透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2021.01

2021-01-31 | A ブックレビュー

360

 年越し本の『復活の日』小松左京(ハルキ文庫2020年新装版第5刷)で始まった今年の読書。1月の読了本は7冊。今のような社会的な状況を設定したSF小説が1964年に刊行されていたとは・・・。小松左京はすごい作家だった、と改めて思う。

『残業禁止』荒木 源(角川文庫2019年再販発行)はホテルの建設現場が舞台で主人公が現場代理人という設定の仕事小説。今はこれ程ブラックな建設現場はないのでは、と思いつつ読んだ。ただし他の職種に比べたら過酷な面はあるのではとは思う。まあ、どんな職種だって大変だろうとは思うが・・・。今は、新型コロナウイルス感染症と闘っている医療現場が最も過酷だろうな。

『午後の曳航』三島由紀夫(新潮文庫2019年82刷)。三島由紀夫は文庫本で何作か読んだが、手元に残していないのでまた買い求めて読んだ。再読のきっかけは作家の小川洋子さんがラジオ番組でこの作品を取り上げていたこと。傑作だという評価のある作品だが、私には全く分からなかった。感性の老化故か?

『新型コロナから見えた日本の弱点 国防としての感染症』村中璃子(光文社新書2020年初版1刷)新型コロナについてもいろんな観点から論ずる人がいるんだな。

『細胞とはなんだろう 「生命が宿る最小単位」のからくり』武村政春(講談社ブルーバックス2020年1刷)
『新しいウイルス入門 単なる病原体ではなく生物進化の立役者?』武村政春(講談社ブルーバックス2020年1刷)

新型コロナウイルス感染の収束が全く見通せない。不要不急の外出を控え、人との接触を避けなければならないなどという状況。そんな中、ウイルスについて、そしてウイルスが侵入する細胞について勉強しようと思い読んだ2冊。ミクロな世界の難しいけれど興味深い論考。

『進化とはなにか』今西錦司(講談社学術文庫1978年第6刷)**進化論はあらゆる問題にまたがる本質的認識であるがゆえに、本書に要約された今西進化論こそ必読の文献である。**カバー裏面の本書紹介文からの引用


 


「進化とはなにか」再読

2021-01-31 | A 読書日記

 

『進化とはなにか』今西錦司(講談社学術文庫1978年第6刷)を読んだのは、1978年、今から40年以上も前の4月のことだった。この本を再読する機会があるかどうか、と2010年に書いたが(過去ログ)、その機会が訪れた。書棚に残した約250冊の文庫本を時々ながめて、読みたい本を取り出して再読する。これもまた好い。

読書にあまり時間を割くことができない日が続いたが、ようやくこの本を読み終えた。

ダーウィンの進化論の基本を成す理論は「突然変異」と「自然淘汰」。著者の今西錦司氏はこの進化論に疑義を示している。例えば次のような件(くだり)。氏は自然淘汰と最適者生存とは、ダーウィンのセオリーにおいてほとんど同義だとした上で、**この最適者生存ということにも、もひとつよくわからぬところがある。いったいなににたいしての最適者なのか。環境にもっとも適応したものといってみたところで、環境条件にもいろいろある。最適者を生存にもっとも都合よくできた個体と規定しても、それがどういう個体だか具体的にはわかりようもない。(中略)かりに最適者というものがあるとしてもである。この最適者がはたして生きのこり、子孫をのこすにきまったものであろうか。不慮の災難がどこで待ち伏せしていないにもかぎらぬ。**(188頁)と書く。

**ダーウィンの進化論はいわば淘汰進化論であるけれども、私の進化論は非淘汰進化論であって、定方向進化論にちかい。**(147頁)。(注:文字表記は原文のまま、文中の下線は私が引いた)

この本は今西錦司氏の思弁的な思索の記録と言ってもよいだろう。そこには当然氏の自然観・生命観が反映されている。

今西錦司氏の進化論には合目的的な種の全体論という考えがあるのだろう。僕はこの本を読んで、小さな魚の大群がまるで一つの意志を持つかのような振舞い、そう、「スイミー」のような種の進化をイメージした。ではその方な振舞いは何によって・・・? 


1月14日に掲載した記事に加筆した。


湯湯婆

2021-01-31 | A あれこれ

 湯たんぽについて以下のことをウィキペディアで知った。湯たんぽは室町時代に中国から伝わった。中国での呼称「湯婆」は難読。「ゆば」? いや、「たんぽ」。湯たんぽの意味。だが、たんぽでは意味が通じないので日本に入ってから「湯」が付け加えられ「湯湯婆」で「ゆたんぽ」となった。「湯婆」の婆はお婆ちゃんのことではなく、妻のことだそうだ。ということは・・・、湯婆って、そういうことなのか。

寒さ厳しい日々が続く。私はもっぱら沸かしたお湯を入れる湯たんぽを使っている。湯たんぽのお湯をやかんで沸かすが、過不足なくピッタリの湯量だと気分が良い。 

今夜も湯たんぽと一緒に寝よう。