さんにも話してあると聞いているけれど、と寅さんに伝え、寅さんの気持ちを確認する場面。誠実で優しい寅さんに惹かれていた光枝は、寅さんから本気で約束したという返事を期待していたけれど、相手が病人だから適当に相槌を打っていただけだと聞かされる。この時の淋しそうな光枝の表情。過去ログ
□ 第29作「寅次郎あじさいの恋」。マドンナのかがり(いしだあゆみ)と寅さんがかがりの実家の居間で酒を飲む場面と、その後、離れの2階の寅さんが寝ている部屋にかがりが入ってくる場面。それから鎌倉デート、あじさい寺(成就院)で待ち合わせたふたり。かがりが寅さんに気がついたときのうれしそうな表情。過去ログ
□ 第32作「口笛を吹く寅次郎」。マドンナは結婚に失敗して実家の寺に戻っていた朋子(竹下景子)。第28作と同じような場面。やはりラスト、柴又駅のホームで朋子は父親から今度結婚するならどんな人が好いのか訊かれて・・・、寅さんみたいな人がいいって言っちゃたんでしょと寅さんが朋子に代わって答えた後、朋子は頷く。この後の寅さんの答えを聞いた朋子の悲しそうな表情。過去ログ
第48作「寅次郎 紅の花」で満男がリリーさんを前に寅さんの恋の過去ログを挙げる。
まず挙げたのがかがりさん。いしだあゆみが演じたかがりさんと寅さんの鎌倉デートに満男は寅さんに乞われて一緒に行ったからよく覚えているのだろう。次はデパートの店員・螢子さん(田中裕子)、それから朋子さん(竹下景子)、寅さんにぞっこんだった朋子さんが再婚したことを寅さんが明かす。それから女医の真知子さん(三田佳子)、で最後に挙げたのがリリー。
満男はぼくが印象に残るマドンナとして挙げた5人のうち、3人を挙げている。
リリーがひとりで奄美大島に帰ると知ったさくらは寅さんに言う。「今だから言うけど、お兄ちゃんとリリーさんが一緒になってくれるのが私の夢だったのよ。お兄ちゃんみたいに自分勝手でわがままな風来坊に、もし一緒になってくれる人がいるとすれば、兄ちゃんのダメなところがよ~く分かってくれて、しかも大事にしてくれる人がいるとすればそれはリリーさんなの、リリーさんしかいないのよ。そうでしょ兄ちゃん」
多くの寅さんファンの気持ちもさくらと同じだと思う。でもぼくは違う。敢えて理由は書かないが、ぼくは光枝(音無美紀子)さんが一番相応しいというか、合っていると思う。
山田洋次監督は寅さんシリーズを通じて家族愛、家族の絆の尊さを観る者に伝えたかったのだろう。このことで印象的なのは第11作「寅次郎忘れな草」、リリーが夜遅くに酔っぱらってとらやに寅さんを訪ねてきて一緒に旅に出ようと誘うと、寅さんがやんわり断る。すると、リリーが「そうか・・・、寅さんにはこんないいうちがあるんだもんね。あたしとちがうもんね、幸せでしょ」という場面。リリーは根無し草の寂しさに泣く。
この作品で寅さんはリリーと出会うが、「兄さん、何て名前?」と問われて「おれは葛飾柴又の車寅次郎って言うんだよ」と名前だけでなく、居所まで答えているのに対し、リリーは「故郷(くに)はどこなんだい?」と問われて、「故郷(くに)? そうねえ、ないね、あたし」と答える。このようにふたりが対比的に描かれていることも、家族の絆というテーマにおいて見逃せない。
また、満男君が寅さんを「伯父さんは他人の悲しみや寂しさが理解できる人間なんだ」と言うが、確かに寅さんは旅先で知り合う人に優しい。第15作「寅次郎相合い傘」では家出した中年サラリーマン(船越英二)と一緒に旅をするし(この作品で寅さんはリリーと再会する)、第41作「寅次郎心の旅路」では自殺未遂したサラリーマン(柄本 明)に優しく接し、その後一緒にウイーンまで行くことになる。マドンナは観光ガイドをしている久美子(竹下景子)。
他人の悲しみや寂しさを理解して優しく接すること、これも監督が観る者に訴えたいことだろう。
寅さんが全国を旅するのは山田監督の故郷さがしでもある。このことはだいぶ前にラジオで聞いた(過去ログ)。
印象に残る作品として上に挙げた5作品はもう一度観たい。もちろんまだ観ていない作品も観たい。
*1 第49作は第25作『寅次郎ハイビスカスの花』のリニューアル作品