透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

正月読書「午後の曳航」

2021-01-02 | A 読書日記

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 年末年始は巣ごもり読書、と決めていた。で、何年も続けてきた善光寺への初詣も今年は見送った。

今日(2日)は三島由紀夫の『午後の曳航』(新潮文庫)を読んだ。奥付を見ると1968年(昭和43年)の発行で、2019年(令和元年)82刷となっている。長年読み継がれているということは名作の証ということだろう。だが、再読して、この作品がなぜ名作だとか傑作とかいう評価を得ているのか、全くわからなかった。ここでぼくは王様が裸であることを正直に指摘した少年を可としたい。だが、体だけでなく、感性も老いてしまったようだ、と逃げを打っておこう。

主人公は父親を亡くし、母親と暮らす13歳の少年。ストーリーは単純だがそれをトレースすることにそれ程意味があるとは思えないので省略する。

**五号は、目隠しの布と猿轡用の手拭を用意して来てくれ。
それから各自、好みの刃物を持って来てよろしい。ナイフでも錐でも好きなものを。**(176頁) ラスト、少年は仲間と共に猟奇的な殺人をする。

三島由紀夫の作品、ぼくは『金閣寺』(過去ログ)だけでいいなぁ。


 


正月読書「残業禁止」

2021-01-02 | A 読書日記

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 新年の挨拶を本のタイトルでする。この課題で難しいのは濁音で始まるタイトルの本が少ないということ。「ざ」で始まるタイトルの本を昨年末書店で探し、『残業禁止』荒木 源(角川文庫2019年)を買い求めた。昨日(元日)、隙間時間で読んだ。

小説の舞台はホテルの建設現場。場所は横浜、規模は15階建て。主人公はこの建設工事の現場代理人(小説では現場事務所長と表現されている)成瀬。彼は46歳、妻と二人の娘がいる。現場担当技術者の作業量は多く、残業が常態化していて、時には泊まりこみも。労務部から突然出された残業禁止(正確には残業時間制限)令。だが、工期延長は認められない。

定時退社するイクメン社員、助っ人で来たのは仕事ができない新人君。設計変更、近隣住民からの苦情。過労で倒れる者。自ら命を断とうとする者。次々起こる現場のトラブル・・・。成瀬の閑職への左遷、現場代理人の交代。タワークレーン倒壊。

どうなるんだ、この現場。コーヒーはブラックに限るけれど、ブラックな職場は御免だ。

最後は「嵐」が去って、虹が出て・・・。