● どくとるマンボウ 北杜夫が青春時代を過ごした旧制松本高等学校、その所在地あがたの森にある旧制高等学校記念館で「どくとるマンボウ昆虫展 マンボウ先生の青春」が開催されています(明日13日まで)。今日は休日出勤、昼休みに出かけて観てきました。
**一夜の空襲に私の家は完全に焼失した。そのころ飼っていた何種類かの蜂の巣も、何年もかかって集めた数十箱の標本も、すべてむなしいひとすくいの灰と化してしまった。** 北杜夫は『どくとるマンボウ昆虫記』にこう書いています。北杜夫が松高に入学したのが昭和20年、今回展示されているのはそれ以降に上高地や美ヶ原で採集した昆虫の標本です。
バンカラな学生生活を送りながら、松本周辺で昆虫を夢中になって追いかけていた北杜夫。「少年のようなこころ」の持ち主なんでしょう。作品の奥に在る共通する雰囲気はナイーブな少年のこころから生まれているように私には思えます。
旧制高等学校記念館は平成5年、15年も前に開館していますがいままで訪れたことがありませんでした。常設展示品には北杜夫の有名ならくがき「憂行」や同じく有名な物理の試験の答案もありました。この物理の答案は『どくとるマンボウ青春記』に**更に別の問題には、恋人よこの世に物理学とかいふものがあることは海のやうにも空のやうにも悲しいことだ で始まる長詩を書いた。教授はこの答案に合格点に一点足らぬ五十九点をくれたが(後略)**と出てきます。
本館 大正9年竣工
講堂 大正11年竣工
ところで旧制松本高等学校の本館と講堂は共に大正時代の木造建築でその歴史的な価値から国の重要文化財に指定されています。次回は建築観察をしたいと思います。