透明タペストリー

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貞観津波に関する議論

2011-04-08 | A あれこれ



■ 「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤 合同WG(第32回)議事録」 をプリントアウトした。この35頁にも及ぶ議事録には津波の扱いをめぐる議論が載っている。

http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/107/3/032/gijiroku32.pdf



先日(27日)の朝刊に「過去の津波(869年に起きた貞観津波)を調査した研究者(産業技術総合研究所の活断層・津波研究センター長岡村行信氏)が、福島第1原発を大津波が襲う危険性を2年前に指摘していた」という記事が載っていたが、それはこの議事録に載っている議論を指しているものと思われる。

また、ラジオ番組「日本全国8時です」では昨日(7日)、月尾嘉男氏が「福島原発事故の津波は、本当に「想定外」だったのか?」ということを話題にしていたが、やはりこの議論のことを取り上げていた。

以下に少し長くなるが先の議事録から引用する(16、17頁)。

○岡村委員 まず、プレート間地震ですけれども、1930年代の塩屋崎沖地震を考慮されているんですが、御存じだと思いますが、ここは貞観の津波というか、貞観の地震というものがあって、西暦869年でしたか、少なくとも津波に関しては、塩屋崎沖地震とは全く比べ物にならない非常にでかいものが来ているということはもうわかっていて、その調査結果もでていると思うんですが、それに全く触れられていないことろはどうしてなのかということをお聴きしたいんです。

○東京電力(西村) 貞観の地震について、まず地震動の観点から申しますと、まず、被害がそれほど見当たらないということが1点あると思います。あと、規模としては、今回、同時活動を考慮した場合の塩屋崎沖地震でマグニチュード7.9相当ということになるわけですけれども、地震動評価上は、こういったことで検討するということで問題ないと考えてございます。

○岡村委員 被害がないというのは、どういう根拠に基づいているのでしょうか、少なくともその記述が、信頼できる記述というのは、日本三大実録だけだと思うんですよ。それには城が壊れたという記述があるんですよね。だから、そんなに被害が少なかったという判断をする材料はないのではないかと思うんですが。

○東京電力(西村) 済みません、ちょっと言葉が断定的過ぎたかもしれません。御案内のように、歴史地震ということもありますので、今後こういったことがどうであるかということについては、研究的には課題としてとらえるべきだと思っていますが、耐震設計上考慮する地震ということで、福島地点の地震動を考える際には、塩屋崎沖地震で代表できると考えたということでございます。

○岡村委員 どうしてそうなるかはよくわからないんですけれども、少なくとも津波堆積物は常盤海岸にも来ているんですよね。かなり入っているというのは、もう既に産総研の調査でも、それから、今日は来ておられませんけれども、東北大の調査でもわかっている。ですから、震源域としては、仙台の方だけではなくて、南までかなり来ているということを想定する必要はあるだろう、そういう情報はあると思うんですよね。そのことに全く触れられていないのは、どうも私は納得できないんです。

以上 (表記は議事録のまま 「日本三大実録」→「日本三代実録」)

岡村委員の質問に対し、なぜ貞観地震・津波を考慮する必要がないのか、なぜ塩屋崎沖地震で代表させることができるのかについて、きちんとした回答のない議論であったことを残念に思う・・・。



「宮城県石巻・仙台平野および福島県請戸川河口低地における869年貞観津波の数値シミュレーション」

活断層・古地震研究報告 NO.10 p.9-29  2010

貞観津波については震源の領域、断層長さ、断層幅、すべり量などのパラメータを変えたいくつかのモデルと津波堆積物の分布状況を比較検討するなどして、既にいくつかの実証的な研究が行われている。

**原子力発電所の津波評価においては、「安全設計審査指針」,「原子力発電所の津波評価技術(土木学会)」の考えに基づき、敷地周辺で過去に発生した津波はもとより、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーション解析により評価し、重要施設の安全性を確認しています。** 東京電力のHPより  福島第1原発のケースを具体的に知りたいと思う。