透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「21 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」

2021-07-12 | E 週末には映画を観よう

 男はつらいよシリーズ第21作「寅次郎わが道をゆく」を観た。マドンナはSKD、松竹歌劇団のスター・紅 奈々子(木の実ナナ)。奈々子はさくらと同級生という設定。

今は無き浅草国際劇場で繰り広げられる華やかなレビュー(ショー)、そこで際立つ存在の奈々子。本作は練習風景や楽屋の様子も交え、レビューに時間を割いている。主役は奈々子で、寅さんは武田鉄矢が演ずる九州熊本の青年・留吉とコンビで脇役。

例によってとらやで大喧嘩して旅に出た寅さん。旅先は熊本。鄙びた温泉宿でのんびり過ごす寅さん、地元の青年・留吉が女性にふられる場面に遭遇。寅さん留吉を諭す。「青年 女にふられた時は、じっと耐えて、一言も口を利かず、黙って背中を見せて去るのが 男というものじゃないか?」

留吉を演ずる武田鉄矢は1977年公開の、やはり山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」で映画デビューしている。本作公開はその翌年(1978年)で、デビュー作同様のキャラでコミカルな演技をしている。

別所温泉の宿で大宴会を開いて無銭飲食、地元警察のやっかいになった寅さんをさくらが迎えにいったのは第18作目の「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」だった。今回も宿代がなくてさくらに速達で助けを求める寅さん。さくらがなんと九州は熊本まで寅さんを迎えにいく。

留吉が寅さんを慕って上京、とらやを訪ねてくる。留吉もSKDのレビューを観たいと言う。奈々子の踊りにすっかり魅了されて、劇場通いをしたい寅さんには渡りに船。留吉と一緒に出かける。それからああなって、こうなって・・・。 

奈々子は舞台の照明係の宮田 隆という男(竜 雷太)と10年も交際を続けていたが、踊りか結婚か、決めかねていた。一度は隆のプロポーズを断るも、結局は結婚することに。激しく雨が降る中、抱き合うふたり(寅さん映画らしからぬシーン)を目撃してしまった寅さん。

奈々子の引退公演をそっと観て、静かに劇場を後にした寅さんは留吉を諭した言葉通りに男の美学を実践したのだった・・・。

寅さんにはふるさとがあり、とらやに家族がいて、妹さくらがいる。だから気ままな旅暮らしができる。「家族の絆の尊さ」というこのシリーズのテーマが本作でもキッチリ表現されている。


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