■ 年越し本のSF小説『復活の日』小松左京(ハルキ文庫2020年新装版第5刷)を今朝早くに読み終えた。
人類が生物化学兵器として開発されたMM-八八菌により滅亡する。更にダメを押すかのように、アメリカとソ連(小説での国名)の核ミサイルが発射されてしまう。このような状況では「復活」とはならないが、南極大陸で生き残った人々がいた・・・。
復活の日ではどうしようもなくなった人類を憂い、将来を案じている小松左京は、人類を滅亡させ、初めからやり直し、そう、リセットさせたかったのだろう。小説のラストで小松左京は次のように総括している。
**「いや――復活させるべき世界は、大災厄以前と同様な世界であってはなるまい。とりわけ“ねたみの神” “憎しみと復讐の神”を復活させてはならないだろう。しかし、それとて・・・・・何百年後になればわからないことだ。あの“知性”というものが、確率的にしかはたらかず、人間同士無限回衝突したすえにようやく、集団の中に理性らしきものの姿があらわれるといった、きわめて効率の悪いやり方をふたたびくりかえすことになるかも知れない。(後略)**(434、5頁)
巻末に掲載されているインタビュー記事で小松左京は『ウイルス』東 昇(講談社ブルーバックス)が出てから、ウイルス関係の本を読みまくったと答えている。いろんな分野について知的好奇心旺盛な作家だったと改めて思う。
小松左京はこの作品を発表してから何年後かに『日本沈没』を発表する(*1)。『日本沈没』で書きたかったことは「国土なき後の日本人」のことだ。国土を失って日本人というアイデンティティはどうなるのか・・・。そもそも国家とはなにか、民族とはなにか、日本人とはなにか。
『復活の日』と『日本沈没』。ともに小松左京の実に壮大なスケールの「思考実験」だ。
『復活の日』1964年
『日本沈没』1973年
読売新聞の読書委員の宮部みゆきさんが、2020年の3冊に『復活の日』を挙げていた。